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#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
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チャンスは、すぐには答えなかった。
答えられなかった、の方が正しい。
目の前にいるエリオット。
距離は近いまま。
さっきまで自分がやっていたことを、そっくりそのまま返されている。
しかも――
無自覚に。
「どう?」
もう一度、エリオットが小さく聞く。
その声は軽いのに、逃げ道を塞ぐみたいに近い。
チャンスはゆっくり息を吐いた。
「……分かってねぇだろ」
低く言う。
エリオットは首を傾げる。
「何が?」
その顔。
その無防備さ。
チャンスの喉がまた小さく鳴る。
「それがどう見えてるか」
一瞬だけ間を置く。
「……分かっててやってるなら、タチ悪い」
エリオットは少しだけ目を細めた。
考えるみたいに。
でもすぐに、あっさり言う。
「分かってないよ」
嘘のない声。
だから余計に厄介だった。
チャンスが短く息を吸う。
「……そうかよ」
その瞬間。
ぐっと距離を詰めたのはチャンスの方だった。
さっきまで押されていたはずなのに。
一気に形勢を戻すみたいに。
エリオットの肩を掴んで引き寄せる。
「っ」
一瞬、エリオットの呼吸が揺れる。
チャンスの目は、もう迷っていない。
「じゃあ教えてやる」
低く落とす声。
そのまま、すぐ近くで続ける。
「それ以上やると――どうなるか」
言い終わる前に。
もう一度、唇が重なる。
さっきより強くはない。
でも、はっきりとした意志を持ったキス。
エリオットの体がわずかに揺れる。
チャンスはすぐには深くしない。
触れる。
離れる。
また触れる。
わざと、焦らすみたいに。
エリオットの呼吸が少しずつ乱れていく。
「……ほら」
唇が触れる距離で、囁く。
「分かるか」
エリオットは答えない。
答えられない。
ただ、視線が揺れている。
さっきまでの余裕が、少しずつ崩れていく。
チャンスはそれを見逃さない。
もう一度、軽く触れる。
今度は少しだけ長く。
エリオットの指が、無意識にチャンスの服を掴む。
その瞬間。
チャンスが小さく笑った。
「……そういう顔」
低く。
少しだけ意地悪に。
「さっきのお前と同じだ」
エリオットの心臓が跳ねる。
ドクン、と強く。
理解が追いついてくる。
自分が何をしていたのか。
どう見えていたのか。
それでも――
視線は逸らせない。
チャンスがゆっくり距離を詰める。
でも今度は、完全には奪わない。
ぎりぎりの距離で止まる。
「まだ続けるか?」
試すような声。
エリオットは、ほんの一瞬だけ迷って――
そのまま、小さく笑った。
「……うん」
息が少し乱れている。
でも目は逸らさない。
「続き、知りたい」