テラーノベル
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夜――
部屋の灯りは落とされ、
静寂だけが広がっていた。
規則的な寝息の中で、
💛「……」
岩本は、まだ意識がはっきりしていなかった。
夢と現実の境目が、曖昧で。
ぼんやりとした感覚の中で――
気配が、近づく。
二つの影。
ゆっくりと、すぐそばまで。
ひとりが、
そっと頬に触れる。
あたたかい指先。
そして、
やわらかい唇が俺の頬に触れる。
💛「…んっ」
💛(……また、夢……?)
抵抗する力もなく、
ただ、その感触を受け入れてしまう。
もうひとりの気配が、
静かに寄り添う。
触れるか触れないかの距離で、
優しく、ゆっくりと。
俺の肌をなぞる。
💛(……なに、これ……)
現実みたいに、鮮明で。
逃げることもできないくらい、
心地よい。
思わず、身体が小さく反応する。
耳元で微かに触れる吐息。
首元に落ちる感触。
💛(……だめだ)
💛(こんなの……)
鼓動が、少しずつ早くなる。
でも――
💛(……このまま)
💛(覚めなければいいのに)
そんなことを、思ってしまう。
二つの指先が、同時にそっと触れる。
優しく、優しく。
境界が、曖昧になっていく。
意識はまた、ゆっくりと沈んでいく。
岩本は、
そのまま深い眠りへと落ちていった。
つづく。
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