TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
スノ短編集

一覧ページ

「スノ短編集」のメインビジュアル

スノ短編集

1 - 七年越しの💙❤️

♥

50

2023年10月29日

シェアするシェアする
報告する

学校の終わりのチャイムが鳴るや否や、私は荷物を持って教室を飛び出した。今日は待ちに待った夏祭りの日。私は今日、友達からの誘いも全て断って、彼らと交わした約束を数年越しに果たすのだ。

フワフワとした気持ちで通学路を走り、家の門を開ける。玄関の隣の縁側で、座って笑いあっている浴衣の青年が二人。二人は同時にこちらを振り向くと、優しい笑顔を浮かべた。

💙「よお。久しぶりだな」

❤️「学校から走ってきたの?すっごく汗かいてるよ」

親戚の双子のお兄ちゃんである、翔太くんと涼太くん。彼らはどんな時も一緒にいる。浴衣を着て、縁側に腰かけているその姿があまりにも美しくて……それと、久しぶりにお兄ちゃんたちに会えた嬉しさで。私は笑顔で頷いた。

「今日があの約束の日だから、待ちきれなくて!」

❤️「ふふ、そうだね」

💙「早く着替えて来いよ。祭り、もうすぐ始まるだろ?」

「うん!」

微笑む二人の隣に荷物を置き、家の奥へと向かう。あらかじめ用意しておいた浴衣を着る前に……

「汗、ふかないとだな」

急いで汗ふきシートで体を拭こうとすると、縁側の方から、

💙「汗ふきシートじゃ大変だろ。シャワー浴びてきたら?」

「えーでも、お兄ちゃんたち待たせてばっかりになっちゃう……ていうか!見てたの?!」

💙「ばっ……!違ぇよ、別に見てなんか……!」

❤️「汗ふきシートとか言ってる時点でもうバレバレだからね?」

💙「おい涼太っ……!」

「もー。翔太お兄ちゃん変態〜」

💙「違えって!早く風呂行ってこい!」

❤️「俺たちいくらでも待つからさ。こういうのはレディーファーストでしょ?」

「なんかちょっと違う気もするけど……ありがとう、じゃあ入ってくる!」

涼太くんの言葉に笑いながら、足早にお風呂場に向かう。体の汗を軽く流すついでに、汗でおでこに張り付くほどになっていた髪も洗ってしまう。

ササッとお風呂を出て、ドライヤーで髪を乾かす。そのまま脱衣所で浴衣を着て二人の元へ向かうと、二人は驚いた顔で私を見つめる。

「……なに?どこか変かな」

❤️「いや、変とかじゃなくて……」

💙「シャワー早いし、着付けも早いな」

❤️「しかも、浴衣。すっごく似合ってて可愛い」

「え、可愛い?!」

思わぬ言葉にびっくりして、顔が熱くなる私。

💙「おい、俺が言おうと思ってたのに!」

❤️「言ったもの勝ちでしょ」

私を置いて二人でワイワイと話を進めていく様子に、顔の熱も引いて思わずクスリと笑ってしまう。

💙「……なに笑ってんだよ」

不服そうな顔で私を見る翔太くん。私たちが初めて会った時からずっと、二人のこのテンポ感は変わっていない。

「全然変わんないね、二人とも」

気づけば私はふとそう零していた。そんな私にまた目を丸くする二人。

💙「……ふはっ、お前はでっかくなったよな〜。もう高校生だっけ?」

私の頭をわしゃわしゃと撫でながら翔太くんは言う。



七年前。私たちが初めて会ったのは、ひいおじいちゃんの法事があった時だった。小学三年生だった私は、法事というものが何か分からない上に、ひいおじいちゃんとは滅多に会ったことがなかったため、ずっと暇を持て余していた。そんな時、私の遊び相手になってくれたのが翔太くんと涼太くんだった。中学二年生だった彼らが幼い私の面倒をずっと見てくれて、たった一日ですっかり仲良くなった。

……約束をしたのも、この日だった。法事のあった日がちょうど地域の夏祭りと重なっており、今思えば法事をするような雰囲気ではなかった。

「ねぇ、なんでおまつりにいっちゃだめなのー?」

幼い私は、二人にそう聞いたらしい。

💙「うーん、なんでって言われてもなぁ」

❤️「ひいおじいちゃんが死んじゃった日だから、今日は外に遊びに行っちゃダメなんだよ」

「んー、そうなんだぁ……おにいちゃんたちと、おまつりいきたかったなぁ」

私があまりにも行きたい行きたいと言うから、二人は必死に考えてこう言ってくれた。

❤️「じゃあさ、俺たちも滅多にここに来ることは出来ないから、お互いに大きくなったら一緒にお祭りに行こうか」

「おおきくなったらー?」

💙「お、いいじゃんそれ。○○が今三年生だから……七年たったら、高校生?」

❤️「俺たちも成人になるし、ちょうどいいかもね」

💙「じゃあ○○、七年後。七年後の夏祭りは、俺たちと三人で行こうな」

「ななねん……わかった!」



七年後の夏祭り。それが、今日にあたる。

あの頃と変わらない笑い方で、翔太くんは私の頭を撫で続ける。

「そう!私ももう高校生なの。そんな子供みたいに撫でないで!」

なんだか急に照れくさくなって、翔太くんの手を払う。

💙「いやいや、高校生もまだ子供でしょ」

そう言って翔太くんは軽快に笑う。改めて二人を見ると、あの頃とは違う大人っぽさが滲んでいて、なんだか少しソワソワしてしまう……

❤️「それにしても、七年越しに約束を果たすって、なんだか漫画みたいだよね」

「たしかに。七年間もこの約束覚えてるなんて……」

💙「七年経てば忘れちゃうはずなんだけどな」

❤️「相当楽しみだったんだね、俺たち」

「だねぇ……」

お祭りに行くために集まったのに、家の縁側でしんみりと話す私たち。

❤️「……あれ?この音、お祭りの囃子じゃない?」

ふと聞こえてきた祭り囃子に、ピクリと反応する涼太くん。

💙「みたいだな。んーじゃ、そろそろ行こっか」

そう言って二人は手を私に差し出す。戸惑う私に、涼太くんが言う。

❤️「はぐれたら困るでしょ。ほら」

💙「……ふはっ、何顔赤くしてんだよ。ほら行くぞ!」

「え、わ、ちょ!」

私の両手を引いて歩き出す二人。そんな二人の顔も赤くなっているように見えたのは……ただの気のせいなのでしょうか。

この作品はいかがでしたか?

50

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