……と、尊さんは温かいおしぼりを広げ、私を見てニヤリと笑った。
洗面所のタオルウォーマーには常に温かいおしぼりがセットしてあり、尊さんが髭を剃る時や私がクレンジングする時に活躍している。
「さあ、脱げ」
「…………やだ」
ビクッとして拒絶すると、彼は真剣な顔をしてトントンとデスクを指で叩き、「チョッチョッチョッ……」と口を鳴らして私をおびき寄せようとする。
「猫じゃないです」
「気長に手懐けていくしかねぇな。……とりあえず、綺麗にさせてくれ」
「わっ」
尊さんは椅子に座っていた私を抱き上げると、ベッドに寝かせパジャマを脱がせてくる。
「ま……っ、待って……。んー」
あわあわしている間に上半身を脱がされてしまい、程よく冷めたおしぼりで肩を拭かれた瞬間、あったかいのが気持ちよくて声を上げてしまった。
「ほら、気持ちいいだろ? 大人しく拭かれてくれ」
調子づいた尊さんはおしぼりで私の体を丹念に拭き、腋も乳房の下も丁寧に拭っていく。
「……はずかしぬ……。……もうお嫁にいけない」
「俺が喜んで嫁にもらうから、このまま拭かれとけ」
そのあと尊さんはパジャマのズボンを容赦なく脱がし、脚からつま先、足の裏に指の間も拭き、パンツをめくって蒸れている腰周りやお尻まで拭いてきた。
「うううー……」
終わったあとは新品のパジャマを着せられ、ポンと羽布団を掛けられる。
「そんな顔して睨むなよ。『我、屈辱なり』って顔してる猫みたいだな、ホントに」
そのあと彼はコットンにクレンジングミルクを含ませ、丁寧に顔を拭ってから、オールインワンジェルとアイクリームを塗ってくれた。
「これだけ塗ればいいっていうの、時短したい時に便利だな」
私が肌に気を遣っているのを理解してか、尊さんはとても優しい手つきで塗ってくれた。
なんなら私が自分でやるより丁寧で、エステみたいだ。
「……ありがとうございます」
「朱里のもちもちほっぺを守るのは、俺の義務だから」
笑ったあと、彼は洗濯物を持って部屋を去っていった。
尊さんにインフルをうつさないかずっと心配していたけれど、数日経っても彼はピンピンしたままだった。
「予防接種したからかな?」と言っていたけれど、六十パーセントの有効率らしいので、「運勝ち」らしい。
寝込んでいる間、恵から【どうせ引っ越しするんだし、荷物纏めておこうか?】と連絡があった。
尊さんに相談したら「いい機会なんじゃないか?」と言われ、母にも手伝ってもらって、引っ越しの準備を進める事にした。
一週間経つ頃には私も参加して片付け、尊さんが引っ越し業者に連絡を入れてくれ、翌週には私物はすべて尊さんの家に運ばれた。
ローテーブルやシングルベッドは長いお付き合いだったけど、リサイクルショップに引き取ってもらう事にする。
その他の物は粗大ゴミでバイバイだ。
不動産屋にも連絡しておいたので、先に退去してあとは契約が切れるのを待つのみとなり、幸いにもゴチャゴチャ言われる事はなく、引っ越しはすんなりと完了した。
仕事復帰したあとに引っ越し完了、いつものように過ごしつつ、次の週末は尊さんの家で引っ越しパーティーをする事になった。
「本当に素敵なお宅ねぇ~」
母は両手を頬に当てて広々としたリビングダイニングを見回し、継父も亮平も美奈歩も、皆呆気にとられた顔をしている。
恵も参加しているけれど、彼女は家族とすでに面識がある。
町田さんは前日から手の込んだ料理を沢山作ってくれて、テーブルにはご馳走が沢山並んでいた。
出資者が食材の値段に糸目を付けなかったので、町田さんは『腕が鳴りますね』と高級食材を使って自由に料理をしていた。
先日話した時に教えてもらったけど、彼女はもともと星付きレストランに勤めていた凄腕シェフらしい。
キャリアを積む道も選べたけれど、結婚して子供たちと過ごす時間を大切にしようと思ったあとは、自分をブランディングして今に至るらしい。
彼女は仕事の速さや料理の腕前で、あちこちから引っ張りだこのようだ。
家政婦といってもメインは料理らしく、簡単な掃除くらいなら請け負うけれど、専門的な掃除は別のプロを頼むようお願いしているそうだ。
コメント
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お嫁....🤭w ミコティがモッフモフ&最高の毛並みに仕上げて🐈️✨、貰っていくから大丈夫だって~😺❤️( *´艸`)
お嫁ねー(笑)ミコ以外に行けないねー((´∀`*))ヶラヶラ
恥ずかしぬ…もうお嫁にいけない。 カワイイよ〜(≧∇≦) ミコティも素晴らしすぎて✨もうなんなのよーっꉂꉂ(๑˃▿˂๑)ァ,、'` パーリー恵ちゃんも参加なんだね!ワクワク🤗