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――朝。
寺に、光が差し込む。
チリン……
風鈴の音。
静かな境内。
そこに――
「……チッ」
寝癖のままの公太。
「朝から掃除とか、マジでダリぃ……」
一祟が振り向く。
「それでも来てくださったのですね」
穏やかな笑み。
「ありがとうございます」
「約束だからな」
ぶっきらぼうに答えながら、
ほうきを手に取る。
シャッ……シャッ……
掃き掃除。
ぎこちない動き。
だが――
ちゃんとやっている。
――倉庫前。
ふと、公太の目が止まる。
「……ん?」
古い木箱。
「これ、なんだ?」
一祟が覗き込む。
「あぁ……昔の修行道具です」
「今は使っていませんが」
公太が取り出す。
ガシャン
鉄の重り。
「こんなん使ってたのかよ……」
「キツそうだな」
一祟、少し遠くを見る。
「はい」
「幼い頃から、ここで修行していました」
「厳しかったですが……」
小さく微笑む。
「それがあったから、今の自分があります」
一瞬の間。
「……もっとも」
「本当に守れるのかと、考えることはありますが」
沈黙。
公太が重りを見つめる。
――フラッシュバック
幼い公太。
貧しい部屋。
母の声。
「公太、強くなりなさい」
「負けるな」
――学校
殴る。倒す。勝つ。
「最強の不良」
でも――
誰も近づかない。
一人。
(気づけば……)
(誰もいなかった)
――現在
ギュッ
重りを握る。
「……俺もさ」
「負けたことねぇんだよ」
低い声。
「でもよ……」
「何のための強さか、分かんねぇままだ」
一祟は、何も言わず聞く。
公太が視線を向ける。
「お前は?」
「何のために強ぇんだ?」
一祟、少し考える。
そして――
「人を守るためです」
迷いのない声。
「力は、救うためにある」
「そう教わりました」
沈黙。
公太、目を逸らす。
「……分かんねぇな」
「俺の世界に、そんなもんねぇ」
一祟、微笑む。
「きっと見つかります」
「あなたの答えも」
「……チッ」
鼻をこする。
「説教くせぇな」
クスッ
二人、掃除を続ける。
――森。
静寂。
ヒュン……
木刀が風を切る。
唯我。
一人。
迷いを断ち切るように振るう。
そこへ――
「また一人で?」
女性の声。
ピタッ
止まる動き。
振り返る。
「……また来たのか」
末永瞳。
幼馴染。
「心配なのよ」
「無茶ばかりするから」
「放っておけ」
冷たい声。
瞳、少しだけ悲しげに笑う。
「無理よ」
「私は、あなたを知ってる」
空気が変わる。
「……何が言いたい」
一呼吸。
「あなたの過去、知ってる」
沈黙。
「苦しんでることも」
唯我、目を逸らす。
「……余計なお世話だ」
「それでも」
「そばにいたいの」
沈黙。
再び木刀を構える。
だが――
手が、わずかに震える。
「……瞳」
ぽつり。
「覚えてるのか」
「……あの時のこと」
瞳、静かに頷く。
唯我、座り込む。
そして――
語り始める。
――過去
平和な村。
父の剣。
「剣は心を映す」
笑う日々。
だが――
サイレン。
爆音。
炎。
戦争。
幼い唯我。
震える。
「逃げろ!!」
父の声。
迫る刃。
――その瞬間
血。
倒れる父。
「生きろ……唯我……」
動けない。
何もできない。
ただ、見ていた。
――数日後
焼けた村。
生き残り。
瞳の姿。
だが――
美鈴はいない。
「……守れなかった」
現在。
唯我の目が沈む。
「俺は……何もできなかった」
「父も、あいつも……」
瞳、隣に座る。
「でも、あなたは生きた」
「それだけで意味がある」
唯我、顔を背ける。
「……俺には過去しかない」
そっと手に触れる瞳。
温もり。
「それでも進んでる」
「剣を捨てなかった」
「それが答えでしょ?」
目が揺れる。
「私は――」
「そんなあなたを誇りに思う」
沈黙。
唯我、立ち上がる。
木刀を握る。
「……あの日の俺を超える」
「それが誓いだ」
再び振るう。
だが――
「忘れるわけがない……」
感情が滲む。
「父を……守れなかった」
「美鈴も……」
拳が震える。
瞳、そっと言う。
「今のあなたなら守れる」
「自分も、誰かも」
沈黙。
唯我は何も言わない。
だが――
その目に、
微かな光が宿る。
影たちは、それぞれの過去を背負う。
そして――
それでも前へ進む。
#性悪聖女