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互いにわかり合っているから、利用している。互いがどんな状況であれ、自分にとってそれが都合が良ければ利用する。
利用してもいい、されても構わない関係まで、私達は来ていたのかと。
(アルベドのいっていることは正しい……よ)
だって、私も、一人が嫌だから、アルベドなら一緒にいてくれても大丈夫だって、彼の心配をするフリをしつつ、彼が隣にいてくれたらって願っているんだから、おあいこなんじゃないかと思った。
だから、アルベドは、わざと利用している、という言葉を使ったのだろう。私のこと、そして、自分のことを理解しつつ。
「でも、諦めたわけじゃねえよ」
「何を」
「お前の恋人になる事」
「それは諦めなさいよ。変わらない……今でも、リースのことが好き」
「何処が好きなんだよ」
「一言で表せないのが、好きってことなんじゃないの?じゃあ、アンタは私の何処が好きなのよ」
「一言で表せねえな……一年、いや、百年欲しいくらいだ」
「ほら、一緒。そういうことよ」
このはなしはやめようと、切り上げれば、意図を理解したらしく、それ以上アルベドが聞いてくることはなかった。今でさえ、アルベドは、私の中で大きなポジションであるのに、それ以上を望まれると、私は与えられない気がしたのだ。
それを彼は分かっている。でも、諦めないのは、彼が往生際が悪いから。認めた上で、認めたくないってそう言い張ってるようなもの。別に嫌じゃないけど。
グランツみたいな、誰かを傷付けてしまいそうな、好きな人さえ傷付けるような恐ろしい愛じゃなくて、もっと大きいもの。狂愛の先にある偉大なる愛みたいな……言語化の難しい、するのもおこがましい尊い愛、みたいな……そんな。
(私が、愛を語るって……最近まで、恋にも気づかなかったのに?)
私が、愛についてリースにかたるとしよう。それは、本当に恥ずかしいことなんじゃないかって。リースの方が、きっと愛を理解していると思う。もしかしたら、トワイライトも。まあ、ここら辺は良いとしても、これから、どうするかだけは、本当に考えていきたい。
野宿も面白い。でも、アルベドの夢を聞いたからこそ、私は、彼の夢の手助けをしつつ、自分の生活に戻れるきっかけを探していきたいのだ。
ずっとこのままでは、エトワール・ヴィアラッテアに屈服したような気がして、腹立たしい。
「ラヴィ……は、大丈夫なのよね」
「ああ、大丈夫だろ」
「なんでそんなに軽いのよ。仮にも弟でしょ?いや、アンタを殺そうとした弟だから、あれかもだけど」
「俺は、ラヴァインのことは、弟として愛してるって言っただろ。それに、兄弟としての感というか、信頼はあるからな。大丈夫だろって、そう言ってるんだよ」
「……う」
「うっ、て、何だよ。文句でもあんのか?」
「ううん、別に。でも、以外」
「兄ってのは、弟の後始末までしてやるもんなんだよ」
と、アルベドは、歯切れ悪く言った。
彼の中では、何かについてかたっているつもりなのだろうが、私にはさっぱり理解できなくて、頭を捻れば、アルベドは、むしゃくしゃしたように、紅蓮の髪を引っ掻いた。
「災厄の時のこと」
「ふん」
「ふんって、聞くつもりないなら、話さねえけど」
「それって、聞いて欲しいッてことじゃないの?」
「て、てめ……お前の頭はどうなってんだよ。思い出すのもこっちは腹立たし言って言ってんだ」
「そんなこと言ってないじゃない。というか、矢っ張りなんかあったんだ」
私がそう言えば、アルベドは、落ち着きを取り戻すように、深呼吸をしていた。
彼が冷静さを角なんてよっぽどのことなのだろう。
ずっと、気になっていて、ちょろっとしか聞けなかった、アルベドとラヴィンの話。災厄の時、何があったのか。私が置いていった後、どうなったのか。それは、ずっと気になっていた……疑問だったことだ。グランツの事も、聞けずじまいだったけど。
「記憶喪失になったとは言え、あんなに豹変するものなのかなって、疑問だった。私の知っている、ラヴァイン・レイと……災厄後に出会って、記憶を取り戻したけど光の?っていうのも、またおかしい話だけど……ラヴァイン・レイが違う気がして」
「一種の洗脳」
「アンタの弟が?」
「俺よりも、不安定な奴だったからな。精神状態が」
「アンタを殺そうとしていたのに……いや、そりゃ、精神状態疑うけど、そう言うわけじゃないんだよね」
