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「ん、だな。今回はゴージャスさよりも利便性をとったから、そう言ってもらえるとありがたい」
「文句を言う訳じゃないですけど、いつも豪邸みたいな部屋は特別感があって嬉しいんですけど、一か月ぐらいステイしてゆっくりするならともかく、数日の滞在だと勿体ない気持ちのほうが大きいんですよね。……だから正直、これぐらいコンパクトな部屋のほうが安心できます」
「そっか……。男の見栄との兼ね合いが難しいな」
尊さんが悩んでいる間、私はスーツケースを開けて洗面グッズなどを出す。
「私、シャワーで済ませちゃいますね。ここのバスタブ、お洒落と言えばお洒落なんですけど、ベッドルームと空間が繋がってる事を思うと、湿気でモワッとするなか寝るのは嫌なので……」
「確かに、同意だ」
彼はクスッと笑い、自分もスーツケースを開く。
私はテキパキと準備を進めてシャワーを浴び、上がったあと尊さんに「どうぞ」と順番を譲る。
フライト時間の二時間前には空港にいるのが理想とすれば、明日は七時ぐらいには空港にいなければならない。
だとしたら六時前ぐらいには起きて、朝食をとって準備をしなければで……。
(明日は家に帰るだけだし、メイクも日焼け止めとリップぐらいでいいや)
私はベッドの上で水を飲み、母にメッセージを送る。
【明日帰国予定です】
時差はシドニーのほうが一時間早いので、こちらが今、二十二時半なら日本は二十一時半だ。
オーストラリアは思いきり海外気分を味わえるけど、時差がほとんどないのがありがたい。
(ヨーロッパやアメリカに行ったら、時差が凄いんだろうなぁ……)
そう考えていると、母から返事があった。
【気をつけて帰ってね。家に帰るまでが旅行だから】
母らしい言葉を見て笑顔になった私は【了解です】というスタンプを送った。
やがて尊さんもシャワーから出てきて、早めに就寝する事にした。
**
翌朝、朝食レストランで恵と涼さんに会った私は、「おはようございます」とブンブンと手を振る。
今日は移動だけと思っているのはみんな同じで、私はグレーのスウェット地ワンピース、恵は白Tの上にレモンイエローのパーカーを羽織り、ライトグレーのワイドスウェットパンツを穿いていた。
男性陣も似たような感じだけど、ラフな格好でも体が格好いいからモデルみたいに様になっている。
涼さんは恵と合わせてなのか、ワイドパンツスタイルで、尊さんはタイトなデザインだけれど、筋肉のある脚の形が格好いいので、何を着てもスーパーモデルミコだ。
朝食ビュッフェはいつもの感じで、ソーセージやベーコン、ハムやオムレツをメインに、サラダ、甘くないパンで攻めていく。
「免税店、開いてる所は六時からやってるはずだから、二人とも、最後に思い残す事なく買い物するんだよ」
食後、涼さんに言われた私と恵は、思わず顔を見合わせる。
昨日も沢山コスメや香水を買わせてもらったし、お土産のお菓子やコーヒー、紅茶なども買った。
それでも使い切れないお金があるので、なんだかもう【ミッション! お金を使い切ろう!】みたいなゲームになりつつある。
出資者である彼らは特に自分の買い物はせず、自由に使っていいと言ってくれている。
寄付をしてもまったく構わないと思っているんだろうし、寄付はいい事だけど、ある程度使ってしまわないと勿体ない庶民根性がある。
「……頑張ります」
「うっす……」
私たちが深刻な顔をして頷いたのを見て、涼さんはケラケラと笑う。
「いいね~。自由に買い物できるのに、ここまで覇気のない女の子も珍しい」
「寄付に回っても俺らは全然構わないから、無理に買い物しなくてもいいからな?」
「はい……」
頷きつつも、私は母や美奈歩にも、もう一つコスメを買う事を決意する。
春日さんやエミリさんは彼女たちの趣味があるだろうし、無難な色のリップを選ぶのでせいぜいだ。
その前に彼女たちなら、十分にコスメのコレクションがあるだろうけど。
朝食を終えた私たちは部屋に戻り、歯磨きやらをし終えたあとにチェックアウトし、空港へ向かった。
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コメント
1件
だいぶ読み進めてきたけど、今回の“ラストショッピング”もすごく良かったなあ。尊さんが「男の見栄との兼ね合いが難しい」って言うところ、ちょっとツボった(笑)。部屋の好みが合ってる感じ、いいよね。 あと、主人公が母に「家に帰るまでが旅行だから」って言われて笑顔になるところ、じんわり来た……。旅の終わりってどこか寂しいけど、そういう何気ない日常の温かさが沁みるんだよな。免税店でお金を使い切ろうと奮闘する二人も可愛かったし、最後まで優しくて丁寧な空気感だった🌷