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まだ10代後半の頃 私はとある手術を受けまして、母の勧めで行ったその病院は 外装もなかなか古くてちょっと院内も仄暗い、そんな印象の病院でした。
手術室に入ると付き添っていた年配の無口な看護師さんが点滴を通じて全身麻酔をかけてくれたのですが、その看護師さんの隣に入院着の男の子が立っていました。もちろん霊体です。この頃には普通に幽霊が見えていたので男の子がいる事には驚きなど全くなくて、良い霊と悪い霊の区別もちゃんとついていました。この男の子の霊は年配の看護師さんに寄り添う良い霊の類いだと思います。
全身麻酔をかけられ、段々意識がなくなりーーーーーーー……
おそらく他の患者さんのであろう絶叫の声で、私は目が覚めました。凄まじい断末魔のような女の子の叫び声でした。何が起きているのか全くわからず、飛び起きようとしたのですが全身麻酔の効果がまだ残っていて上手く起き上がれず、しかも唐突に猛烈な吐き気に襲われて身動き出来ずにどうしようもなく堪えていると、枕元に先程見かけた男の子が無表情で私を見下ろし立っていました。やばい吐きそう!!と念じた途端男の子は走り出し、ドアの向こうへと吸い込まれるように消えて行きました。ほんの数秒してドアが開き、ガーグルベース(嘔吐用の容器)を手にした年配の看護師さんが走ってきました。あまりのタイミングの良さと、看護師さんの隣についてきて少しほっとした顔の男の子を見れば、もしかしたら看護師さんもその男の子が見えていて、彼は看護師さんに私が起きた事を伝えに行ったのではないかと今でも思っています。ひとまず落ち着いた私は看護師さんに物は試しで「男の子との連携凄いですね」と言ってみると、看護師さんは私をしばらくじっと見て、やがて無言で視線を逸らしました。それに対しての返答はありませんでした。触れてはいけない話題だったのかもしれません。「ところでさっきの手術室での絶叫は患者さんですよね……?麻酔効いてなかったんですか……?」と話題を変えて恐る恐る聞けば、また看護師さんは私をじっと見て、ようやく口を開きました。「聞こえたからってあんまり深入りするんじゃないよ。今の時間手術した患者さんは雪さんだけ。……吐き気は治まった?もう40分は安静にしてなさい。あとでまた来るから」と途中で話を逸らして看護師さんは病室から出て行きました。男の子は数日の入院中ずっと特に何か話す訳でもなく、ただずっと無言で私のいる病室にいました。
絶対この人も霊感持ちだと確信しました。しかし霊感持ちと言っても人によってはあまり良く思わない人もいて、きっとこの看護師さんはそういうタイプの人だったのでしょう。
数日入院して いよいよ退院の手続きをしていると、例の看護師が受付に顔を出しました。この人の癖なのか しばらくじっと私を見た後「もう来るんじゃないよ」とだけ言って、仕事に戻って行きました。他の受付のお姉さんが苦笑いで「ごめんね、あの人ちょっと無愛想で……」とフォローしていましたが、私には「もう来るんじゃないよ」の肉声の他に「次は喰われるよ」と直接念のような言葉が聞こえました。受付の人には聞こえなかったのでしょう。
その言葉の意味が、私の事なのか 私に憑いている数名の守護霊的な霊体達を指しているのかはわかりません。ただ、病院の地下に、何か凄く大きい嫌な気配があったのはずっと気付いていたので、もしかしたら看護師さんと男の子が『それ』を弾いて守ってくれていたのかもしれません。改めて考えてみると、霊感に関しての話題をすぐ切り上げたのも、あのまま続けていると地下にいる『それ』に勘づかれて近寄って来てしまうからなのかもしれませんね。
それ以来その病院に行くことはなく、看護師さんを日常生活で見かける事も一度もありません。最後に一言だけ「元気でね」と発して手を振っていた男の子の霊達が凄く印象的でした。めちゃくちゃ良い子だったと私は思います。そして当時の私の守護霊達よりずっと強い子でした。だからずっと私の傍にいてくれたのでしょう。看護師さんの計らいか彼自身の配慮かは知りませんが、お二人共ありがとうございます。
怖い話ではなくなってしまいましたが、生きてる人と死霊の組み合わせで意思疎通してタッグを組めるのは珍しい事だと思います。私的に凄くカッコイイなと思った、そんな体験談でした。