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教室の入口の前で生徒からの説明を受ける。制限時間は5分。散りばめられた宝箱の中から鍵を探して、出口の前に立つ生徒に渡せばクリア。そう説明を受け、俺達は教室に入った。教室の中は暗闇が広がっていた。先輩が持つ、入口で渡された懐中電灯を頼りに教室を見渡す。
(やばい…怖すぎる…動けない…)
そう怖がる俺とは対象的に、先輩はスタスタと歩き出す。
「ちょっ、冬馬先輩っ。待ってください」
俺はそう言いながら先輩の後を追う。
「5分しかないから急がないと」
「そうですね」
「あ。宝箱あった」
先輩はそう言って床に置かれた宝箱を開ける。
「空だ」
先輩がそう言った時、どこからか低いうめき声が聞こえた。俺は驚いて咄嗟に先輩の腕を掴む。
「春人くん、大丈夫?」
「大丈夫…じゃないです…」
「もしかして、怖いの苦手?」
「はい…」
「じゃあ、俺の腕ずっと掴んでていいよ」
そう言って先輩はニコっと笑う。
「すみません。ありがとうございます」
俺はそう言って先輩の腕を掴んだまま歩き出す。
「あっ!宝箱あった!」
そう言って先輩は教卓に置かれた宝箱に近づく。そして、先輩が宝箱に手を伸ばした瞬間、教卓の裏からうめき声をあげながら人が飛び出してくる。
「うわぁ!!」
俺は思わず先輩に抱きつく。そんな俺に先輩がふふっと笑う。
「ビビりすぎだよ春人くん。そんなに怖かった?」
「めっちゃ怖いです」
俺はそう言いながら顔をあげる。その時、至近距離で先輩と目があった。
(近い…)
俺の心臓がドクドクと跳ねる。
(やばい。なんかめっちゃドキドキしてる…)
そう思った俺は咄嗟に先輩から離れる。
(びっくりしたからドキドキしてるだけ…だよね)
「は、早く鍵探して出ましょう」
「そうだね。はい、掴まって?」
そう言って先輩は俺に腕を差し出す。その腕を俺は掴んだ。
「ありがとうございます」
そしてその後、いくつか宝箱を見つけたがすべて空っぽだった。そして、出口の生徒による10秒カウントが始まる。
「どこにもないね」
「これ、見つけれなかったらどうなるんですかね?」
「さぁ。どうなるかも気になるから、ちょっと楽しみかも」
「えぇ…」
そして残り3秒になった時、俺は先輩の腕を掴んだまま、目を瞑った。
「3…2…1…」
次の瞬間、プシューという音が鳴ったあと、幽霊たちが俺達を囲む。
「うわぁ!!」
俺は再び先輩に抱きついた。そんな俺をよそに、先輩はなんだかはしゃいでいる。
「わ〜!囲まれちゃった!ゲームオーバー!」
先輩がそう言うと、幽霊たちの後ろから出口にいた生徒が来る。
「残念。時間切れです。あなた達は幽霊に襲われて幽霊の仲間になっちゃいました〜!」
「だって春人くん。俺達も幽霊だね。わっ!」
そう言って先輩は俺を脅かそうとする。
「そんなイケメンな幽霊にはビビりません」
俺はそう言いながら先輩から離れた。
そしてその後、幽霊たちから解放され、教室を出た。廊下を歩きながら先輩は楽しそうに言う。
「いや〜。楽しかったね〜」
「冬馬先輩は楽しそうでしたよね。俺は全然楽しくなかったです」
「春人くん、怖いの苦手ならそう言ってくれれば良かったのに」
「だってなんか、ちょっと強がった俺が悪いですけど、冬馬先輩がめっちゃノリノリだったから言いづらくて…」
俺がそう言うと、先輩はふふっと笑う。
「ほんと春人くんって可愛いよね」
「か、可愛くないです!」
そう言う俺の心臓がドクンと跳ねる。
(あれ…俺またドキドキしてる…)
「可愛いのに〜」
先輩はそう言ってニコっと笑う。その笑顔を見て、俺の心臓は再びドクンと跳ねる。
(なにこれ…脱出ゲームでビビりすぎて俺の心臓おかしくなっちゃったのかな…)
そんな俺をよそに先輩はお腹を触りながら言う。
「あ〜。なんかお腹すいちゃった〜」
「そ、そうですね。なんか食べますか?」
俺が誤魔化すようにそう言うと、先輩は嬉しそうに言う。
「食べる!何食べようかな〜」
「とりあえず食べ物系売ってるとこに行きますか」
「そうだね」
そして俺達はその場所に移動した。そこで唐揚げを買って近くのベンチで食べていると、周りがザワザワとする。
「あれ、佐野先輩だよね」
「佐野先輩だ!かっこいい〜」
「佐野くんに声かけて来ようかな〜」
「隣りにいるの誰だろうね」
「一緒にいる子、1年生だよね」
そんな声がチラホラと聞こえる。それを聞いていた先輩の表情が曇る。
「やっぱり、文化祭は一人でいた方が良かったのかも」
そう言って先輩はニコっと笑う。無理矢理作ったような、そんな笑顔だ。そんな先輩に俺はすかさず言う。
「何言ってるんですか。文化祭なんて高校の重大行事、楽しまなきゃもったいないじゃないですか」
俺のその言葉を聞いて先輩は俯く。
「でも、春人くんにも迷惑かかるし。これ食べたら俺はどっかで大人しくしてるよ」
「迷惑なんてかかってないですし、俺は冬馬先輩と回りたいです。それに、いま先輩がいなくなったら俺一人になっちゃうじゃないですか。俺の事一人にしないでくださいよ〜」
俺がそう言うと、先輩はしばらく黙り込んだ後、口を開く。
「ありがとう。じゃあ、買うもの買って秘密の場所に行こっか」
「秘密の場所って?」
俺がそう聞くと、先輩は口元に指を当てて言う。
「それは秘密。じゃあこれ食べたら行こっか」
先輩はそう言ってニコっと笑った。