「…………俺が、彼奴を見ていなかったからな。もっと、向き合っていれば、もしかしたら」
「……アルベド」
後悔が滲み出た顔を見て、私は何か言えただろうか。
全部話せって無理には言わないし、何だか、聞けない雰囲気になってきて、私は、目線を逸らすことしか出来なかった。茂みで、兎が跳ねた気がした。兎の肉って美味しいって最近、アルベドが狩ってきたんだけど、あの可愛らしいフォルムを食べるのには、躊躇った。でも、美味しかった。そうやってしか、私達は生きていけないって思い知らされた。
話がそれたけど、アルベドとラヴァインの関係って矢っ張り複雑なんだなって。一言で表せない兄弟関係。私とトワイライトもある意味複雑なんだけど、攻略キャラ同士の、複雑な関係は、複雑だってオタクだからそう思ってしまう。感くぐってしまう。
「アンタのせいじゃない……って、まだ、聞いていないのに、こんなこと言ったらあれかもだけど、ラヴィだって、別に本気でアンタのこと殺そうと何てしてないでしょ」
「そーだな」
私の知っているラヴァインは、ちょっとお調子者で、アルベドとは違う胡散臭さがあって、それでも、イイ奴で。
災厄の前のラヴァインは、敵だって分かったときの絶望感というか、的なのに、攻略キャラなのっていう驚きがあったからあれだけど、今、全てから解放された彼は、輝いているって思ってる。
名前の意味を調べるオタクのリュシオルが、アルベドは光の単位っていう意味と、白、潔白な……とかそういう意味があるらしい。そこまで、考えないオタクが私だから、その話を聞いて、勿論、その他の攻略キャラの名前が、全て光に関わるものだって聞いて、何となく、成る程なあ、なんて納得した。リュシオル曰く、敵側の人間は、闇に関わる意味を持っているとかなんとか。創作オタクが好みそうな名前付けされているなあ、っていうのはさておき、ラヴァインは、確か、光側じゃないって、彼自身が、自分の名前について、言及していたのを、少し立ってから思い出した。
完全な光じゃない攻略キャラ、ラヴァイン。
彼の立ち位置は、はじめから特殊だった。
「彼奴が、ヘウンデウン教に入ったのは、俺のせいだ」
「だから、なんでそんなにさっきから自分のこと責めるわけ?アンタってそんなタイプだった?」
「いや、だが、彼奴が傷ついていたことには変わりねえよ。傷つけ、傷付けられみたいな関係なんだよ。これを、彼奴は愛と呼んだ。お前は、どう思う?」
「傷付け合うのが、愛?……可笑しいって言ったら、さっきの、普通って何?っていう哲学みたいな話に戻るからあれだけど……そう、ね……ラヴィにとって、それが兄に対する愛情表現だったとしたら……」
不器用だなあ、って思うけど。
私がそう言えば、アルベドは、こくんと頷いた。
「俺もそう思う。彼奴の愛情表現がそれだった。俺も、昔から、生きる為、夢のために人を殺してきた。それに、彼奴は憧れてしまった。だが、俺の夢を聞いて、彼奴は絶望したんだろう。彼奴の中に、理想の俺がいたから」
「それって、凄いかってな話じゃない?理想押しつけられて、失望して、それで、ラヴィは敵になったんでしょ?」
拗れた原因は何となく分からないでもないけれど、それはあまりにも、アルベドが不憫だと。私は、ちらっとアルベドを見たが、彼の表情は変わらなかった。アルベドの顔から、感情を読み取ろうなんて、出来るはずも無い。しようと思うだけ無駄だ。
「確かにそうだな。勝手に、理想像崩されて、ぴーちく、ぱーちく泣いてんだ。俺が知るかって話だよな。だが、それがダメだったんだ。俺の夢は、エトワールは理解してくれたが、闇魔法の奴らが、理解できるようなもんじゃねえ。自分たちを傷付けてきた人間を好きになろうって言う方が難しいだろ」
「そう、だけど」
「別に、ラヴィ……彼奴は、俺の残酷さに憧れたわけじゃねえ。ただ、災厄のせいで、思考がねじ曲げられた。少し傾いた愛が、ぐちゃぐちゃに歪められて、あの形になっちまったんだよ。俺から、全てを奪いたい。俺から、全て奪えば、理想の俺だけが残るってな」
「だから、ラヴィは、奪いたいって……」
口癖のようにいっていた。
奪うことで、肯定しようとしていた。子供みたいな、そんな思考で。
けれど、私は、アルベドの言葉で、どうしても嫌だなって思ったことがあった。彼は、知らないから、そんな風に思わないでって強く言えないけど。
(災厄……混沌がなければ、ラヴァインはそうならなかったって……そう聞えちゃう)
それは違うって、そう、言いたかった。