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お母さん「ほーれ!いい加減起きろー!」
『んーー・・・分かったよ、』
優しい朝日がカーテンの隙間から差し込む6時、私は眠い目を擦りつつベットから起き上がった。
『眠すぎるー・・・』
朝は好きだが得意ではない。とりあえず洗面所に向かった。
私は西川ゆり。烏野高校の1年生だ。今はバレー部のマネージャーになってから、
(1週間くらいだっけ・・・?)
(まだ、特に何もしてないけどね)
『・・・あ!』
ぼーっとしながら歯を磨いていると、あることを思い出し声を上げる。
(今日から谷地さんも本格的なバレー部マネージャーになるんだった気がする!)
私とほぼ同時に見学に来た谷地さん。
私が入ったあと日向たちと必死に説得して、入部してもらったのだ。
(ていうか私が入るの早すぎたか)
小学生からバレーが大大好きな私。自分から見学しに行き速攻入ったのだ。
『・・・楽しみだな!』
歯磨きを終わらせ、準備をして家を出た。
授業が終わり、着替えを済ませる。
「「お願いしまーす!」」
涼しい風がすぎていく体育館の中に、みんなの挨拶が響いた。部活の時間だ。
隣には谷地さん。最初だから緊張しているのだろう。
(ちょっと震えてる・・・)
『・・・谷地さん、大丈夫!私も下手だし!』
先生の話が終わり、みんなが散っていく。私は小声で谷地さんに話しかけた。
谷地「う・・・ありがとうございます、!」
『あ!違う違う!谷地さんが下手って言ってる訳じゃなくて、!!』
(もー!!私のバカ!!日本語むず!)
谷地さん「わかってます!すみません!」
なんかお互い遠慮気味だが、仲良くなれそうで嬉しい。
清水「じゃあ、2人は・・・」
私と谷地さんは清水先輩に指示されドリンクを作りに水場に向かった。
『もう涼しーね!』 チュンチュン
心地よい気温に水の音と鳥のさえずりが重なり、非常に穏やかだ。私が大好きな雰囲気。
『・・・・・・』(今、めっちゃ幸せ!)
思わずにやけてしまう私。
谷地side
清水先輩に言われ西川さんとドリンクを作りに来た私。緊張していたが西川さんのおかげで多少和らいだ。
水場に着くと、日が差込すごく綺麗。いい雰囲気だな、なんて思って隣を見ると、にやけている西川さん。かわいい。
(私もなんか笑っちゃう。)
しばらく穏やかな心でドリンクを洗っていると、前からの疑問を思い出す。
(せっかくだし、聞いてみちゃおうかな、!)
私は思いきって口を開いた。
谷地「・・・あの!前から気になっていることがございまして、!」
『ん?笑 なになに?』
谷地「西川さんってすぐバレー部に入ってましたけど、昔から好きとか、?!」
『うん!めっちゃ好き!』
『・・・中学の頃とかやってたんだよー!』
笑顔で喋ったかと思えば少し迷ったような顔で黙る西川さん。
(? なんだろう?)
谷地「なるほど!大会とかでました、?!」
『出てたでてた!実はこれでも結構上手いとか言われてたんだよー!』
(・・・・・・?)
谷地「あれ?じゃあ・・・」
ここで私は引っかかって質問をなげかけてしまった。今思えばやめておけば良かった。
谷地「あれ?じゃあ・・・なんでバレー部マネージャーなんですか?」
『・・・・・・あのね、』
少し苦いような顔をして俯く西川さん。
『私、中学の大会中に指を骨折したの。』
谷地「・・・え?」
『左手の小指なんだけどね、なんか変な折れ方しちゃって、治ったは治ったんだけど、』
『骨が歪んじゃって。笑』
谷地「・・・あ、」
(なんで私、聞いちゃったんだろ、)
声から無理して笑っているのがわかる。
『私はできる!!って言ったんだけど、部活から追い出されたの。笑』
『で、もう迷惑かけたくないけどバレーは大好きだったから、マネージャーかなって、』
谷地「・・・すみません、すみませ、」
(ああ・・・最悪だ。私。)
私の視界が水で溢れる。目周りが熱い。
『え?!?!ちょ?!!』
『なんで泣いてるの?!?!ごめん!!』
焦って私の涙を拭く西川さん。
(きっとこの人は、ずっと辛かったろう。)
(大好きなものから無理やり離され、それにひたむきに考え続けたのだ。)
私は申し訳なくて仕方なかった。
『ほんとごめん!!私は平気だし!』
『全然動かせるよ!またいつかボール触ってみたいなあなんて!!』
不器用に笑わせようとしてくる西川さん。
谷地「・・・でも、ヒグッ、」
『いいんだよ!だってさ!』
『私あの日、ちょーー楽しかったし!』
谷地「・・・え、?!」
(楽しかった、?骨折した日が?)
