テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
トンッ――
空間を蹴った瞬間。
らっだぁの身体が、消えた。
「⋯っ!?」
思考が追いつかない。
次の瞬間には、空中だった。
重力の歪みを蹴り上げるように加速するらっだぁ。
青い羽織が裂けるみたいに翻る。
エンティティが咆哮した。
黒い腕が、空間ごと叩き潰す勢いで振り降ろされる。
――ギィィィィン!!
空が割れた。
亀裂が走る。
けれど、
らっだぁは止まらない。
空間の裂け目、その“境界”を踏み越える。
有り得ない軌道で。
人間じゃ考えられない速度で。
「――そこ」
らっだぁが呟く。
その瞬間。
ヒュンッ
細い刃が、黒い核を貫いた。
エンティティの動きが止まる。
空気が静まり返った。
数秒。
世界そのものが、呼吸を忘れたみたいだった。
やがて。
――ピシッ
黒い身体に亀裂が走る。
そこから青白い光が漏れ出した。
エンティティが悲鳴みたいな音を上げる。
空が震える。
街が揺れる。
崩壊が、一気に加速した。
「なっ⋯!?」
建物が崩れる。
重力が反転する。
空へ落ちていく瓦礫。
街全体が悲鳴を上げていた。
「らっだぁ!!」
思わず叫ぶ。
崩壊の中心で、らっだぁは静かに刃を振った。
黒い粒子が、風に散る。
エンティティが崩れていく。
そして。
――ドクン。
再び、街が脈打った。
次の瞬間。
世界が、光に包まれる。
眩しさに目を閉じた。
風が吹く。
甘い花の香り。
ゆっくりと目を開ける。
空の亀裂が消えていた。
崩れていた建物が戻っていく。
逆さまの塔には光が灯り、空へ向かう川が静かに流れている。
青白い魚が空を泳いだ。
ガラスみたいな鳥が鳴いている。
――世界が、戻っていた。
ただのあまとう
189
#stgr
ポテサラ
4,530
まるまろ
3
39,263
「……え」
呆然と立ち尽くす。
さっきまでの崩壊が嘘みたいだった。
らっだぁは小さく息を吐く。
「ギリ間に合ったぁ」
その声が、少し疲れていた。
らっだぁを見る。
青い羽織。
細い刃。
碧い瞳。
そのすべてが少なくとも、
“ただの旅人”には見えなかった。
その時。
カコンッ
街の中央で、何かが起動する音が響いた。
振り向くと、そこには古い標識のような装置が立っていた。
青白い光が文字を浮かび上がらせる。
『次の世界まで 徒歩五日』
しばらく沈黙が落ちる。
その文字を見上げたまま、呆然と呟く。
「……また歩くんすか」
「歩くよ〜」
らっだぁは笑う。
さっきまでの鋭さの消えた、軽い笑顔だった。
「旅だからね」
風が吹く。
修復され、元の美しさを取り戻した空中都市の光が、空へ滲んでいく。
らっだぁは踵を返した。
「じゃ、次の世界に行こうか」
その背中を見つめてから。
小さく息を吐く。
――まだ、
この旅人のことを、俺は何も知らない。
NEXT=♡1000
今回効果音多いですね
コメント
2件
「呼吸を忘れたみたいだった」っていう表現が凄すぎる…何食ったらそんな語彙力ゲット出来るんですか?!