テラーノベル
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(岩本視点)
ついに、この日が来た。
今日は『CUT OUT!!』の撮影の日。
そして、俺らの勝負の日。
撮影前の楽屋から、ずっとふっかに意識を向ける。
いつも通りの笑顔、声のトーン、喋り方、言葉選び…
でも、前よりも違和感が強くなってる。
「あはは!そうだね〜、わら」
「………。」
やっぱりおかしい。
前までは完璧すぎだった。
でも、今は違う。
「……んふふ…面白いねぇ!!わら」
間がある。
反応するまでの間がある。
いつもなら、すぐに反応できるであろうコメントも、時間が少しかかってる。
「………ふっか、こっち来い。」
撮影前にふっかに声をかける。
不思議そうに首を傾けながら近づいてくる。
「…照、どうしたの…?」
ノコノコ近づいてきたふっかのセットされた髪の毛を、少しくしゃくしゃにしてやる。
「……は……はぁ!!!!???おまっ!何すんの!?」
撮影前なのに少し崩された髪の毛を必死に直しながら俺のことを睨みつけてくる。
やっぱり、こっちの方が反応はえーな。
それに、顔に色もある。
「悪りぃ悪りぃ。でも、そっちのが自然な感じ出てていいよ。」
「ん〜〜…?まじ最悪なんだけどぉ?はぁ…ま、すぐに直るレベルだから良いけど…」
不貞腐れたように手鏡で前髪をいじる。
自然な感じ、出てるよ。
確かに俺はお前の笑顔が好きだよ。
でも、今のお前の笑顔じゃない。
その笑顔を見るくらいなら、怒ってる顔のが好きだよ、俺は。
撮影中も、俺はふっかから視線を外さない。
撮影現場に入ってからは………
違う、これは俺らの見てたふっかじゃない。
あいつ……
確か、丸山がいるはずだ。
そいつがいるから、ふっかの笑顔がまた違うものになってるんだ。
……いた。
あの端にいるやつだな。
あいつが丸山か。
あいつが、ふっかを壊した元凶……
あいつが…!
沸々腹の奥で湧いてくる怒り。
いざ相手を目にしたら、頭の血管がはち切れそうなほどの怒りが湧いてくる。
強く握りしめてた拳に、少し冷たい体温が当たる。
驚いて隣を見てみたら、優しく微笑んでる阿部がいた。
「照、落ち着いて?」
「………!」
阿部のその一言で、頭に上ってた血が一気に冷めてく。
こういう時に、阿部がいてくれると助かるな。
「俺も、今すぐあいつを問い詰めたいけどさ…それは、撮影後にでしょ?」
阿部は、柔らかい笑顔のまま、俺の拳に添えた手を微かに震わせていた。
そうだよな、お前も、ずっとふっかのこと気にかけてたもんな…
「……そうだな。悪い、少し熱くなってた。」
阿部に短くありがとなって伝えて、俺はふっかに視線を戻した。
(深澤視点)
今日も撮影が終わって、早々と帰宅の準備をする。
ま、今から行くのは家じゃないんだけどね?
前回ひどく扱われたんだ。
少しでもやり返さないと気が済まない……
早く、あいつのとこに……
「ふっかぁ!!!お前、この後暇だろ?」
「うわっ!ちょっと、佐久間…悪い、今日は…」
急に佐久間に抱きつかれる。
いつも通りの出来事だけど、今は邪魔でしかない。
早く、離してほしい。
「暇だよな?」
「………っ…!」
佐久間の有無を言わせない鋭い視線。
何……この圧…?
ここ最近、佐久間から感じる冷たい感覚。
胸の奥が抉られたみたいな、冷たくて重いものが沈んでいく感覚。
「ほら、行くぞ。康二が待ってんだ。」
「……ぇ?」
「それに、ラウも蓮も涼太も、ね。」
「ちょっと待って…!何!?何がしたいの!?」
大きくなってく恐怖と不安。
あ、まずい……
“ふっか“になれてない……
切り替えられてない…
だめだ、今ここで切り替えれないなら、もう、“ふっか“に意味なんてなくなる。
(佐久間視点)
ふ〜ん……
やっぱ、阿部ちゃんたちの言う通りだったか。
悪いな、深澤。
頼まれてんだよ、俺は。
「佐久間、ちょっといいかな?」
阿部ちゃんに呼び出されたのは3日前。
たまたま一緒の現場に居合わせて、一緒に帰ろうって誘いに行こうと思ったら、阿部ちゃんの方から来てくれた。
真剣な表情で呼び出されたから、何事かとは思ったけど、俺がされたのはお願いだった。
「次の『CUT OUT!!』の撮影の日。ふっかのことを1人にしないでほしいんだけど…できる?」
「うん?それくらいなら全然だけど…」
阿部ちゃんからの願いは、ふっかを1人にしないこと。
それだけ?って一瞬思ったけど、すぐにその理由がわかった。
「最近、あいつおかしいもんな。」
俺の言葉に阿部ちゃんは静かに頷く。
俺は、あいつに何があったのかは詳しく知らない。
でも、おかしいってことは流石にわかる。
「その、佐久間…ふっかは……」
「あーあー!ストップね。」
阿部ちゃんが口を開こうとしたのをおっきい声で止める。
今から言おうとしたことは、多分ふっかに起こってること。
でも、俺は聞きたくない。
「それはさ、深澤の口から聞くからさ。」
俺は、あいつの口から直接聞きたいんだ。
「………そっか。」
阿部ちゃんは、優しく微笑んだ。
阿部ちゃんには、強引にでもいいから引き止めろって言われてんの。
だから、お前が抵抗しようとしまいが、俺はお前の手を離さない。
(岩本視点)
撮影後、俺と阿部と翔太は倉庫に向かう。
ふっかが、通っていたっていう小さな倉庫に、ね。
そして、今日ふっかが来るはずだった倉庫。
「……にしても、よくこんなところに来てたな。」
隣を歩いてた翔太が、険しい顔をしながら呟いた。
倉庫に近づくにつれて、人通りも少なくなって、雰囲気も悪くなってくる。
正直、気持ち悪い雰囲気だ。
「………そう、だね…」
阿部は、静かに隣を歩いてる。
怒ってるんだろうな、それも相当。
俺も、同じだよ。
その怒りは、丸山に対して…
そして、何もできなかった自分自身に対して……
「………ここだな。」
俺らは、足を止めて目の前の扉を見つめる。
ここが、丸山のいる倉庫。
今もここで、こいつは来ることのないふっかを待ってる。
俺は、その重い扉を静かに開いた。
(丸山視点)
遅い……
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い………!!!
なんでだ、深澤くんが来ない。
おかしい、最近はこんなに遅れることなんてなかった。
なんでだ?
なんで来ないんだ?
まさか、この俺から逃げるつもりか??
なら、尚更しつけしないとだろ?
ガチャ…
……来たな。
さあ、今日はどうやってしつけてやろうか…?
「……ぇ……?」
情けない声が、俺の口から溢れた。
コメント
3件

ぅう〜…好きだぁ✨ 💛💙💚ありがと~m(_ _)m 主様〜メッチャツラいケドステキなお話有難うございます✨
第9話、読み終わりました…。 岩本くんがふっかの髪をくしゃくしゃにするシーン、すごく好きです。「その笑顔を見るくらいなら、怒ってる顔のが好き」って台詞が刺さりました。あと、佐久間が「深澤の口から聞く」って言ったところも。それぞれの想いがちゃんと動いてて、温かいのに切ない…。 最後の丸山の「情けない声」、何が起きたんだろう。胸がざわつきます。続きが気になる…!
saku
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