テラーノベル
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深夜の冷たい空気が肺を刺す中、久太郎は全力でアスファルトを蹴立てて走り続けていた。
背後から迫る殺気と足音に、久太郎は冷や汗を流しながら内心で絶叫を上げる。
(えぇぇ!?ミカちゃん追いかけてきてるぅぅぅ!!!車…車捕まえて逃走を図るしか…!)
しかし、左右に入り組んだ雑居ビルの裏路地をがむしゃらに駆け抜けた果てに、久太郎の足はピタリと止まった。
目の前には高々とそびえ立つコンクリートの壁。逃げ場のない完全な行き止まりだった。
(このままじゃミカちゃんに見つかっちゃう…何かいい手は…)
焦りに心臓が激しく脈打つ中、視線をさまよわせた久太郎の目に、暗がりの中で微かに光るものが飛び込んできた。
「……あ」
今まさに自分が手のひらで触れている、古びたビルの側面。その薄暗い隙間に、錆びついた小さな鉄骨階段が取り付けられているのを見つけた。
久太郎は迷う暇もなく、足元にあったプラスチック製のゴミ箱を強引に踏み台にしてジャンプした。
メキメキと音を立て不安定に揺れ動くゴミ箱を足場に宙へ身体を押し上げ、冷たい鉄骨階段にしがみついて一気に駆け上がっていく。
階段の突き当たりから、さらに剥き出しの太い配管とコンクリートの柱へ迷うことなく飛び移った。 まるで野生の猿のようにしなやかで素早い身のこなしで、垂直な壁面をスルスルとよじ登っていく。
「わぁ…ミカちゃんいるよぉ…もうこうなったら…!」
下の曲がり角から聞こえてきた荒々しい足音と怒号に背中を押され、久太郎は最後の力を振り絞る。
ビルの外壁からわずかに突き出たてっぺんの縁に、不安定な両足を何とか踏み出し、身体のバランスを限界まで崩しながらもギリギリのところで立ち上がった。
そこは屋上ですらない。ただビルの最上部に貼り付いた、足場すらない細い装飾用の出っ張りだった。
もちろん、転落を防ぐための手すりや柵の類は一切存在しない。
吹き抜ける夜風が乱れた青髪を激しく揺らす中、眼下に広がる街並みを見下ろした久太郎は、まるで東京の夜空を一望したような圧倒的な開放感に包まれていた。
殺伐とした追走劇の最中であることを忘れさせほどに、地上の喧騒が遠のいていく。
「星も綺麗だな…今日はここで一眠りするか…」
命の危険と狂気の追跡劇の真最中でありながら、久太郎は妙に呑気な呟きを漏らした。
柵のない極小の足場の上であるにもかかわらず、恐怖心を微塵も感じさせない様子で、その場にぐったりと大の字になって寝そべる。
ふっと見上げた夜空には、都会の光の中でもひときわ鮮やかな星々が瞬いていた。
独特な青紫の色合いを湛えた久太郎の瞳の奥底に、満天の星空の光が吸い込まれるようにキラキラと細やかに反射する
それらまるで宇宙を閉じ込めたかのように美しく、深く輝いて映し出されていた。
コメント
1件
うわ、めっちゃスリリングな逃走劇でしたね!都会の雑居ビルや鉄骨階段、配管を伝っての垂直移動…もう映像が目に浮かぶようでした。そしてあの絶妙な足場で“星が綺麗だから一眠りする”って久太郎さん、危機感なさすぎでしょ(笑)。でもその呑気さと、青紫の瞳に星空が映るラストの描写がすごく印象的でした。次、どうなるんだろう…!
#ラブコメ要素あり
澪
85
澪
200
#自滅
澪
27
澪
54