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やまとは、ゆうたと近くの公園に連れて行くと、少しだけ息を吐いてから、目の前のゆうたに向き直った。
空気が少し重く感じられるほど、やまとの表情は真剣だった。
いつもは軽やかで優しげな笑顔が浮かぶやまとだが、今その顔に浮かんでいるのは、覚悟を決めたような、どこか強い意志を感じさせる表情だった。
「ゆうた、俺…」
やまとは少し言葉を切った。
目の前にいるゆうたの顔を見つめ、言葉が胸の中でぐるぐると回っているような感覚があった。
「俺、彼女と別れた。」
ゆうたは驚きの表情を浮かべ、思わず一歩下がった。
言葉の意味が頭にすぐに入ってこない。
ただ、やまとの顔を見つめていると、何か重大なことが告げられたということだけは確かにわかる。
「え?それ、どういうこと…?」
ゆうたは動揺を隠せない。その心の中で、何かが震えているようだった。
やまとはゆうたの反応に少しだけ息を吸い込み、そのまま言葉を続けた。
「理由は…俺が、ゆうたが好きだから。」
その言葉がゆうたの耳に届いた瞬間、心臓が一瞬止まったような感覚を覚えた。
まるで時間が止まったかのように感じられ、周りの音がすべて遠くから聞こえるようになった。
「俺、ずっと…気づいてたんだ。ゆうたのことが好きだって。」
やまとの声は低く、けれど力強かった。
ゆうたの目をしっかりと見つめながら、彼は静かに、しかし確かな決意を込めて言った。
「でも、俺はずっと自分の気持ちに蓋をしてきた。」
「どうして?」
ゆうたは思わず口をついて出た言葉だった。
自分でも驚くくらい、強い感情があふれてきた。だって、今までのやまとは、どこか遠慮しているように見えたし、そんな気持ちを感じたことはなかったから。
やまとは一瞬黙り込み、少しだけ頭をかいた後、続けた。
「最初は、ただの友達だと思ってた。でも、ゆうたと一緒にいると、だんだんと…違う気持ちが湧いてきた。」
「違う気持ち?」
「うん。」
やまとは少し苦笑いを浮かべて言った。
「でも、彼女がいたし、俺はそれに悩んでた。でも、最後には気づいたんだ。俺が本当に欲しかったのは、彼女じゃなくて、ゆうたなんだって。」
その瞬間、ゆうたは胸の奥で何かが大きく動いた。やまとが自分に対して抱いている気持ちが、言葉を超えて伝わってきたからだ。
今までずっと、彼の言葉や行動に裏があるのではないかと考えていた自分が、今やっとその答えを得たような気がした。
「だから…、俺、彼女とは別れたんだ。」
やまとは静かに、しかししっかりとした目でゆうたを見つめていた。
その目には、もう迷いがなかった。
まるでこれが自分にとって、ただ一つの正しい選択だと言わんばかりに、真剣な眼差しでゆうたを見ていた。
ゆうたは、その言葉をじっと噛みしめた。
頭の中でいろんな思いが交錯して、言葉にするのが難しかった。
でも、心の中でやまとがどれだけ自分のことを大切に思ってくれているかが、今、初めてしっかりと伝わった気がした。
その時、ゆうたは少しだけ自分の感情を整理しようとしたが、それでもやまとが言った言葉が深く心に残り、どんどん広がっていくのを感じていた。
ゆうたは、やまとの告白を受けて、心の中で複雑な感情が渦巻いていた。
やまとが彼女と別れた理由が自分だと知り、嬉しい反面、どこか申し訳ない気持ちも湧き上がってきた。
やまとが自分のために彼女と別れたという事実は、思っていた以上に大きな衝撃を与えた。
その一方で、ゆうた自身が抱えている気持ちに気づかされた。
やまとが自分に向けている強い想いを感じながらも、心の中でどうしても整理できない感情があった。
自分は正直、やまとのことがまだ好きだった。
ずっと心の奥で、やまとを求めていた。
そして、その気持ちを抑えている間に、ひゅうがとも少しずつ距離が縮まっていた。
でも、心のどこかにいつもやまとの存在があった。
彼が他の誰かと楽しそうにしているのを見ていると、胸が苦しくなり、嫉妬のような感情が湧いてきた。
その一方で、自分がひゅうがと過ごす時間には、また別の温かい感情が生まれていた。
どちらの気持ちも、ゆうたは大切に思っていたけれど、その両方を抱えていることが、自分にとってとても辛く感じられた。
「どうしてこんなに…」
ゆうたは思わず声を漏らした。
