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第三十話:黎明の咆哮と、服従の枷と至高の角

(……ああ。守るんだ。あの子たちの笑顔を、僕たちの宿を!)

魂の深淵で激しく燃え上がった「思い出の薪」が、六人の魔力を飲み込み、ついに臨界点を超えた。その瞬間、僕の肉体を繋ぎ止めていたこの世界の理(ことわり)そのものが、悲鳴を上げて崩壊を始める。

祭壇の上で、僕の額にあった「三色の角」が、これまでにないほど激しく、不規則な脈動を繰り返した。赤、黄金、銀白の光が混ざり合い、膨れ上がり――そして。

――カァンッ!!

地下室の空気を震わせる、高潔で残酷な破壊音。

角が粉々に砕け散り、その破片が火花のように宙に舞った。一瞬、周囲を囲む六人の支配者たちの瞳に「壊れた」という残虐な悦びと、あるじを完全に自分たちの色に染め上げたという確信が走る。

しかし、その歓喜は一秒と持たなかった。

砕け散った三色の破片は、地に落ちることなく、僕の体内から噴き出した黄金の霊圧に捕らえられた。それは「消滅」ではなく、さらなる高みへと至るための「脱皮」に過ぎなかったのだ。

「……っ!? な、何よ、この光は……ぐッ!?」

紅羽が、そして瑞稀が、僕から溢れ出した圧倒的な神威の重圧に、悲鳴を上げてのけぞった。

その中心で、僕は見た。

砕けた破片が集い、朱、黄金、銀白、そして六大妖怪たちのすべての色を飲み込み、それらを内包しながらも太陽よりも眩い「黄金」がすべてを統べる。天を衝くほど巨大で、神々しい一本の『至高の金角』が、僕の額に顕現した。

同時に、僕の四肢と喉を拘束していた五つの伝説の家宝が、内側から溢れ出す圧倒的な霊圧に耐えきれず、一斉に爆ぜた。

――――パリンッ! パキパキィッ! ッドォォォンッ!!

左腕の銀、右腕の水晶、両足の黒曜石、そして喉を締め上げる鋼。

数千年の歴史を持つ伝説たちが、あるじの覚醒という奇跡の前に、一度、ただの塵となって虚空に舞った。

「馬鹿な……家宝が……。退くわよ、このままじゃ飲み込まれる!」

瑞稀の鋭い号令と共に、大妖怪たちが一斉に距離を取ろうとした。

これまでの「愛でる対象」が、自分たちを脅かす「未知の神」へと変貌した恐怖。彼女たちが本能的に逃走を選んだ、その刹那――。

「……再構築。逃がさない」

僕が静かに、けれど逃れようのない絶対的な意志を込めて呟く。

光の粒子となった家宝の残骸が、僕の黄金の霊力と絡み合い、再び実体を持って形を成していく。しかし、蘇ったそれらは、もはや「あるじを縛る道具」ではない。

「なっ……!? 私の腕輪が、勝手に……っ! 嫌、離しなさい!」

逃げようとした紅羽の背後から、黄金の装飾を纏って蘇った銀の鎖が、雷光のような速さで伸びた。それは逃げようとする彼女の両手首を空中でひったくり、無慈悲に引き戻して背後で縛り上げた。

「私の……私の水晶が、壁となって……っ!?」

霰の進路を阻むように、巨大な水晶の槍が床から突き出し、瞬時に彼女を囲う「檻」へと組み上がった。

雲華、狂骨も同様だった。自らが捧げたはずの家宝が、あるじの放つ猟犬となり、逃走を図る彼女たちの四肢を絡め取り、重圧と虚無の鎖で地の底へと縫い留める。

「アタシの鋼が……っ、アタシを狩るってのかよ……ッ!!」

伊吹の首には、僕の喉を焼いていたはずの鋼が、今度は彼女を僕に従わせる「忠犬の首輪」となって食い込み、彼女を逃さぬよう祭壇の床に力強く跪かせた。

瑞稀にいたっては、僕の心臓の鼓動が響くたび、彼女自身の心臓が共鳴し、逃げようとする脚の自由を奪われ、僕の足元に平伏するように崩れ落ちた。

僕は、祭壇の上にゆっくりと立ち上がった。

四肢を縛っていた鎖は、今や僕の意志で彼女たちを狩る武器となり、僕を繋いでいた鋼は、彼女たちを律する戒めとなった。背中からは光り輝く七色の霊翼が広がり、家宝が嵌まっていた場所には、六つの色が美しく混ざり合った「真なる王の紋章」が刻まれている。

「……紅羽、霰、雲華、狂骨、伊吹、瑞稀」

僕が静かに名を呼ぶ。

その声は、もはや震えても、掠れてもいない。慈愛に満ち、同時に抗いようのない神威を帯びた「言霊」だ。その一言だけで、地下の空間そのものが僕の意志に平伏し、支配者であったはずの彼女たちは、自らが捧げた家宝に縛られ、一斉に僕を仰ぎ見るしかなかった。

「君たちの『愛』という名の略奪は、確かに受け取った。……だが、今日からは僕が主(あるじ)だ。君たちが注いだこの力で、僕はあの子たちを、僕たちの宿を救い出す」

僕の瞳は、七色の深淵を宿して輝いている。

至高の金角が放つ浄化の光は、彼女たちの歪んだ欲望を、逃れられぬ「忠誠」へと強制的に変換していく。

「……嘘。私たちが、主を飼い慣らしていたつもりが……本当の『神様』を作ってしまったというの?」

雲華が逃げる術を奪われ、跪いたまま、その瞳から大粒の涙を零す。それは、自分のすべてを奪われる恐怖か、あるいは自らが生み出してしまった「究極の主」への狂おしいほどの恍惚か。

「さあ……行こうか。僕を信じて待っている、大切なあの子たちの元へ」

僕は、跪く彼女たちを振り返ることなく、光の翼を大きく羽ばたかせた。

その一振りで、地下室を閉ざしていた幾重もの強力な結界が、薄氷のように呆気なく砕け散る。

僕は、逃げることも叶わず、自らの家宝に縛られたまま引きずられるようにして従う六人の大妖怪たちを連れ、黄金の彗星となって、玉藻とお凛と一花が待つ、地上へと一気に駆け上がった。

朧月館を囲む異様な霧が、僕の光によって切り裂かれていく。

支配と蹂躙の夜は終わり、あるじによる救済と、新たなる理の、眩いばかりの夜明けが始まる。

妖狐の寵愛と百鬼の契り

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