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数時間前、彼氏の家を追い出された。
「はーあ…」
ヒモに徹するためにバイトを辞めたら、「金にもならない女は要らない」と、あっさりフラれた。私にとっては大した事じゃなかったんだけど。
「アプリ繋がりだと、浅い関係で終わりがちなのかなー」
そんな事を軽く呟いて、公園のベンチに腰掛けた。
「ここで寝る、か…」
せめて昼に追い出して欲しかった。そんな事を考えながら、ベンチの上で横になり、寝た。
「おい」
その言葉と同時に肩を揺らされる。誰だろう。
「家出か?」
気遣いを感じない言葉に冷たい声色。警察だろうか。そんなことを考えながら目を開ける。
まだ夜で、目の前にはスーツを着ている男。警察では無さそう。スーツは…多分高価な物だと思う。だけど、無理して着ている感じは無く、エリートらしい佇まいをしている。
こういうタイプが話しかけてくるのは初めてかもしれない。
「泊めてくれるの?」
単刀直入にそう聞いてみる。すると、その男は眉をひそめて、私の肩に乗せていた手を離す。
「…家出なら泊めない。警察にでも行け」
男は淡々とそう言い放つ。別に私を哀れんでいる訳でもないらしい。
私は寝転んでいた体を起こし、ベンチに座り直す。
「ううん。家出じゃ無い。ただ彼氏の家から追い出されただけ。」
正直に話す。泊めるつもりが無いなら、これでいいだろう。
「一晩だけ来るか?」
予想外の返答だった。よくわからない男だ。…もしかして、怪しい人だろうか。
「急だね。」
少し探ってみる。まぁ、ここで連れ去られたら終わりだけど。
「ただの気まぐれだ。来るかはお前が決めろ。」
なるほど。押しもそんなに強くないし、無理矢理連れていく素振りもないようだ。
行くあても無い私は、とりあえず着いて行くことにした。
…そして今、その男、修成くんの帰りを待っていた。
「おかえり〜っ」
明るくそう言って、修成くんを出迎える。
「ただいま」
抑揚のない声。修成くんは、いつもこんな感じだ。
「なんか嬉しそうだな」
「ふふーん、分かる?今日はカレーにしたからさ。私、カレー好きなんだよね。」
意外と勘が鋭い修成くんに対し、私は軽くそう返す。