季節は秋。
冬の香りを含んだ空気は冷たい。
もうすぐ冬かぁ と思わせる風と、制服。
もう衣替えの時期に入っていて、最近はカーディガンやセーターを着た他校の生徒をよく見る。
うちの学校の制服は 可愛い かっこいい で有名で、他校からも人気。
おまけにかっこいい生徒や可愛い生徒が多いためか、注目の的になる事が多い。
そして今日も女の子達が駅で出待ちをしている。
女「あ、あの!西畑くん…!私○校の、」
西「ごめんなさい、彼女いるんで。」
メガネをかけた少しクールな男子。
うちの学校で有名なイケメンのひとりだ。
彼は私の1つ下で、入学当時から高二の今まで謎の噂が飛び交っている。
① めちゃくちゃ遊び人
② 本命は男
③ 肉食系
④ 他校に彼女がいる
⑤ 夜はドS
これぜーんぶ嘘。
ほんとは…..
貴「遅かったね、また捕まってた?」
西「あんまいじらんでや。俺ん家でええ?」
貴「モテモテだね〜、いいよ」
西「先輩もね」
私の彼氏。
彼とは特に何があった訳でもなく、何となく付き合い始めた。
西「先輩って彼氏いるんですか?」
後輩で委員会が同じだった彼とは、結構良く話す仲。
2人で残って書類整理をしている時、突然そんな事を聞かれた。
貴「いやぁ、居ないし好きな人も居ないよ」
西「やったら俺と付き合って下さいよ」
貴「うん、いいよ」
かっこいいし、話してて楽だし、別に嫌いじゃないし。
そんな理由でおっけーを出して、なんだかんだ5ヶ月程この関係は続いている。
彼から好きという言葉を貰ったことは1度もないので、お互い適当にやっている。
朝は別々に登校、お昼は空き教室、放課後は委員会、帰りの電車は別の車両に乗って、駅から家までは一緒に帰る。
ただ一応名ばかりだがカップルなので、時間がある日は夜ご飯をどちらかの家で食べる。
この繰り返しで、あとは特に何も無い。
そういう行為もした事は無いし、キスもハグも手を繋いだこともない。
そういうのに、お互い興味が無いのかもしれない。
それとも私に魅力が無いのか?
どちらにせよ、そんな事をするような仲じゃないような気もするので何も言わない。
貴「おじゃましまーす」
そうこうしているうちに、彼の家に到着。
貴「あれ、お母さんは?」
西「今日は誰もおらんねん。みんな明日の昼まで出てる」
貴「え、なんで?仕事?」
西「俺置いて旅行行ってん」
貴「はーん置いてかれたんだ」
西「…うっさい」
貴「行きたかったんだ〜かわい〜」
彼は遊び人では無いし、他校に彼女もいない。
私以外の女の人と接触しているところを見たことは無いし、せいぜいあってもおかんだけ。
本命も…私かは知らないが、まぁ女の子だろう。
夜はドSとか言われてたけど、ぶっちゃけその辺は知らない。
ただ、何となく草食系っぽいのでドSじゃ無さそう。
貴「今日の夜ご飯何?」
西「先輩が作ってや」
貴「なんで大吾の家まで来て私が作るの」
西「食べたいから」
貴「わがままな子だねぇ」
西「それが俺のいい所やん」
貴「そんな子に育てた覚えはないよ」
西「育てられた覚えないねん」
貴「先輩には敬語使いなさいよぉ!?」
西「今更やん、てか敬語は使わんでええって言ったのあんたやろ?」
貴「あれーそうだっけ」
ぶっちゃけ友達の距離だし、これ以上の関係になれる気はしてない。
特になろうとも思わない。
好きなのかも分からない。
西「先輩さぁ、今日話してた人誰なん?」
貴「え?…あー、佐々木?」
西「佐々木て…男やんな?」
貴「まぁね。同級の…ほら、部活の」
西「あぁ、エースのね」
貴「そうそう。かっこいいっしょ」
西「は?」
貴「え、?」
西「…かっこええん?」
貴「えっ、かっこよくない?モテるよあいつ」
西「…趣味わる。」
貴「えぇ!?酷いなんでそんな事言うの!?佐々木はイケメンだし、大吾の100倍は優しいね!絶対そんなこと言わないもん!」
西「はぁ?あんた今自分が誰と喋ってるか分かってんの?彼氏やで?」
貴「わ、分かってるけど彼氏って言ったって名前だけじゃん!?…てか、あんたと女の防衛線にされんのももう疲れたんだけど、?」
西「なん…それ」
貴「私が誰と喋っても誰を好きになっても別にいいでしょ?お互い本気でもないんだし、。」
西「…本気やないって何?」
貴「だから、お互いそんな本気で好きとかでもないのに束縛とか要らないでしょ。今更…」
西「最初はそうやったと思うけどッ、」
貴「最初はそうなら今もそうでしょ、?一緒に居ても特にそれらしい事はしてないし、私がただ女避けになってるだけだよね?それだけなら束縛しないで。そんなにガードが無くなるの怖いの?」
西「ちがっ、」
貴「違くない!…ッごめん、もうホントだるいよね。他の子探して…私はもう潮時だと思うから、、」
結局、私がぶちまけた思いはひとつも拾ってもらうこと無く散った。
彼の家を出て、暗くなった公園で1人泣いていた。
好きだったのかな?
