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#仕事
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#モテテク
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親権奪還の申し立てが棄却されたその日
私は陽太と二人で、お祝いに少し高いステーキを焼いた。
「美味しいね!ママ」
「本当?よかった」
食卓に流れる穏やかな空気。
かつて、直樹が「肉が多すぎる、金の無駄だ」
と怒鳴り散らしていたあの頃が、遠い前世の出来事のように感じられた。
一方、拘置所から刑務所へと移送された直樹を待っていたのは、想像を絶する再会だった。
新しく彼の房に配属された男。
それは、直樹の「裏口座」の管理を莉奈と共に手伝い
最後には彼女を裏切って金を独り占めしようとした、あのITブローカーの男だった。
「……お前、なんでここにいるんだ」
直樹の掠れた声に、その男はニヤリと卑屈な笑みを浮かべた。
「あんたの奥さんに、全部吐かされたんだよ。…おかげで俺は、莉奈とあんたの罪を全部背負わされて、このザマだ」
「なあ、直樹さん……あんたには、まだ隠してる金があるんだろ? 俺の人生を台無しにした責任、取ってもらおうか」
かつての共犯者は、今や直樹の喉元を狙う飢えた狼へと変わっていた。
逃げ場のない数畳の空間で、直樹は夜な夜な
自分が裏切ってきた者たちの憎悪に晒されることになったのだ。
私は、九条さんからの定期報告でその事実を知った。
「……因果応報ね。彼らには、一生かけてお互いの傷口を舐め合ってもらいましょう」
私は報告書を閉じ、自身の新しいビジネス───
「シングルマザーのための資産運用コンサルティング」の資料に目を落とした。
かつて直樹に「1円の管理」を叩き込まれた私が
今やその緻密さを武器に、多くの困窮する女性たちの人生を立て直している。
この皮肉こそが、私にとっての最高の報酬だった。
そんな私の元に、一通の招待状が届く。
それは、私が経営再建を指揮しているあの会社が
過去の清算を終え、新生企業としてリブランドする記念パーティの案内だった。
「ママ、そのドレス素敵だね」
陽太が、私の選んだネイビーのドレスを褒めてくれる。
「ふふっ…ありがとう、陽太」
私は鏡に映る自分を見つめた。
やつれ果て、数字に怯えていたあの日の私はもういない。
直樹が塀の中で共食いに明け暮れている間に、私は自分の帝国を築き上げたのだ。
家計簿の「純資産」の欄は、今や直樹の想像も及ばないほど積み上がっていた。
【残り58日】