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レストランを出たあと、私たちは一旦外に出た。
「ねぇ、恵。せっかくだから涼さんと記念写真撮りなよ。初デートでランドってなかなかないよ? このゴージャスなホテルに泊まれた記念に、思いっきり楽しまないと」
「う……、うん……」
恵はまだモジモジしていたけれど、ノリノリになった涼さんが例のガゼボに向かうと、私と尊さんが二人を撮影する。
いわずもがな、尊さんが涼さんに、私が恵にデータを渡す算段だ。
「わ……っ、わぁっ」
恵は涼さんに肩を抱かれ、ガッチガチになっている。それもまた、いとかわゆし。
「はい、三、二、一」
私は明るく声を掛け、今日結ばれたばかりの二人を撮る。
ライトアップしたお城みたいなホテルの前、恵と涼さんはとても幸せそうだ。
(良かったね、恵)
いつも私の相談に乗ってばかりだった彼女が、やっと自分の幸せを求めてくれて本当に良かった。
嫌な事もあっただろうけど、これからは「私なんて」と一歩引いた所に身を置かないで、堂々と一人の女性として幸せを求めてほしい。
涼さんはきっと、恵が求めるささやかな事ぐらい簡単に叶えてくれる人だから。
「二人とも、目線こっち」
次は尊さんが言い、微笑みながら二人を写真に収める。
きっと尊さんも、ずっとフリーだった涼さんがやっと重い腰を上げた事に安心してるのかな。
そう思いながら、私は写真撮影が終わったあとの事を考えていた。
これが終わったら部屋に戻って寝るだけだけど、いきなり二人を同室にしたら荒療治すぎるだろうか。
(部屋に戻ったら恵に相談してみよう)
私は「うん」と頷き、涼さんに「ファンサお願いしまーす!」と手を振る。
すると涼さんは一旦屈んだかと思うと、恵を軽々とお姫様抱っこした。
「ぎゃああ……!」
「ナイス涼さーん!」
私は予想外のファンサに大喜びし、パシャパシャパシャッと二人の姿を連写する。
「キース! キース!」
調子に乗ってはやし立てると、恵が真っ赤になって怒った。
「朱里、明日絶叫マシーンで隣に乗ってあげないよ!?」
「いいよ! 尊さんに隣に乗ってもらうから!」
生き生きとして言い返すと、彼女は墓穴を掘ったと自覚したのか「ああああ……」と低い声で呻いた。
「……で、キスしないのか?」
スマホを構えた尊さんが言い、涼さんがニコニコして尋ねる。
「いい? 恵ちゃん」
「~~~~~っ、こっ、こういう所で人に見られながら初めては嫌です!」
確かに、それは一理ある。
「じゃあ、ほっぺで」
めげない涼さんは姫抱っこをしたままチュッと恵の頬にキスをし、彼女はピキーンと固まる。
「シャッターチャンス!」
その瞬間、私はまたパシャシャシャシャシャ! と連写した。
撮影タイムが終わったあと、涼さんは固まったままの恵を地面に下ろし、私たちに笑いかけてくる。
「二人の写真も撮るよ」
彼はポケットからスマホを出すと、私たちにガゼボを譲る。
私はとりあえず中に入ったものの、いざ被写体になると照れてしまう。
「……えへへ」
尊さんの顔を見て照れ笑いすると、彼は「思い出を作るんだろ?」と言って涼さんのように私を姫抱っこした。
「わ……っ」
びっくりしてとっさに彼の首に抱きついた時、反撃と言わんばかりに恵が連写してきた。
私は思わず声を上げて笑い、照れながらも尊さんと見つめ合ったあと、彼の頬を両手で包んでそっとキスをした。