ちゃんと好きだったのかも。
気づくのが遅かった。でも気づいてたらきっと辛かった。
貴「…寒い」
終わって良かったかも。
白い息が出て、冬が来たなぁ と思った。
西「1回話そ」
2週間後、完全に忘れたと思った矢先、委員会後、がっしり腕を掴まれ彼の家まで連行された。
大人しく行く私もどうなんだろう。
まだ残ってる好きをすくい上げてくれないだろうか。
そんな事あるわけないか。彼からしてみたら、変な噂を流しかねないめんどくさい女だろう。
貴「で、なに?別に噂とか流すつもりは無いし、もう関わらないよ?」
西「…謝りたくて。ほんま…ごめんなさい。」
貴「ッ…」
謝られると、今まで自分が防衛線として使われていたという事を実感させられて辛い。
西「ちゃんと…言ってなかったから」
貴「別に…言わなくていいよ。」
貴方は俺のボディガード的な存在でした。なんていちいち言われてもしんどい。
早く終わらないかなこの時間。
西「いや、分かってへんから絶対。」
貴「分かってないって何が、?」
分かってるよねどう考えても。
喧嘩の原因がそれだったんだし。
西「やから…その、」
もごもごとする彼を見て、そんなに言いづらい事だろうかと考える。
貴「…もう分かってるから、そんな言いづらそうにしなくても、、」
西「えっ、ホンマに分かってんの?」
貴「うん」
西「…せやったら、、返事ほしいねんけど。」
貴「…返事?」
返事ってなんだ?
許すか許さないかってこと、?
貴「…許すよ別にそんなに怒ってないし」
西「…は?」
貴「え?だから、私をボディガードみたいにしてたことを謝りたかったんでしょ?許すって…」
西「ち、ちゃうわ!!!あんたホンマにあほやん!?」
貴「えぇ!?謝るって言ったじゃん!!」
西「それは、あんたに好きって言って無かったからごめんって…!ッあ、」
貴「…すき?」
確かに聞こえた 好き は、一体誰に向けられてるの?
私?
あれ、私以外に誰がいる??
貴「…私のことが好きってこと?」
西「…はい」
真っ赤になってる顔を見て何故か、あぁ彼は年下なんだなぁ と思った。
貴「そんな事今まで…」
西「言おうと思っててん。けど、言ったらなんか拗れそうやったから。」
確かに私は最近まで自覚して居なかったし、もし告白されていたら自分は好きじゃないのに付き合ったら失礼だと思って別れてしまうだろう。
貴「…そっか」
西「返事、くれる?」
貴「あ…」
その返事か。
外寒いし、まだ家の中にいたいから、、
貴「ん、私も好き」
もうちょっとあったまってこ。
西「ほんまに!?えっ、いつから、?」
貴「ないしょ」
西「内緒って…あんたホンマに考えてること分からへんわぁ、本気で好きなん?」
貴「…試してみる?」
西「…試すって何?」
貴「あっためて、寒いから。」
西「!?ま、待ってそれは早ない!?」
貴「何言ってんの?ハグでしょハグ」
西「…はぁ、」
でかいため息だなぁ。
くっついたら暖かい。
やっぱ告白おっけーして良かった。
外は寒いからなぁ…
貴「今日帰りたくない」
西「…本気で言ってんの?」
貴「…ん、寒いもん」
西「素直に言いや」
貴「後輩のくせに生意気なやつ」
西「先輩ひよってんの?」
貴「…」
西「…こわい?」
貴「暖かくなるだけだから怖くない」
西「意味がちゃうねんアホ」
貴「…展開早い?」
西「早い…かも?」
貴「やっぱ手から繋ぐべき?」
西「ん、」
ベッドの上で向かい合って座って、ぎゅっと握られた手は暖かい。
貴「…ムード作れ」
西「今作ってたやん壊してんのあんたやねん」
貴「え?嘘ごめん」
西「はぁ…抱くで」
貴「ッ…のぞむところだ」
西「戦いやないねん…」
なんか、こんな緊張するんだなぁ。
もっとスムーズかと思ってた。
怖いかも。
なんか分かんない。
西「誘ったんはあんたやで?」
貴「わか…ってる」
西「…ホンマに怖いんやったら辞めるで、負担大きいんやから、」
貴「いや、寒いもん」
西「…そんなにしたいんやったら寒いもんや無くて、ちゃんと言いや?」
貴「…言わなきゃしてくれないの?」
西「ッ、いや…うん」
