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ビードロの思い出

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ビードロの思い出

1 - 第1話 ハゲ頭

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2024年09月04日

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お盆の時期になると思い出すことがある。 まだ私は5歳で、夏の蒸し暑い日のことだった。

 母が電話で、なんだか深刻そうな声で身内らしきものと電話で喋っていた。

 「義父さんが、さっき息を引き取った…。」と涙目で父にぼそりと話した。

 「そうか…」と父は一言だけ喋り、自室に篭っていった。

 母は私と兄に「おじいちゃんがさっき天国に旅立っていっちゃった」と涙を流し、私たち兄妹を抱きしめながら言った。

 兄は小学校1年生だったのである程度意味を理解してたみたいだ。

 まだ5歳児の私には理解できず、「天国って何?」と兄に聞いた。

 兄は困ったような顔をし、「死んだ人が行く場所だよ」と言った。

 「そうなんだー」と言いつつも、私は意味を理解でなかった。

 幼い子供にとって死とは複雑でまったく理解できないことだ。

 父が身なりを整え、部屋から出てきて、「これから病院に行ってくる」と家を出ていった。

 母と兄、私は家でお留守番をする事となった。

 私は父方の祖父の顔を知らなかったのだ。

 私が物心着いた時には、脳梗塞でたおれ、ずっと入院をしていた。

 だから祖父の顔も知らないし、思い出もなかった。

 それから数日が経ち、人生で初めて葬式と言うものを体験した。

 奥の親族の控室みたいな、畳の大広間で、親族らしき人がみんな黒い服を着て、色々と喋っていたのを覚えている。

 母と叔母がお茶を親族たちに出しており、誰だかわからないような親族と会話を楽しんでいた。

 奥の上座の席では祖母が卓上に置かれたお茶菓子を食べながらお茶を啜ってた。

 私はこの祖母という人が子供ながら苦手だった。

 セカセカとし、口調がキツく、ゴワゴワと厳つい手で、普通にしていても顔が鬼のような顰めっ面で怖かった。

 母は私たち兄妹に「おばあちゃんの所にいない」と言い、兄と一緒に祖母の席の所に座らされた。

 しかしさすがの祖母も今日は落ち着いた感じだった。

 表情もいつもより柔らかい感じに見えたが口調は相変わらずだった。

 「あーあ、やっと死んだよあの爺さん」と言いながら私たち兄妹に目の前に置かれたお菓子を渡しながらお茶を啜ってた。

 兄も私も何を話したらいいのか分からずただ黙ることしかできなかったのは今でも覚えている。

 しばらくして通夜が始まり、お坊さんが木魚叩きお経をあげた。

 小さな子供にはこの時間が一番退屈で、私は飽きて、手足をバタバタし、母に何回も足を叩かれた。

 会場は線香の匂いに包まれ、お経をあげる声しか聞こえない。

 私は早く終わらないかと、ずっと周りをキョロキョロしながら過ごした。

 通夜も終わり、大広間で普段滅多に食べれない寿司やらご馳走に私は喜んだ。

 父と母は祖母や叔父、叔母と喋っており、祖父の生前の話に色々と盛り上がっていたのだ。

 私は子供の頃から食が細く、お寿司を四つほど食べて満腹になり、眠くなり始めていた。

 叔父が予約していたホテルに母と兄と笑は泊まる事になり、父は叔父と共に寝ずの番をするので葬儀場に残る事になった。

 私たちはタクシーに乗って駅前のホテルに着いた。

 子供ながら家以外の場所で泊まる事にワクワクし、兄と一緒にロビーではしゃいだ。

 母がチェックインを済まし、鍵を持って私たちを呼び、エレベーターで部屋に向かった。

叔父が気を利かせ、スイートルームを予約してくれた。

子供ながらに広い部屋に大はしゃぎして、兄とベッドの上でトランポリンみたいに遊んだ。

 母は「もう夜遅いからシャワー浴びて歯磨きして寝なさい」と言い私たち兄妹はションボリし、不貞腐れた。

部屋にはベッドが2人しかなく、私は母と一緒に寝るよう、促されたが、家に大きなソファーがなかったので「嫌だ!ソファーで寝るんだもん!」と言い私はソファーで寝る事にした。

 部屋は兄のベッドサイドの暖色ランプだけ付いている。

 私は何故かこの日は眠れなかったのだ。

 色々な所に視線を移して、ソファーの上でキョロキョロとして過ごした。

 しばらくして、部屋から物音がしてるのに気がついた。

 最初は廊下で、従業員が何かしてるのだろうと思ったが、あきらかに違う…。

 あたりを見回したが母も兄も寝てる。

 ふと、脱衣所に目がいった。

 脱衣所はちょうど私が寝ているソファーから斜めに見える角度だ。

 私はこの時、目を疑った。

 脱衣所の入り口には顔がぼやけたハゲ頭のお爺さん、今日葬式で見たお坊さんみたいな人が、壁を「ボンっ!ボンっ!」叩いていた。

 私は怖かったが、何故か声も出ず、それをずっと凝視してた。

 そのハゲ頭のお爺さんはずっと壁を叩きながらも、何度もこちらを見てる…。

 顔はボヤけて分からないが、明らかに見ているとわかった。

 私は、この時ものすごい恐怖に襲われ、声を出そうと必死にもがいた。

 涙が目に入り、視界がボヤけた頃、やっと声が出てた。

 「おかぁ〜さん!!」と大泣きし、母のベッドに入った。

 「どうしたの?怖い夢でも見たの?」

 「あそこにお爺さんんが!」と言い、母は脱衣所の所に目をやったが、「誰もいないよ?」と言う。

 しかしそのハゲ頭のお爺さんはまだ私には見えていて、壁を叩いていた。

 私は必死に母に説明したが、母はウンザリとした感じで「とりあえずお母さんと寝ようね」と言い、信じてもらえず、私は母のベッドに入り布団を被って怯えながら寝る事にした。

 音はまだ聞こえる。

 私は怖くて怖くて、恐怖に襲われ、布団を被ったまま、夜明けをまった。

 気がついたら、朝だった。

 私はいつのまにか寝ていたのだ。

 布団を被ってた所為か、汗がびっしょり、服が濡れていた。

 私は葬儀場につき、親族にその話して回った。

 祖母が「ちょうど今はお盆だから、ハルちゃんに会いにきたんだろう?」と祖母は笑いながら言った。

 私は本当に祖父の顔も、思い出も覚えてないのに、会いに来るのに疑問を子供ながら思った。

 けど、葬儀中ふと祖父の遺影をみた。

 ハゲ頭じゃなかったのだ。

 後で、大人になって聞いた話だが、この遺影は亡くなる数ヶ月前に撮影したらしい。

 今はそのホテルも廃業し、もう残ってないのだった…。

 

 

 

 

 

 

 


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