その言葉は、溢れる感情を表現するのが怖くて、ただ小さくこぼれた。
やまとはゆうたを見つめて、少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「ごめん、ゆうた…、俺が急にこんなこと言って、驚かせたよな。」
やまとの声は、どこか申し訳なさそうだった。
それを聞いたゆうたは、胸が苦しくなるような感覚に襲われた。
「いや、驚いてるわけじゃないけど…」
ゆうたは何も言わずに、顔を横に向けた。
やまとの気持ちはわかるけれど、それが自分にとってどれほど重いものか、ゆうたにはうまく言葉にできなかった。
その時、涙が自然にこぼれ落ちてきた。
ゆうたは、急いで顔を手で拭ったが、それでも涙は止まらなかった。
彼が自分に抱いている気持ちを知ったことで、心の中に溢れていた感情が一気に溢れ出したのだ。
「ごめん…」
ゆうたは声を震わせながら呟いた。
彼の心がどうしても整理できないことが、涙となって表れていた。
やまとはゆうたのその姿に、思わず足を一歩踏み出した。
「ゆうた…泣かないで。」
やまとは優しくゆうたの肩に手を置くと、もう一度ゆうたの顔を見つめた。
その目は、ゆうたを安心させようとするような優しさで満ちていた。
「俺、無理に決めさせたくないんだ。ゆうたがどう思っているのか、ちゃんとわかってるから。でも…俺、ゆうたが好きだって気持ちは変わらない。」
やまとはもう一度、しっかりとゆうたを見つめた。その目には、強い覚悟とともに、ゆうたへの深い愛情が込められていた。
ゆうたはその言葉に、胸の中で何かが揺れるのを感じた。
彼の言葉が本当に自分に向けられたものだとわかると、また涙が溢れた。
どこかで自分が求めていたのは、この言葉だったのかもしれない。
それでも、まだ迷いがあった。
ひゅうがとの関係も気になるし、彼との時間も大切にしてきたから、簡単に答えを出すことができなかった。
「やまと、俺…」
ゆうたは言葉を選びながら口を開こうとしたが、また涙が溢れてきてうまく言葉が出てこなかった。
その時、やまとは優しくゆうたを抱きしめた。
ゆうたはその温もりに包まれて、少しだけ安堵した。やまとが自分を大切に思っているのが伝わってきて、胸がいっぱいになった。
「大丈夫だよ、ゆうた。急がないで、ゆっくり考えてくれ。」
やまとの言葉は穏やかで、どこか包み込むような優しさがあった。その温かさに、ゆうたは少しだけ安心した。
その時、ゆうたの心はまだ答えを出す準備ができていなかった。
しかし、少なくともやまとが自分に対して抱いている気持ちは、今まさにリアルに感じられた。ゆうたはただ、彼の胸の中で静かに泣き続けた。
やまとは、ゆうたが涙を流しながら静かに泣いているのを見て、どう声をかけていいのか迷っていた。
しかし、しばらくしてから、ゆうたが少し落ち着いてきたのを見て、やまとは静かに言った。
「そろそろ戻ろうか?」
その言葉には、やまとの優しさと配慮が込められていた。
彼はゆうたが無理に答えを出さなくてもいいことを理解していたし、ただそばにいることが今は大切だと感じていた。
ゆうたは、やまとに言われて初めて自分の立場を思い出した。
そうだ、ひゅうがが待っている。ゆうたはすぐに目を擦りながら顔を上げると、少しだけ顔を赤くしながら頷いた。
「うん、ありがとう。」
その言葉には、少し照れくさい気持ちとともに、やまとに対する感謝の気持ちが込められていた。
ゆうたは立ち上がり、しばらく目の前でうつむいていたが、再び顔を上げてやまとに向き直った。涙で少しぼんやりとした目をこすりながらも、その顔には少しだけ笑顔が戻ってきていた。
やまとは静かにゆうたを見守りながら、ほんの少しの間を置いてから、ゆっくりと歩き始めた。
「大丈夫、無理に急ぐ必要はないから。」
やまとの言葉は優しく、けれど確かだった。ゆうたはそれに少し安心して、歩みを進める。
二人は無言で事務所に戻る途中、やまとがふと振り返り、ゆうたに向けて笑顔を見せた。その笑顔が、ゆうたの心を少しだけ軽くしてくれた気がした。やまとが抱えている感情を受け止めることができない自分に、ゆうたはまだ答えが見つからないことを改めて感じていたが、それでもやまとの存在がどれだけ大きいかを実感していた。
…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