なんで言わなきゃしてくれないんだ。
まぁ、魅力無いんだししょうが無いか。
言葉で頑張らない事にはそそられないのか…
貴「…私を可愛がってください(?)」
西「どこでそんなん覚えてきてん!?」
貴「えぇ、だってなんかエッチな言葉のセンスで攻めないとそそられないでしょ?私魅力足りてないし、」
西「は、何言ってんの?あんた今めちゃくちゃエロいで?」
貴「は、」
西「…スカートギリギリまで上がってるし、白くて細い足全部見えてるし、上のシャツのボタン開いてるし、何より…」
私の顔に手を添えて、もうキスできそうって距離。
近いなぁ…かっこいい
西「顔赤い、トロトロしてる、エロい」
貴「ぁ…ぅ…」
西「どうするん?教えて」
貴「…こ、後輩のくせに慣れてるな…」
西「…照れて変な事言ってんのもええ加減にせぇや」
貴「んぅ、!?ん…ふ、♡」
ぎゅってなった
キスされてる
やば、すき
しんどい何これ
西「声出てる、」
耳に響く
エッチな音
貴「ぁ…も、待ってぇ…♡」
西「…ホンマに最後。どうする?続き…する?」
あれ、もう暖かい
暑い
体全部暑い
もっと、まだ
貴「まだ…さむいかも」
西「…寒い?やったらどうしよっか、?」
貴「…ちゅー、」
西「ッ…ん、」
貴「んぅ…♡」
きもちい
ふわふわしてる
体浮きそう
あ、涙出てきた
西「はぁ、…ッどしたん、ごめん苦しかった?」
貴「ん…きもち、」
西「ッ…ごめん、やっぱり辞めよ」
貴「へ…?」
なんで?
何がダメだった?
あ、気持ち悪かったかな
やば、変な声とか、気持ちいいとか、、
めちゃくちゃ変な事言っちゃった。
それに、ちゃんとして欲しいこと言えなかった。
貴「ごめ…ごめん…」
西「いや、ちゃうよ」
貴「ごめん…恥ずかしくて、えっと…」
西「ちゃうって、、えっと、ほんまにこのままやと襲うから…一旦落ち着かせて。」
貴「…え?」
襲うからって
抱くってこと?
なんで?
いいのに
あ、言ってないんだった
西「いややろ?怖いやんな、ほんまに待って、一旦トイレ…」
貴「まって…」
西「いやっ、ほんまにあかん今は…」
貴「やだ!!」
行かないでって
一言が出ない。
だから後ろから抱きしめて、強引に引き止めることしか出来ない。
なんかほんとに女っ気ないかも。
貴「…まって、、」
西「どうしたん、?」
貴「…おねがい、もう1回だけちゅー、して?」
西「…あかんって、」
貴「おねがい…ちゃんと言うから…」
西「ッ…ん、」
振り返って、キスされて
だんだん後ろに押されて、そのまままた布団に押し倒される。
貴「は、んぅ♡」
西「ん、は…」
苦しい
好き
もっと
この先も…
貴「もっと、、して」
西「…ええの?」
貴「ん…はやく、」
西「怖くない?震えてる」
貴「…怖い」
西「せやったら、」
貴「でも大吾の…欲しい…から、」
西「ほしッ!?…優しくするから、あんま煽らんといて」
そのまま流れるみたいに沈んで、2人で好きを分け合った。
貴「いつから本気で好きだったの?」
西「割と最初から。てか服着てください、、目に悪い」
貴「そっかぁ、、防衛線の役割はこれからも続くね」
西「防衛線や無くて彼女さんな」
貴「同じようなもん」
西「じゃあお互いの防衛線やな。他の男んとこ行ったら抱き潰すで」
貴「…抱き潰されたらどうなるんだろ、」
西「試す?」
貴「え、」
西「そんな下着でウロウロして、、誘ってんの?まだ足りひんかった?初めてやろうし疲れるかと思って一回で辞めたけど、、」
貴「ちが…んっ、やめてぇ、」
西「こっち向いて、?」
貴「んん…復活はやぁ、」
西「ふふ、可愛ええから。」
貴「…すき」
西「…さっきいっぱい言ってて可愛かったけど、普通に言われんのも結構クるなぁ、」
貴「…もう二度と言わない。」
西「ふーん、、そんな子にはお仕置やな」
結局、彼女(防衛線)としてこれからも彼の隣に居ることになった。
変わった事は、相手をもっと好きになったこと。
《防衛線彼女》
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