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#そのじん
ヌシ
457
陽煌さんが眠ってから、八ヶ月が経った。陽煌さんには、眠っていて栄養も取れないため、大きな病院で入院している。
仕事終わりに、いつものように陽煌さんが眠る病室へ向かう。
ぐっすり眠る陽煌さんのそばに、俺は座る。
「陽煌さん。今日仕事でちょっとミスしちゃったんです。分かんないのに自分で何とかしようとしちゃって、先輩に怒られちゃいました」
陽煌さんにそう語りかけるが、陽煌さんから返事は返って来ない。
「そうだ。そう言えば今朝、陽雅さんが寝坊しちゃったんです。陽雅さんも仕事で覚えることが多くて疲れてたみたいで。恭也くんと快くんは大学が昼からだったからぐっすり寝てて。零斗さんはいつも起こさないと起きないし、これはやばいなって、陽雅さんを急いで起こしましたよ」
そう言った後、ぐっすり眠る陽煌さんを見つめる。
「陽煌さん。早く起きてくださいよ。みんなで暮らすの、結構楽しいですよ」
そう言ったが、陽煌さんは変わらず眠り続けている。
「あっ。陽煌さん。もしかして、目覚めのキスとか必要ですか? だったらしてあげますよ。ほら」
俺は陽煌さんの顔に自分の顔を近付け、そのまま口元にキスをした。
顔を上げると、陽煌さんをじっと見つめる。
陽煌さんは変わらずぐっすり眠っている。
「…まぁ、そうですよね」
俺は陽煌さんの頭をそっと撫でる。
「また来ますね」
そう言って立ち上がると、か細い声が聞こえる。
「…泰輝?」
急いで陽煌さんを見ると、眠そうな目で俺を見つめていた。
「陽煌さん! 起きたんですね」
「ん…おはよう…」
「おはようございます」
俺はそう言いながら、屈む。
そんな俺を見て、陽煌さんはニコッと笑う。
「…泰輝、いつも仕事頑張ってるね。偉い偉い」
陽煌さんはそう言って、俺の頭をそっと撫でた。
「陽煌さん。もしかして、聞いてました?」
「うん。いつも夢の中でね、泰輝が教えてくれるの。仕事の話とか、陽雅たちの話とか」
「そうでしたか。ちゃんと陽煌さんに聞こえてて、俺は嬉しいです」
「泰輝。ずっと俺のそばに居てくれてありがとう」
そう言う陽煌さんを見て、笑みがこぼれる。
「当たり前じゃないですか。これからもずっと一緒ですよ」
「ありがとう」
陽煌さんはそう言って、嬉しそうに笑う。
「あっ。陽雅さん達に連絡しなきゃ。あと、お医者さん呼んできますね」
「ねぇ泰輝。陽雅たちには言わないで、突然行って驚かせちゃおうよ」
「いいですよ。でも、陽煌さんがそんな事言うなんて、なんか意外です」
「そう?」
「はい。じゃあ、お医者さん呼んできます」
そして陽煌さんは診察を受け、無事退院した。
家に入ると、リビングの扉の向こうから、賑やかな声が聞こえる。俺はリビングの扉を開けた。
「ただいま帰りました」
俺がそう言った後、後ろで陽煌さんが言う。
「ただいま」
その一言で、辺りがシーンと静まる。
「兄ちゃん」
陽雅さんはそう呟いて、陽煌さんに近づく。
そして、陽煌さんをギュッと抱きしめた。
「おかえり。兄ちゃん」
「ただいま。陽雅」
陽雅さんはそう言った後、顔を上げる。
「陽雅。今、幸せ?」
「うん。幸せだよ」
陽雅さんの言葉を聞いて、陽煌さんは嬉しそうに笑う。
「よかった。これからもずっと幸せでいてね」
「うん。お兄ちゃんもね」
陽雅さんがそう言うと、快くんがカメラを持って言う。
「じゃあ、陽煌さんの退院祝いってことで、みんなで写真撮りましょう!」
「いいね。撮ろっか。ほら、みんな集まって」
陽雅さんのその言葉で、みんな集まる。
快くんは三脚を持ってきて、カメラをセットした。
「はい。じゃあ撮りますよ〜。5…4…」
快くんはそう言って、こっちに走ってくる。
「…2…1…はいチーズ!」
カメラのシャッター音がカシャッと鳴る。
快くんはカメラの所に戻り、三脚から外す。
そしてカメラの画面を確認し、ニコッと笑った。
「よく撮れてます」
そう言って俺たちに画面を見せる。
「おぉ〜。さすが快。綺麗に撮れてるね」
恭也くんがそう言うと、快くんは照れた様子で言う。
「零斗さんが買ってくれたカメラの性能がいいだけだよ」
「普通に快が撮るの上手いんだろ」
「いや、俺ただカメラセットしただけなんで」
「でもほら、設定とかあんだろ?」
「えっ。零斗さんよく知ってますね」
「まぁ、快の好きな事だから気になって調べただけだよ」
「さすが零斗さん。大好きです」
快くんはそう言って零斗さんに抱きつく。
「なんか照れんな」
二人の様子を見て、陽煌さんがフフッと笑う。
「泰輝が言ってたけど、本当にラブラブなんだね」
「なんだよ泰輝。俺たちの話したのかよ」
「俺が陽煌さんに話してた事は、全部夢の中で聞いてたみたいです」
「そうなの? 兄ちゃん」
「うん。たくさん話聞いたよ。泰輝、これからもいっぱい話聞かせてね」
「もちろんです。あっ、嫉妬したらすぐ言ってくださいね。やめるんで」
「うん。ありがとう」
陽煌さんはそう言って、嬉しそうに笑った。
コメント
1件
読了したわ! 陽煌さんが目覚めたところ、本当にじーんと来たよ…。泰輝くんが毎日話しかけ続けた想いが届いたんだなって。最後にみんなで写真撮るシーン、めっちゃ温かくて泣きそうになったわ。快くんと零斗さんのラブラブっぷりも可愛いし。灯依さん、最高のハッピーエンドをありがとう!