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「今日は疲れたと思うから、シャワーを浴びて寝ましょう。先にシャワー浴びて来て?タオルは自由に使っていいからね」
何も事情とか聞かないんだ。
気を遣ってくれていることがわかる。
部屋まで入っておいて迷惑ですから……。なんて言えるわけがない。
「はい、お言葉に甘えて。すみません。椿さん、先に入りますか?」
「ううん。私、やることがあるから先に入っておいで?」
先程教えてもらったバスルームへ行き、シャワーを浴びる。
「イタッ……」
殴られたところが少し沁みた。
シャワーから出てくるとソファーに椿さんが座っていた。
「ありがとうございました。先にすみません」
「ちょっとこっちに来て座って?」
手招きをされ、言われた通りにソファーへ座る。隣に座ると、ジーと顔を覗かれた。あっ、私、今スッピンだ。いつも以上に恥ずかしい。
「顔、殴られたの?」
「へっ?」
赤いのわかったのかな。
「はい……」
「女の子の顔を殴るなんて最低。ホントに許せない。腫れているわね。少し冷やそうか?」
ダメダメ、そんなに甘えちゃ。
「あのっ、大丈夫です!」
立ち上がった椿さんがクルリと後ろを向き
「ダメよ?」
一言だけそう言って、キッチンへ。
しばらくすると戻って来て、小さなアイス枕を包んだタオルを優しく私の顔に当ててくれた。
「ありがとうございます」
冷たくて気持ち良い。
椿さんはフッと笑って
「私もシャワー浴びて来ちゃうわね。しばらく冷やして、眠くなったら寝ていいからね。さっき一応、ベッドのシーツとか交換しておいたから。あっちが寝室。今日はそこで寝て?」
えっ!?
私がシャワーを浴びている間にそんなことをしてくれてたんだ。
でも私がベッドを使っちゃうと、椿さんはどこで寝るの?
「あのっ、椿さんはどこで寝るんですか?」
「私は、ソファーで寝るから大丈夫よ。毛布もあるし……」
そんな、だったら私がソファーで寝なきゃ。
「ダメです!迷惑かけてるのは私なんです。椿さんは明日も仕事だし。ちゃんとベッドで寝てください!私は、ソファーで寝かせてもらいますから」
クスっと彼女(彼)は笑って
「やっぱり桜ちゃんならそう言うと思った。でも我儘はダメよ?」
「でもっ!!」
シャワーに行こうとしていた彼女(彼)を止め、抵抗をした。
「うーん。そうね……。あっ、そうだ!だったら……」
椿さんが少しかがんだかと思ったら
「一緒に寝る?」
いつもとは違う男性らしい声音で耳元で囁かれた。
思わずゾクっとしてしまう。
「へっ……?」
硬直してしまった私に
「そんなの嫌でしょ?だから気にしないでね」
頭を撫でられる。
あ、いつもの声だ。
私は……。
「私、椿さんと一緒に寝たいです!」
「へっ……?」
今度は彼女(彼)が固まっている。
「ダメですか……?」
私がそう問いかけると、ふぅと呼吸をして
「わかったわ。じゃあ、一緒に寝ましょう。でもね、覚悟してちょうだいね?」
ニコッと笑ってシャワーへ行ってしまった。
私、なんか変なこと言ったかな。女同士?だからいいよね。身体は男性だけど、心は女性なんだよね。
私、そういうの気にしないし。
あの憧れの椿さんと一緒に寝れるなんて……。嬉しい。
ドキドキしながら彼女がリビングへ戻ってくるのを待っていた。
何分待ったんだろう。
なかなか戻ってきてくれない。
そうか、お化粧とか取るの大変なんだ……。
スッピンも綺麗なんだろうな……。
精神的に安心したためかそんなことを考えていたら、眠くなってしまった。
ダメだ、起きていないと。
しかし気づいた時には、ソファーで眠ってしまっていた。
「あーあ。ソファーで寝てる。風邪引くぞ」
んっ?誰だろう?
男の人の声がする。
肩に触れられた気がした。
「桜?」
私のことを呼んでくれている。
どうしよう、目が開かない。夢の中だから?
「ベッドへ移動するよ」
その瞬間、身体がふわっと浮いた気がした。
私のこと、持ち上げてくれた?
お姫様だっこ、初めてされたかも。
あぁ、夢だから私の体重も軽くなっているんだろうな……。
ベッドの上に横になった感触がした。
いつもの倍、ふわふわしてて温かい。
「おやすみ、桜。ゆっくり休んで」
私の名前を呼んでくれた男の人は、優しくそう言ってくれたんだ。