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とにかく、圭太を連れて外に出ることにした。
ゆっくり歩いて公園に向かう。
公園に行けば、圭太は一人で遊ぶだろうし、その間、京香とさっきの続きのLINEができる。
オカズ写真ももっと送ってもらえるんじゃないかと、期待もある。
公園に着いたら、圭太はブランコに乗りたいと言った。
ブランコには順番待ちの列ができていて、なかなか順番がまわってきそうにない。
「圭太、ゾウさんの滑り台はどうだ?」
「え?」
「滑り台は上れないか?まだ」
「できるもん、おとーたん見てて」
滑り台は、次々と上っては下りてくるので順番待ちもなく、スムーズだった。
「見てて」
手すりを持って、ヨイショヨイショと上っては、スルスルと滑り降りる。
「すごいな、圭太。いつのまにそんなことまでできるようになったんだ?」
へへん、と得意げな圭太。
少し離れたベンチで、圭太を見ながらスマホを開く。
〈さっきは、とても素敵なものをありがとう〉
《どういたしまして。欲しかったらもっと送りますよ。でも、また会ってくれたら生でお見せしますけど?》
〈いいのかな?俺みたいなおじさんで〉
《岡崎さんだからいいんですよ》
〈だってほら、うちの嫁さん、知ってるでしょ?〉
《もちろん。いい奥様ですよね?ご主人のことを信頼してるし。それは岡崎さんがしっかりと奥様を愛してるからですよね?》
_____愛してるかぁ……
〈結婚するとね、なかなか男女の関係ではいられなくなるからね。どうしても家族になってしまう〉
俺が求めても杏奈は相手をしてくれないとは、言えなかった。
そのことは、俺のプライドが邪魔をした。
《だからなんですか?奥様も別の誰かと会ってたりするのは》
〈残念だけど、そうかもしれないね〉
京香が言っているのは、この前送ってきた杏奈が誰か知らない男と飯を食っている写真のことだろう。
《でもご夫婦としては円満なんですよね?そこに私なんかが横入りなんて、できないですよね?この前のことも、きっとお酒のせいだって言うんでしょ?》
〈そんなことはない。酒のせいになんかしない〉
家庭は壊したくないが、セックスはしたいという俺の本心を、どうすれば伝えられるだろうかと思いを巡らす。
《ホントですか?あの時だけでも私のことを愛してくれましたか?》
_____愛して……?
「おとーたーん」
圭太が俺を呼ぶ声がした。
一瞬そちらを見たら、滑り台の頂上で俺に向かって手を振る圭太がいた。
「おうっ!」
返事をして手を振ってまたスマホに戻り、京香との甘いやり取りを続けた。
きゃあっ!と声がしたのは、そのすぐ後だった。
滑り台の周りに人だかりができていて、誰かが子どもをそっと抱き上げている。
「救急車!早く誰か!」
「わかった、呼ぶね」
「動かさない方が……」
「うん、わかってる」
誰かの子どもが怪我でもしたらしい。
_____救急車を呼ぶということは、重傷なのか?
《じゃあ、また近いうちに二人で会いましょうね。楽しみにしておきます》
〈わかったよ、そのうち時間を作るから〉
《うれしい!これ、プレゼント》
そんなコメントと共に、AV女優がするような艶めかしい写真が送られてきた。
_____やっぱり、いいなぁ
にやけているところに救急車が到着し、人々のざわめきの中に、聞き覚えのある声がした。
「圭太、どうしたの?」
「おかーたん」
「あ、この子のお母さんですか?」
「はい、あの、うちの子がなにか?」
_____まさか!!
背中に冷たいものが流れた。
怪我をしたのは圭太?俺が目を離した隙に?
俺は慌てて人だかりをかき分けて、怪我をした子どものもとへ走り寄ろうとした。
担架で救急車に乗せられる圭太と、そのそばに青ざめた杏奈の姿があった。
「圭太!」
声をかけたけれど、そのまま救急車は走り出した。
ざわざわと、周囲の人が遠巻きに俺を見ているのがわかる。
身動きが取れず、その場に立ち尽くしていると、圭太と同じくらいの子どもを連れた女の人が話しかけてきた。
「あの、圭太君のお父さんですか?」
「あ、はい」
「どうして圭太君から目を離したんですか?圭太くん、おとうさんのことずっと呼んでましたよ、聞こえてなかったんですか?」
「はぁ……」
「さしでがましいとは思いますが、お子さんを連れてくるなら、スマホはしまっておくべきだったと思います。打ちどころが悪かったりしたら、取り返しがつきませんよ」
「……はい、そうですね」
なんでこんな見ず知らずの人に言われなきゃならないんだ?と毒づきながらも、さすがに反論はできなかった。
「まぁまぁ、たいした怪我ではないようだったから、そのへんで……」
俺と同年代くらいの男性が間に入ってくれた。
父親同士、庇ってくれたのだろうか。
「とにかく、病院へ追いかけた方がいいですよ。保険証やお財布が必要になると思うので」
「そうですね、わかりました。色々とすみませんでした」
それだけ言うと走って家に戻り、保険証や財布を用意して、杏奈からの連絡を待った。
_____どうか、無事でありますように