「……してないから、処女で慣れてないわけよ。乳首なんて舐められても慣れてないから痛いし、アソコに触られても羞恥のほうが上回って、怒りに似た感情がこみ上げてくるの」
……あぁ、大分こじらせてる。
「しかも『気持ちいい?』なんてハァハァしながら尋ねてくるから、くっそ腹立って、めっちゃ低い声で『気持ちくないわよ、ど下手くそ』って言っちゃうの。……一発で泣いて帰るわね。…………そのあとルームサービスで頼んだ、シャンパンの苦さときたら……」
しみじみと言う春日さんの話を聞き、エミリさんが耐えきれずに噴き出し、咳き込んでから笑い始めた。
「……っ、ごめ……っ! 駄目だ……っ、おっかし……っ」
「むっぷん」
我慢してたのに、エミリさんが笑うもんだから、私も横を向いて全力で口をひん曲げ、鼻水をブヒュッと噴射してしまった。
「ほら笑った~~~~」
春日さんはぶっすー! とふてくされ、パーティー開けしてあるポテチを鷲掴みにして口の中に突っ込んだ。
私たちが笑い転げてる間、春日さんはバリバリとポテチを食べ、シャンパンを手酌して一気飲みしてから言った。
「だから私は成功者の話を聞きたいの! 恥を忍んで私の話をしたんだから、言え!」
あまり虐めるのも可哀想なので、ひとしきり笑った私とエミリさんは、顔を見合わせてから「どっちから言う?」と視線を交わし合う。
笑ってしまったのは確かだし、多少の申し訳なさもあるので、私から挙手して口を開いた。
「私、人様に偉そうに言える経験者じゃないんですよ。尊さんは二人目の彼氏で、一人目は……うーん……、独りよがりな感じで痛かったです。いわゆるガシガシ系で、一人で盛り上がって一人で先にイッて、私の気持ちよさなんて考えてくれなかった。それこそ、春日さんのお相手みたいに『気持ちいい?』って聞くだけ聞いて、あとは無視……みたいな感じでしたね」
「……でも速水さん、上手いんでしょ? あの人は顔がやらしい」
「ぶふぉっ」
「顔がやらしい」と言われて、私は噴きだしてしまい、ちょっとツボに入ってソファに倒れ込んでプルプル震える。
ひとしきり笑ったあと、起き上がった私はどこまで言おうか考えながら、ボソボソと話し始める。
「……うーん、尊さんは私の事を凄く考えてくれるんですよ。『お決まりの手順をやればいいや』じゃなくて、私の反応を見て『ここが気持ちいいんだ』って理解して愛撫してくれます」
その言葉に、エミリさんが頷いた。
「相手ありきよね。私は割と言いたい事を言うタイプだから、風磨さんを傷つけない範囲で『こうしてほしい』って自分の意見を言うかな。『そうじゃない』って否定しないのはマスト」
春日さんは脚を組み、真剣な顔で尋ねてくる。
「今カノの二人に失礼だけど、風磨さんと尊さん、どれぐらい経験人数ある? やっぱり数をこなして上手くなったの? 私、次に付き合うなら、大勢と付き合った人がいいのかな? って思ったりして……」
「「いやいやいや!」」
春日さんの言葉を聞き、私とエミリさんは同時に突っ込んだ。
「経験豊富な人は逆に不安になるし、『過去の女と比べられてるかも』って不安になるからやめとけ! そしてそういうタイプは一人の女で満足できずに、浮気しやすいイメージがあるからオススメしない。逆に童貞でも経験人数が少なくても、きちんと育てたら理想の男になる!」
エミリさんがまじめな顔で忠告し、私もうんうんと頷いて続ける。
「今言ったみたいに、肝心なのは男性が相手の事を考えられるかどうかと、女性が相手を不快にせず自分の意見を言えるかなんです。どれだけ経験人数が多くても、全部独りよがりなセックスなら意味がないです。あと、お願いだから、練習だと思ってSNSにいる〝セックストレーナー〟みたいな人に連絡しないでくださいね。女性用風俗とかも沼ったら地獄だから駄目です」
「…………うん」
春日さんは目を丸くして頷き、エミリさんは深い溜め息をついてから続ける。
「そういうのの全部が悪いわけじゃないし、向いてる人は経験すればいいと思います。でも彼らはセックスを楽しむため、仕事でやってるのであって、春日さんの真剣な想いや、処女喪失の責任はとってくれないんです。なら、ちゃんと真剣にお付き合いできる人が現れるまで、焦らないほうが吉」
「……分かった」
春日さんはコクンと頷き、シャンパンを手酌する。
コメント
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拗らせ春日さんにアドバイスする二人♥️♥️♥️🤭 しかし ミコティ、 顔がやらしいって....🤣🤣🤣
拗らせ姉さんに救いの手✋😁かな。