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その日から、如月くんと会うと変にドキドキする。
視線が合うと、妙に意識して、すぐに目を逸らしてしまう。
「帆乃さん?」
「へ?!」
「あ、いや、何か考え事?」
「え、ああ、ごめんボーッとしちゃってた」
「大丈夫?」
如月くんが、心配そうに眉を寄せながら顔を覗き込む。目が合った瞬間、ふっと柔らかく微笑む。その表情があまりにも優しくて、余計にドキドキしてしまう。
「う、うん……」
声が裏返りそうになるのを必死に抑えながら返事をする。
私が視線を逸らすと、如月くんは少し考えるような表情で、じっと私を見つめた。何か言いたげな雰囲気だけど、結局言葉にはせず、そのまま微かに息をついた。
「そっか」
「はぁ…」
最近私は学校でもため息ばかりついていた。
昨日から何度目だろう。自分でも気づかないうちに、つい出てしまう。
「あなた、最近ため息多いわよ?」
頭上から声が聞こえてきた。
顔をあげると、私の幼馴染の蓮花と凪がこちらを見下ろしていた。
2人とは、家が近く保育園から大の仲良しだ。
腕を組みながらじっとこちらを見つめている女の子が、東雲蓮花(しののめ れんか)。彼女はキッパリと自分の意見を言うタイプで、まるでお姉ちゃんのよう。
無表情のまま、静かに私のことを観察する男の子が篠宮凪(しのみや なぎ)。普段は感情を表に出さないが、どんなときも冷静で頼りになる。
2人とも、背が高く整った顔立ちをしており、どこか大人な雰囲気が周囲を惹きつける。学校でも自然と注目を集める存在だ。
どんなときも気にかけてくれて、何も言わなくてもそばにいてくれる。落ち込んでいるときは黙って寄り添い、困っているときはさりげなく助けてくれる。
私は、そんな2人が大好きだ。
「蓮花、凪…!」
嬉しさが込み上げ、思わず笑みをこぼした。
「で、どうしたんだよ?」
そう凪に聞かれ、私はうつむく。
「私たちに話せないこと?」
「そうじゃないけど…その…」
蓮花は、わずかに眉をひそめる。一方、凪は無表情ながらもじっと見守るように静かに見つめていた。
「よく分からないの…」
指先をぎゅっと握りしめながら、目を泳がせる。
「よく分からない?」
「うん」
「どういうことだ?」
私は少し迷いながらも、正直に如月くんに対する気持ちを2人に打ち明けた。
すると、蓮花と凪は顔を見合わせ、まるでずっと待ち望んでいたかのように目を輝かせた。
「帆乃…!」
蓮花は微笑み、ふんわりと腕を広げて私を包み込むように抱きしめる。その腕の力がいつもより強くて、戸惑う。
凪も珍しく口角をわずかに上げ、優しく私の頭を撫でる。
「ちょ、2人とも急にどうしたの…?!」
訳がわからない。
「帆乃、よく聞いて。それは恋してるってことなのよ」
蓮花は髪をかき上げながら、落ち着いた声で優しく微笑み、私に言い聞かせるように言った。
「これが、恋なの…?」
「そう、恋よ」
「だな」
私はまだ半信半疑だったけれど、2人がそう言うなら…と思い始めていた。
「恋なら…如月くんは、私のことどう思ってるんだろう?」
そうぽつりと呟くと、蓮花は穏やかに私を見つめた。
「それなら、直接確かめればいいじゃない?」
「へっ…?」
「ちょうどいいわ。如月くんに私たちを紹介しなさいよ。彼がどんな人なのか、ちゃんと見極めてあげる」
「えっ!?なんでそうなるの?!」
それまで黙っていた凪も静かに頷いた。
「俺も会っておきたい。帆乃が気になる相手ならな」
「ちょ、ちょっと待ってよ…!」
2人の勢いに押され、思わず戸惑う。でも、如月くんに2人を紹介するのは悪くないかもしれない。
「それに、帆乃以外でクラスに話せるやつがいた方が、如月にとっても気が楽だろうからな」
そうだ、凪の言う通り。如月くんが学校に行けるようになるには、クラスに知り合いがいた方が絶対にいい。
「そうだね。じゃあ、如月くんに聞いてみるよ!」