この作品はいかがでしたか?
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私は今日、穴場として教えてもらったキャンプ場に来ている。なんでも、最近過疎地の村が、村おこしの一環としてキャンプ場を始めたらしい。
でも、まだ知っている人がほとんどいないので、人も少なくて、いまが狙い目、とのことだった。キャンプ場なんてやって村おこしになるのかな? まあ現金収入にはなるだろうけど。
来てみると、確かにいい場所だった。のどかというか、風光明媚というか。長年にわたって手入れされてきたのだろう、木々が適度に木陰を作っているが、暗くなりすぎず、見渡すかぎり芝生のような柔らかな下草がびっしりと地面を覆っていて、そのまま寝ころべそうだ。おっと、見とれている場合じゃない。車を止めて、管理棟で料金を払っておかないと。そう思って駐車場に移動し、車を降りると、何か視線を感じた。
「……?」
気になってあたりを見回す。すると、遠くの方で猿がこちらを見ていた。
「え……」
驚いているうちに、その猿は木の枝に飛び移り、どこかへ消えてしまった。あれって野生の猿だよね? こんなところにも出るんだ……。なんか怖いな。
そんなことを考えながら受付に行ってお金を払う。受付にいたおじさんに、
「このあたりって猿が出るんですか?」
って聞いてみた。まあ、猿がいるのはもう実際に見ているのだけれど、気をつけることがないかとか、いろいろ聞いておきたかったのだ。
「ああ、あなた猿を見たのですか。なるほど。なに、たまに人里近くに来る程度ですよ。山は餌が豊富なのでしょう、そんなにここらまでやってきませんし、たまに見かける程度ですな」
「そうなんですね。よかった……!」
どうやら大丈夫みたいだ。それを聞いて安心した。
「それよりお嬢さん、早く行かないと日が暮れてしまいますよ」
「あ、はい!ありがとうございます!」
おじさんの言葉を受けて、私は荷物を持って歩き出した。
「ふうー、疲れたぁ~」
テントを張って、ご飯を作って食べて片づけもして、今は焚火をしながらコーヒータイム中だ。やっぱりキャンプといえばカレーだと思うんだけど、なぜか今回はカレー粉を忘れちゃった。ダメもとで受付のおじさんにカレー粉を売っていないかと聞きに行ったら、笑いながら、売り物としてはないが自家用のを分けてあげよう、といってくれた。親切な人だ。おかげでカレーができた。
そして焚火。炎を見ながらぼけーっとしているとなんだかわくわくしてくるから不思議だ。それにしても静かだな。あたりは不安になるくらい静まり返っている。虫の声だけが響く森の中で、私は一人きりだ。
と、その時、ガサッと音が聞こえてきた。思わずビクッとする。何の音だろう? ふと気づくと、昼間に見た猿のことを思い出してしまっていた。まさか、と思った瞬間、またガサガサと音が鳴る。今度は少し近い気がする。
「ひっ……」
恐る恐る音の鳴る方を覗き込むと、そこにいたのは一匹の鹿だった。ほっとして息をつく。そういえばここは野生動物が多いとも言っていたっけ。鹿はしばらく私の様子を窺っていたが、私が何もしないとわかると去っていった。怖かった……。
ほっとしたせいか、なんだか眠たくなってきた。うとうとしていると、いつの間にか私は意識を失っていた……
目が覚めると、すでに辺りはすでに明るくなっていた。キャンプの設営なんかで思ったより疲れていたのかな? それにしても、朝まで寝てしまうなんて……。とりあえず立ち上がろうと思ったが……
「あ、あれ!?」
体の自由がきかなかった。慌てて自分の体を見ると、ロープのようなもので縛られていることがわかった。さらによく見ると、服も脱がされ、裸になっていた。場所も、キャンプしていたところではない。
「え、なんで……!?」(続く)
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