(この人は・・・バレーが怖くならないのか?)
??「・・・・・・」
優しいながらも少し狂気的な笑顔の西川さんに、鳥肌が立った。
『ほらもう泣き止んで!』
暖かい日に照らされ、泣く私と慰める西川さんの影が地面に揺れていた。
それに、壁から盗み聞きしている人の影も。
西川side
(まだ全然明るいなー!)
もう時間は遅くなってきているのに、体育館は明るい。晴れの日っていいね!
(あーー、今日はびっくりした、)
部活が終わり得点表を片付けていた私は、水場のことを思い出す。
(・・・言うんじゃなかったかな、申し訳ない、)
谷地さんのことを思いやれなかったことを反省していると、体育倉庫から出てきた私に影山が話しかけてきた。
影山「・・・西川、自主練手伝ってくれ」
『あ、うん!いいよ!』
日向と影山とはちょっと気が合うようで、最近は一緒にご飯を食べる仲だ。
菅原「ちょい!あんまり遅くなるなよー!」
日向「うす!大丈夫です!」
菅原「心配だなー・・・よし、今日は菅原さんも参加してやろう!」
影山「まじっすか、あざます。」
日向「ん?なんか西川、嬉しそうだな!」
『えへへ・・・!』
(久しぶりにボールに触る!)
(ちょーうれし!!)
私は靴紐を固く結んで影山に寄る。
影山「じゃあ、俺に向かって山なりにボール投げてくれ。」
『おけ!影山・・・?どうかした?』
私に説明をし終わった影山が、何故かじっと私の左手を見ている。
影山「ん、ああ、なんでもない。頼んだ。」
『うん!お願いします!』
にまにまな私は上機嫌でボールを手に取った。
菅原side
俺は今体育館で後輩たちの自主練に手伝っている。先輩っぽいな!
(とか言って眺めてるだけだけどー、)
(俺は日向や影山みたいな体力おばけじゃないからなー)
今体育館には日向と影山、それに1年マネージャーの西川がいる。
日向「もういっぽーん!!!」
影山「西川。」
『はい!良くなってきてる!』
日向「もう、、いっぽーん!!!!」
『はいっ、よ!』
いつも通り日向は飛び回っているし、なんだかんだ西川も付き合ってくれている。
(・・・これ俺いるか、?!)
(まー!いいか!なんか落ち着くし!)
俺は日向たちを1人ずつ観察し始めた。
菅原「・・・ん、?」
(なんか、なんだ?違和感がある、)
影山「・・・・・・」
よく分からない違和感を感じつつも、ぼーっと練習を眺めていると、突然影山が駆け寄ってくる。少し険しい顔だ。
(なんか驚いてる?疑ってる?)
影山「菅原さん。」
菅原「おー!どうした?」
(やべー、コツとか聞かれても困るべ)
技術面で支えられるか不安になっていると、険しい顔の影山は西川を指さす。
影山「なんか、西川が変って言うか、」
菅原「? 変?いつも通りに見えるけどな」
影山「・・・ちょっと、試したいことがあって」
影山「ゴニョニョ・・・」
菅原「? 全然いいけど、なんでだ?」
影山「それが・・・」
あの後、影山が言ったことを実行した。西川に話しかけ、ネット付近に立ってもらう。
『あの、なんで私ここに??』
本人は混乱している様子だ。俺も同じ。
菅原「なんか影山が、西川のトスを見てみたいんだって!」
『え、!?いや!私出来な・・・』
影山「いいからやってみろ。とりあえず。」
『え、えぇ・・・日向は大丈夫、??』
日向「おー!!でも西川出来んのか?!」
『できないよ・・・!』
菅原「まーまー、俺もよくわかんないけど」
俺は影山が何に驚いたのか知りたくて、ほぼ強制でボールを持たせた。
(でも、西川って未経験じゃ?)
