テラーノベル
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「……また言われてたね、“かっこいい”って」
なるせの声は、机に突っ伏したまま、
目も合わせない角度からぼそっとこぼれた。
らっだぁは、何のことか一瞬わからなかったが、 さっき廊下で、スタッフの女の子に
「今日の服、かっこいいですね」って言われたことを思い出した。
(笑いながら)
「え、あれ? ただの社交辞令でしょ?」
(ぷいっと顔そむけて)
「そうやって、気づいてねぇとこ…」
(意地悪になるせを見つめて)
「…え、俺…モテてんの…?」
(小さな声で )
「うざ……」
(近づいて座って)
「なぁに、またむくれてんの? 可愛いなお前」
(顔伏せたまま)
「かわいくねぇよ」
(じっと見つめて)
「……じゃあ、俺が他の人にかっこいいとか言われるの、イヤ?」
(少しの沈黙のあと、ボソッと)
「イヤじゃないけど……別に嬉しくはねぇだろ」
(ほほ笑んで、手を伸ばして髪を撫でる)
「それってつまりさ……なるせは俺のこと、めっちゃ好きってことじゃない?」
(ぱっと手を振り払って)
「うるせぇな、黙れよ一回」
(その手を取って、軽く指を絡める)
「やだ。俺、なるせの“俺だけ見てろ”ってやつ、けっこう好きなんだけど」
(顔を真っ赤にしながら)
「は??言ってねぇだろ!!勝手に妄想すんなや!!」
(にっこり)
「言ってなくても、顔に出てるよ?、
めっちゃバレバレ笑」
(目を逸らして)
「……お前がそうやって色んな人に愛想振り撒くから、悪いんだろ」
(不意に真剣な声で)
「でも、俺が見てんのはなるせだけだよ?」
(動き止まって)
「……うざ…」
(真剣になるせの目を見て)
「俺別に、誰かに “かっこいい”って言われるより、なるせが“かっこいい”って言ってくれた方が百倍も嬉しい」
(しばらく黙ってから、小声で)
「……バカだろ、お前」
(ニコッとして)
「そうね笑、バカだからなるせのことしか見れないのかも。 俺なるせのこと大好きだし」
(少しの沈黙の後、笑顔で)
「…………ば〜〜かっ」
(驚いたが、口角は上げたまま)
「は!?」
やっと、なるせのいつも通りの笑顔が見れたらっだぁは、言葉とは対照に、その笑みを隠せなかった。
手は固く繋がれたまま。二人だけの和やかな時間が動き出した。
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