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ないこは最初震えていたが、次第に声が弱くなり、支えていた手がだんだんと下へずり落ちていく。
「……ま….ろッ……」
か細い声。
それすら甘くて、俺の理性をまたひとつ溶かす。
「……っ、ごめん…」
口を離したくない。
でも、ないこの体がゆっくりと傾いでいくのがわかった。
『…っ、ぁ……』
ないこの膝が崩れた。
ー倒れる
そう思った瞬間、反射的に腕を伸ばし、強く抱きしめるように受け止めた。
「ないこ、」
腕の中のないこは、呼吸が浅くて、ふらふらしている。
体温もいつもより高い。
「やば……俺、、ッ」
まろの声は震えていた。
恐怖と後悔と、自分への嫌悪が入り混じっている。
「ごめん…ほんまに、ごめん…っ」
ないこの頭を胸に押し当てながら、まろは必死に呼吸を整えようとした。
すると。
胸元で、弱く、でもはっきりと小さな声がした。
『ま……ッ…….』
「……っ、ないこ?大丈夫か?」
ないこはふらふらと顔を上げ、目はとろけたように潤んでいる。
呼吸も甘く乱れていて、力が入ってない。
そして。
『……もっと……』
弱く甘える声のあと、
ないこの身体がふっとまろの腕の中で力を失った。
「……ないこ?」
呼びかけても返事はない。
ぐったりと俺に預けられた身体は、まるで熱に浮かされたように温かい。
胸に頬を寄せたまま、かすかに息をしている。
「……寝たんか?」
甘さに酔ったように、ないこの表情はとろりとゆるんで、 まるで安心しきった子どものようだった。
「……ほんま……無茶すんなや…」
腕の中で眠るないこを見つめながら、
自分がどれだけ危ないことをしたのかを思い知らされる。
胸が痛い。
(俺、あのままないこを….)
ぎゅっと抱き寄せる。
「ごめんな、ないこ……」
まろは小さくつぶやきながら、
ゆっくりとないこをソファに横たえた。
汗ばんだ髪を指で整えて、
頬に触れると、ほんのり甘い匂いが指先に移った。
その匂いがまた胸をざわつかせるけど、
俺は深呼吸をした。
「寝てるときくらい、食欲起こらんでくれや……」
そして、ないこの横で壁にもたれ、
夜の間ずっと、眠らずに見守った。
朝。
『…んっ….』
かすかに身じろぎし、ゆっくりと目を開ける。
まろは椅子にもたれたまま、眠っている。
目の下に薄いクマができていて、手にはタオルが握られていた。
ないこはその姿を見て、瞬きした。
『……まろ?』
声をかけると、まろははっと目を開いた。
「っ……起きたか」
声が掠れている。
徹夜したのがすぐわかる顔だった。
ゆっくり近づき、ないこの額に手を当てた。
「熱、下がってるな……よかった…」
優しい声。
だけど、その奥に深い後悔と不安が滲んでいる。
ないこはしばらく黙って見つめて
ふわりと微笑んだ。
『まろ、 昨日ね。すごく、あまかった……』
まろの顔が一瞬で強張った。
「…やめろ。思い出させんな」
視線をそらして、耳まで赤くなっている。
ないこは、そんなまろに手を伸ばした。
『でも、こわくなかったよ。 まろ、ずっと優しかったから』
甘さではなく、
安心でほどけたような笑顔だった。