💙翔太side
💙はあ、、、
これでため息をつくのは何度目だ?
あのことがあってから、俺はずーっとため息をついている気がする。
あの日楽しみにしていたメンバーだけの収録も空回りに終わり、仕事の後で照に注意を受けてしまった。ふっかは優しくフォローしてくれたけど、全面的に俺が悪い。反省しかない。
あれからなんとなく目黒とは話しづらいし、それでも会えなきゃ会えないで気になるしで何も手につかない。
今日はオフ。
いつもならぼーっとしたままソファに寝転んでだらだらと夕方まで動画を見たり寝たりを繰り返して過ごすが、今日はその気すら起こらず、ちっとも心が晴れない。
💙あーもう、出掛けるか!
意を決して起き上がって、俺は着替えることにした。
目深にニット帽を被って、マスクをし、繁華街を歩く。
ファンに見つかるとめんどくさいから、いつも地味に街に溶け込むように気をつけている。
特に買いたい物もなかったけど、行きつけのデパートへ向かおうとした時だった。
💙あれは…?
向こうから手を繋いだ男性カップルが歩いて来る。
まあ、今時は珍しくないかな…て、あれ???
二人が男同士なのも目立ってるけど、なんだか見覚えがあるような…?
思わずまじまじと見つめていると、向こうもこっちに気づいたようだった。
💚翔太?
❤️……
それは、阿部ちゃんと涼太だった。
❤️涼太side
今日は俺と阿部のオフがたまたま重なっていた。
阿部が買い物に付き合って欲しいと言うので、付き合ってから初めてのデートをすることにした。
阿部は終始にこにことして甘えて来る。
翔太だったら絶対こんなに素直に甘えてこないだろうな…と、封印した想いが一瞬込み上げて来たが、
ぐいっ
と、阿部の手がいきなり俺の手を掴んだ。
どきっとして、現実に引き戻される。
阿部は笑顔で言った。
💚次はあっちに行きたい店があるんだ
❤️うん、行こうか
そしてそのまま恋人繋ぎで歩いている。
なんだか振りほどくのもおかしいし、俺はされるがままにしていた。
平日の昼間で人通りはそんなに多くない。
誰かに声を掛けられることもなかったので少し気が緩んでいたのだろう。
ふと、道の向こうに一番見られたくなかった顔を見つけて、俺は固まってしまった。
❤️(翔太…)
💚?
急に立ち止まった俺に気づいて、阿部も同じ方向を見たようだ。
💚翔太?
💙お、おう…
阿部は特に気にかける様子もなく、手を繋いだまま、空いている方の手を翔太に振っている。
その時
さりげなく俺は繋いでいた手を離した。
💚亮平side
手、離されちゃった…。
右手から涼太の温かな手が離れたことを一瞬悲しく思ったけど、俺は気を取り直して翔太に駆け寄った。
💚翔太も休み?
💙うん。二人は?
💚へへ…。デートだよ?
意識していたずらっぽく笑う。
本気とも冗談とも取れるような言い方をわざとした。
やがて涼太も二、三歩遅れて、輪に加わる。
💙えーと…お前ら、そういう…?
💚……
俺は敢えて答えない。
3人の間に沈黙が生まれて、俺が落胆しかけ、冗談だよと言おうとした瞬間に涼太が言った。
❤️最近、付き合い始めたんだ。言うの遅くなったけど…
と、言った。
もう、感情がぐちゃぐちゃになる。
こっそり気づかれないように涼太を見たけど、表情からは何も読み取れなかった。涼太は本心を隠すのがうまいのだ。
…だから期待しちゃうんだよ。
心の中で憎らしく思う。
でもそれ以上に、本当に好き。
絶対に翔太に奪われたくない。
💙あー。邪魔してるな、俺…。ごめん
翔太が気まずそうに頭を掻いた。
💚ううん?そんなことないよ?今日は予定あるの?よかったら俺たちと…
💙いや!!邪魔して悪かった!俺、帰るわ!
翔太は回れ右して、急ぎ足で慌てて走って行ってしまった。
💚翔太…?
俺は全身を緊張させてその後の涼太の様子をうかがっていたが。
結論。
涼太は翔太を追いかけなかった。
それどころかそんな素ぶりすら見せなかった。
💚(追いかけなくていいの?)
涼太に真意を聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがごちゃまぜになって、そんなどろどろした葛藤を隠したくて、俺はにっこりと笑って涼太の手を再び取った。
💚行こっか
💙翔太side
なに???
何見たの????俺……
涼太が?
阿部ちゃんと???
💙嘘だろ……
次会う時、二人にどんな顔したらいいんだよ?
正直パニックになっていた。
色んな感情がないまぜになって、何をどう考えたらいいかわからない。
とにかく状況を整理したい。
とりあえず家に帰ろうとした時、携帯が鳴った。俺は相手を確かめずに電話に出た。
💙もしもし?
🖤しょっぴー?ひさしぶり…
💙え!あ、めめ……
電話の相手は目黒だった。
相手を確認せずに出たことをかなり後悔したが後の祭りだ。
ああ、もう、なんなんだよ!!
あれから目黒とは会ってもないし、電話も、LINEすらしていない。
メンバーLINEで生存を確認していたくらいだ。俺からは目黒に何のアクションもしていない。
目黒からのアクションもなかった。
俺は受話器を耳にあてながら、何をどう話したらいいか考えていると
🖤今日、会えない?
💙え?だって、お前今日撮影あるんじゃ…?
🖤それが、共演の女優さんがインフルになっちゃって延期になったんで、急遽オフになったんだよね。
💙そうなの??
🖤だめ……かな?
💙………
今までならこんな時は二つ返事でOKしていたのに、今、俺は迷っている。
さっきのことも整理したいし、目黒とどう顔を合わせたらいいのかもよくわからない。
何もかもキャパオーバーだ。
🖤俺、もう会ってももらえないの?
💙いや……そういうわけじゃないけど…
あーもうわけがわかんねえよ!
でも、こんなことでギクシャクするのは嫌だった。今後の仕事も上手くいかなくなるだろうし、何よりもこんなことで大事な友達を失うのは嫌だ。
俺は腹をきめた。
💙わかった、じゃあ今からうち来いよ。俺ももう帰るところだから…。
🖤1時間後に行く。じゃ、後で。
電話はそこで終わった。
目黒とはちゃんと話さなきゃいけない。
またメンバーに迷惑をかけるのはごめんだ。
俺は大きく深呼吸して、頬を叩いた。
目黒とちゃんと話そう。
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