テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
3
1,245
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
脱衣所の洗濯物の山から、自分のものと間違えて適当に引っ掴んで着てしまったらしい。
身長180センチを優に超える直哉のサイズで作られた服だ。
162センチの俺が着ると、裾は太ももの真ん中あたりまでダボダボに伸びており
首元が大きく開きすぎて右の肩口がずるりとだらしなく露出してしまっていた。
いわゆる、完全なる萌え袖、彼シャツ状態
その事実に気づいた瞬間、直哉は片手で自分の顔を覆い、深く天を仰いだ。
「無理。心臓止まるかと思った」
「いや、何がだよ。ただの着間違いだろ」
「そうじゃなくて…無防備すぎて、俺の理性が死ぬ」
「はぁ!? 意味わかんねぇよ、ただの服だろ!」
男に可愛いとか言うな!と怒鳴り
恥ずかしさのあまり自分の部屋へ逃げ込もうとした、まさにその瞬間だった。
ぐいっ、と、背後から長い腕が伸びて手首を強く引かれた。
「うわっ!?」
抵抗する間もなく視界がぐらりと反転し、俺の身体は弾力のあるソファの上へと押し倒されていた。
背中に柔らかいクッションの感触。
そして、目の前には、信じられないほどの至近距離に直哉の端正な顔があった。
直哉が両手を俺の頭の横につき
上から完全に覆いかぶさるような体勢────
いわゆる、床ドンの形になっている。
あまりの体格差に、完全に逃げ場を塞がれた。
心臓がドクンドクンと肋骨を突き破りそうなほどの爆音を立てて暴れだす。
「なお、や……っ……!」
「兄さんさぁ、そんな格好で俺の前にのこのこ現れるなんて、どれだけ俺を信用してんの。かわい」
「知らねぇよ、ただの間違いだって言ってるだろ! どけ!」
至近距離で見下ろしてくる直哉の瞳は、いつもの大型犬のそれではなく
完全に熱を孕んだ男の目だった。
耳元で、あいつの熱い吐息が触れる。
距離が、近すぎる。
唇と唇が、あと数センチで触れ合ってしまいそうな、濃密で息が詰まるような沈黙。
その時だった。
ガチャリ、と、静かな夜の家中に、一階の玄関の鍵が開く音が鳴り響いた。
「っ!?」
その瞬間、俺と直哉の身体が、氷水を浴びせられたように同時にカチコチに固まった。
『ただいまー。ごめんね二人とも、遅くなっちゃって〜』
ドア越しに響いてきたのは、聞き慣れた母さんの明るい声だった。
心臓が口から飛び出るかと思った。
いま、この状況を見られたら、言い訳のしようがなさすぎる。
「やばっ……!どけ、早く離れろ!」
俺はパニックになりながら、直哉の胸を全力で突き飛ばした。
直哉も流石に焦ったようで、驚異的な運動神経ですっと身体を起こし
ソファの反対側の端へと一瞬で距離を取る。