テラーノベル
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「手始めに、被害者二人の共通点を洗うぞ」車に戻った俺は、ノートパソコンの画面に被害者二人の顔写真を並べた。
一人はIT企業のサラリーマン、もう一人は近所に住む主婦。一見すると接点のない二人だ。無差別通り魔に見せかけたい犯人からすれば、完璧なチョイスに見えたんだろう。
だが、渚の『聞き霊』が得た「右手首の火傷痕」という決定的な身体的特徴がある。
「……峯岸さん、主婦の奥さんが言ってた」
助手席で小さく丸まっていた渚が、ポツリと口を開いた。
「『あの人、私の鞄を狙ってきたみたいだった』って。刺された瞬間に、犯人がショルダーバッグの紐に手をかけて引っ張ろうとしたらしいの」
「バッグを……? 強盗目的か? いや、それならサラリーマンの男まで刺す必要がない」
「ううん、違う。主婦の奥さんじゃなくて……サラリーマンの男の人の方が本命だったんじゃない?」
渚は冴えた目で画面の男を指さした。
「男の人は背中から一つきで即死だった。でも奥さんは、たまたまその現場を目撃しちゃって、逃げようとしたところを巻き込まれた……そして犯人は、奥さんが持っていた『何か』か、男の人が持っていた『何か』を奪おうとして失敗したの」
「……なるほどな」
俺は素早く警察のデータベースを検索し、二人の最近の足取りを洗った。
すると、一つだけ奇妙な接点が浮かび上がってきた。
「……これだ。二人は今日の夕方、同じ総合病院の皮膚科を受診してる」
「皮膚科……?」
「ああ。サラリーマンの男は重度の金属アレルギーで通院。主婦の奥さんは、息子の皮膚炎の薬をもらいにきていた。そして——」
俺は画面をスクロールさせ、その病院の皮膚科医のリストを呼び出した。
「その病院の皮膚科医の中に、半年前の事故で『右手首に重度の火傷』を負って休職中、最近復帰した若い勤務医がいる」
渚が息を呑む。
「その医師の名前は?」
「城島(じょうじま)。サラリーマンの男は、この城島に対して深刻な医療過誤の訴訟を起こそうとしていた。……動機は十分だ」
三年前の未解決事件を真似て通り魔を装えば、自分に捜査の手が及ぶことはない。たまたま居合わせた目撃者の主婦もまとめて刺し殺せば、完全な「無差別殺人」として処理されるはずだった——それが、この模倣犯の描いたシナリオだ。
「どこまでも胸糞悪い奴だな。己の保身のために、三年前の事件までダシにしやがって……」
俺はダッシュボードを拳で叩きつけると、エンジンをけたたましく吹かせた。
「行くぞ渚。病院の当直室で高くくくって寝てるであろう『お医者様』に、死者の声をお届けにいこうぜ」
「……うん。容赦なく、叩き起こしてあげよう」
渚の目が、冷たく静かに光っていた。
夜の闇を切り裂き、覆面パトカー仕様のセダンが病院へと突っ走る。
三年前の真犯人を追うための道は、まだ遠い。だが、その痛ましい記憶を汚す奴を、俺たちは絶対に許さない。
前職は舞妓
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きょう
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コメント
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うわ、第9話一気に核心に迫ってきましたね!渚ちゃんの「男の人の方が本命だったんじゃない?」って推理、冴えてるなあ…。皮膚科と火傷痕の繋がり、医療過誤訴訟の動機——伏線がちゃんと回収される感じが気持ちいいです。そして「死者の声をお届けにいこうぜ」って台詞、渋くてカッコいい…!三年前の事件を汚す奴は許さない、という主人公の怒りが伝わってきて、続きがめちゃくちゃ気になります!