検査の結果、頭には異常がなかったらしく、たんこぶと擦り傷で済んだようでホッとし、会計を済ませて外に出た。
「圭太、大丈夫か?」
「ん」
「大丈夫みたい、だけどなんで?どうして目を離したの?圭太を遊ばせているなら、目を離さないでよ。なんのためについて行ったの?」
「いや……そのほんのちょっと、一瞬目を離しただけだよ、な、圭太」
杏奈に強い口調で責められて、思わず圭太に助けを求める。
「おとーたん、ゲームだもんね」
「え?スマホしてたの?ゲーム?圭太を見ないで?」
_____しまった、ゲームしてるからって圭太に言ってたことを忘れてた!
「いや、ゲームじゃないよ、仕事のことで連絡とってたから、ちょっとだけだよ」
まさか京香とのエッチなやり取りなんかしてて圭太から目を離したとは、口が裂けても言えない。
「見せて!そのやり取り。ホントに仕事なの?仕事なら見せられるでしょ?今ここで見せて」
「えっ、それは、その……」
_____やばい!履歴を削除し忘れてた
思わずスマホを押さえる。
「早く出して!圭太を放っておかなきゃいけないくらいの大事な仕事の用事ってなに?」
「仕事の話なんだから、お前に見せてもわからないだろ?」
俺が悪いのはわかってるけど、杏奈のしつこい追及に、苛立ちが隠せなくなり、キツい言い方をしてしまった。
「いいから見せてよ、見せられないの?誰とやり取りしてたの?正直に言ったら?仕事なんかじゃない、女とだって」
「声がデカいぞ、みっともない」
広い駐車場とはいえ、周りにはチラホラ人影があった。
「おかーたん?」
「あ、ごめんね、圭太のことじゃないからね」
車に乗り込みエンジンをかけた。
「早く、ここでスマホを出して、私に見せてよ。仕事なら隠す必要ないでしょ?」
面倒だと思った。
これ以上追及されたくないと思った。
そこで俺はあの写真を杏奈に見せて、反撃することにした。
「しつこいな、じゃあ、これはどういうことなんだよ、説明しろよ。お前がこれを説明できたら俺も説明してやるよ」
京香が送ってきた、杏奈とどこかの誰かとの食事の写真だ。
さぁ、杏奈はどう答える?
「ほら、お前だって浮気してるじゃないか!」
「なに、その言い方。まるで自分もしてるけどお前もしてるじゃないかって聞こえるんだけど?」
「いや、してるだろ?」
俺は反撃に成功したと思い、少々鼻息が荒くなる。
が、しかし、その写真は杏奈と男の二人だけではなく、成美という杏奈の友達も含めた3人での食事だったという。
3人でランチをしている写真を、その成美という友達がSNSにあげていた。
_____どういうことだ?
京香は『奥さんの浮気証拠写真』だと言っていた気がする。
違ったのか?
何故京香はそんなことをしたのか?
もしかして俺を誘うためのハードルを下げるつもりだった?
「また誰かの罠だったりして。でも誰が?何か心当たりがあるんじゃないの?誰なの?そんな写真を撮って送りつける人って」
_____罠?罠なのか?
「誰なの?ねぇっ!」
俺が答えずにいると、どんどんヒートアップしていく杏奈。
車内に流れる険悪な空気。
「おかーたん、おなかすいた」
「あっ、ごめん、帰ろうね。今日はミートボールだからね」
圭太が割って入ってくれて、杏奈の気が削がれたようで、ホッとした。
「あとで話しましょう。訊きたいことがたくさんあるから」
何も答えることはなく、無言のままで駐車場から車を走らせて家に向かう。
_____ん?また?
また誰かの罠?そんなことを杏奈は言っていた。
またとは、どういうことだろう?
圭太のてまえ、夫婦間にはなにもなかったように振る舞いながら、そのことをずっと考えていた。
晩ご飯を食べ終え、杏奈は圭太を寝かせに寝室に行く。
「そうだ!」
そもそも、今日は、佐々木夫婦のことも話していたことを思い出した。
京香が舞花を嵌めたとかどうとか?
結論を聞く前に、外に出てしまって結果を聞いていなかった。
あれはやはり京香がやったということだったのか。
_____だとしたら、俺はとんでもない女と関係してしまったということじゃないか!
このままでは全部ダメになってしまう、京香の目的はわからないけれど、家庭も下手すると仕事も何があるかわからない。
俺は急いで京香とのやりとりを削除し、京香をブロックし、写真も連絡先も全て削除した。
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