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いつも通る、町の道。

その町の人々は皆幸せそうに過ごしている。

おしゃれな店が立ち並んで、輝いているその道には、

少し古い写真館がある。

飾られたウエディングドレスがあまりにも目をひくそこは。



「早くしなさいよイギリス!!」

「う、うるさいですね…私はあなたの荷物も持ってるんですよ!?」


紙袋を下げた彼は、ため息をついて言う。


「全く、買い物なら1人でもできるでしょうに…」

「荷物持ちが必要じゃない。何言ってるのよ。」


当然のことを言うと彼は呆れたように再度ため息をつくのであった。


「次はあそこのお店行きましょ!」

「ま、まだ回るんですか!?もう十分買いましたよね!」

「あら、私を置いて帰るつもり?紳士の風上にも置けないわね!」

「…ああ、もう!わかりました!付き合ってあげますよ!!」

( ふふん、ほんっとうにちょろ…)

紳士という言葉で馬鹿にすれば、このイギリスという奴はすぐに言うことを聞いてくれる。

フランスはくすくすと笑って、イギリスの少し前を歩いた。

「あ!あそこのお店の服かわいーーー」

ふと、営業っ気のない店を見る。

カーテンが閉まっていて、開いているのか閉まっているのかも分からない。

だた、そのショーウィンドウに飾られたウエディングドレスが。

あまりにも、きれいで。

「…すてき。」

小さな宝石が太陽の光を受けて、色とりどりの光を放っている。

繊細なレースは柔らかく曲線を描いていて。

こんなドレスを着れたのなら。

ベールを捲ってくれる人がいたのなら。

指輪を、はめてくれる人が、いたのなら。

「…す、…らんす」

「…」

「………フランス?」

は っと気がついた時には、イギリスがきょとんとした顔で立ち止まっていた。

「何をそんなに見てるんですか。」

「い、いや、その。」


イギリスがそのドレスを見た瞬間、

目を見張ったのがわかった。


(うわ、最悪…ウエディングドレスに憧れてるなんて馬鹿にされるに決まってる…)


彼はそれを数秒見つめたあと。


店の扉を開いた 。


「ちょ、イギリス!?」

「すいません、このドレスって試着とか…できますか?」

「な、何言って、」

「着たかったのでは?」

「私が着たって似合わないでしょ!?」

「着てみなきゃ分からないじゃないですか。」

「っ、それは、そーだけど!!」


店主はショーウィンドウのドレスを少し眺めて、穏やかに頷く。


「…せっかくの機会なのに、着ないんですか?」

首を傾げるイギリスに、どうも調子が狂う。


(な、なによ…イギリスなのに…イギリスのくせに…!!)



きゅっと締められるコルセットは、

昔のドレスと比べると大分ゆるい。

ふんわりとしたレースは太陽の匂いがする。


(ドレス、久しぶりに着た。)


今まで着たどのドレスよりも、特別なドレス。

きれいで。やわらかくて。どきどきする。


「う、わ。」


(結構…様になってるんじゃないの?)


ベールも被せてもらって鏡で自分を見る。

非日常の特別なわくわくが心の底から湧き上がる。


「ふふ、…素敵かも。」

「ええ、本当に綺麗!」

ドレスを着せてくれたレディーが微笑む。

「では見せに行きましょう!」

「えっ?」

「あの紳士さんも楽しみにしていると思いますよ!」

「え゛っ!? 」

(あいつに見られたら人生の終わり!)

躊躇っているといつの間にか手を引っ張られて。

「あ、ちょっ…!!」

目を丸くしたイギリスがこちらを見ていた。



(さて、どんなものか。)


フランスがウエディングドレスを着たら。

きれいに違いない。これは間違いない。

どこをどうからかってやろう。

悔しげな顔でそっぽをむくフランスを想像したらついにやにやしてしまって。


「ふふ、そんなに楽しみかい。」

「え゛っ、い、いや、」


店主がふいに話しかけてくる。


「覚悟が必要だよ紳士さん。」

「覚悟、ですか?」

「ああ。」


(なんで覚悟…?)



と、試着室からよろめいて出てきたのは。




じんわり、じんわり。

自分の頬が熱くなっていくのが分かる。

きれい?そんな言葉では言い表せない。


息を忘れるほどに心を奪われてしまって。


(惚れ直すっていうのは、このことか。)


「……素敵です…フランス。」

「えっ」

「こんなにきれいなんですね…」


ぼうっとして。ため息が出て。からかうのも忘れてしまった。


「な、なーに?私に惚れちゃった?」

「ええ。」

「………………………は?」


ぶわっと顔を赤らめるフランスがかわいらしくて。


「ふふ、どうしたんです?」

「意味わかんないんだけどっ…!!な、なんで今日っ、からかってこないわけ…!!」

「馬鹿にした方がよかったです?」

「そういうことじゃないし!!」


くすっと笑うと、きれいなこの国は顔を赤くして俯く。




憎らしいあいつ。

あいつはベールをめくって。

私の左手をとる。

「……お似合いです。」



それだけ。

それだけの休日でも。


私はあの時の、イギリスの声色を忘れない。

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コメント

6

ユーザー

もう結婚しろよ!!!!(素晴らしい作品ありがとうございます

ユーザー
ユーザー

可愛いですよ(((o(*゚▽゚*)o)))

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