西川は少し迷ってから、にんまりと笑った。
『・・・じゃ、やってみる!』
日向「はい!俺いきまーす!!」
日向が元気よく走り出す。
(ま、よくわかんないけど上手くは・・・)
ドンっっ 日向「え?!」菅原「は、?」
体育館に鈍いバウンド音が響く。
西川がトスしたボールは、ネットの向こう側にころがっていた。
影山「・・・は、おい、・・・?」
その場にいた西川以外頭の中は混乱の嵐。日向に至っては固まっている。
(・・・いま、気のせいじゃなかったら・・・)
(日向の手にドンピシャ・・・、?!)
日向の高い打点や位置、全てがぴったりでボールが日向の手のひらに当たっていた。
俺の頭の中では、さっきの影山の言葉が頭の中で繰り返される。
影山「それが・・・なんかあいつのボール異様にやりやすいっていうか、、」
影山「なんか変です、」
(え・・・いや、西川っていま日向と初めてやったんだよな、??)
(合わせたのか・・・?初見で??)
菅原「に、にしかわ、?」
俺が驚きのあまり西川の名前を呼ぶと、こちらに振り向く。
『・・・ふふ!やっぱちょーー楽しい!!』
そこにはバレーが好きでたまらないような、狂気的で純粋な笑顔がうつっていた。
西川side
日が差し込む静かな体育館に、バレーボールの音だけが響く。
(・・・いつぶりにやったろ、トス。)
(日向、めっちゃ飛んでた、!すごいな。)
私は感動や楽しさで感極まる。
菅原「に、にしかわ、?」
突然菅原さんは私のことを呼んだ。
(あーーー・・・やっぱり、)
私は振り向きながら思考と口が連動する。
(やっぱちょーー楽しい。)
『やっぱちょーー楽しい!!』
今思う。やっぱり私はバレーが大好きだ。
(・・・なんというか、さっきから静か、?!)
(私が何かしたかな・・・?!)
焦った私は固まっているみんなを交互に見ながら喋る。
『すっ、すみません!!何かしました?!』
影山「は、お前・・・いま・・・」
日向「にっ西川!!今のなんだ?!?!」
日向が影山にかぶせて喋る。
『え・・・何って言われましても、トス・・・、』
(な、なんでそんな興奮してるの?!)
日向「いま!!手にピッタリで!!!」
『うぇ、うん!日向すごいね!』
(? なに?!みんながおかしいよー!!)
日向「いや?!!俺がすごいってか・・・」
菅原「・・・ちょっっと聞いていい???」
様子が違うみんなに怯えていると、菅原さんや影山に尋問され始めた。
数分後・・・
菅原「・・・はーー、つまり、」
菅原「西川は自分がやったことを自覚できてないんだな?」
呆れたように言う菅原さんに、私は焦る。
『え・・・やっぱなんかしました?!』
影山「おい、西川。今までバレーしてたか?」
『? うん!中学から!』
影山「・・・上手いとか言われなかったのか」
『えー?上手いとはちょっとだけ言われてたけど、チームのみんながすごくてねー!』
『私がトスすると、みんな吸い込まれたみたいにバッチリ打ってくれるの!!』
菅原「あーー・・・なるほど、笑」
影山「・・・西川お前、バカなのか?」
結構深刻そうな目で私を見る影山。
(な!!失礼な!!!)
『かっ、影山に言われたくないですぅー!!』
日向「なあなあ西川!!スパイクとかはできないのか?!俺見たい!!」
キラキラ笑顔の日向。勢いがすごい!
『・・・え、いやまあ、できなくは・・・?』
日向「まじか!!やってみて!!」
(う・・・キラキラが眩しい・・・)
『おけ!やってみるけど笑わないでよ!!』
私は押し負けて、スパイクやレシーブをすることになった。