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──お酒を飲むからということで、車ではなく電車で会社方面まで出向いた。


普段は車で移動することの多い彼と電車に乗るのは新鮮で、


「電車に乗るのって、長野に行った時以来ですね」


ふとかつてのことが思い出された。


「ああ、あれ以来か。また二人で、電車で旅行にでも行きたいな」


「そうですね、二人で……」


“二人で”と言われるだけで、こんなにもドキドキしちゃうなんて、私ったらどれだけこの人のことが好きなんだろう……。


幸せな思いで隣に座る彼の肩にそっと頭をもたせかけると、手の平でスッと柔らかに髪が撫で下ろされた。


──服は、ホテル内のブティックで一緒に着替えようと、彼が話していたのだけれど、


「こんなお店、入ったこともなくて……」


いざ連れて来られたショップを目の前にしてみると、その華やかな雰囲気に気後れして、足を踏み入れるのがためらわれてしまう程だった。


「おいで、どれでも好きなのを選ぶといい」


彼に手を引かれ、お店の中へ入ると、着たことどころか見たこともないようなフォーマルドレスの数々が並んでいて、信じられないような思いで目を見張った。


「こ、こんなの私、着られません……」


ハンガーに掛けられて並ぶ着慣れないドレスの煌びやかさに圧倒され、首を振って口にすると、


「大丈夫だよ。何にでも相談に乗ってくれるスタッフもいるし、君が一番気に入るものを選べばいいのだから」


私の肩を抱いた彼が、なだめるように話した。


「は、はい……」


彼に優しく声をかけられたことで、気持ちは少しは落ち着いてきたけれど、未だに敷居の高そうなお店に緊張感は拭い切れないでいた。


すると──、


「それと何より私が、君のサプライズのプレゼントを楽しみにしているからね」


そう、彼が付け加えるように喋った。


「……サプライズのプレゼントって?」何のことなのだろうと思う。



「君のことだ。素敵なドレスを纏った君は、私にとって何よりのサプライズプレゼントだからな」



そんなことを言われたら、それ以上は拒めるはずもなく、


「はい、驚かせることができるようなドレスを、あなたのために……」


火照った頬を両手で押さえて、目の前の彼へ告げた──。

ダンディー・ダーリン「年上の彼と、甘い恋を夢見て」

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