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第6話 「標的」
🚀 シーン1:ヴェール・バインドの影
夜の闇に溶け込むように、黒いヘリが静かに旋回していた。
ヘリの中では、黒の戦闘スーツに身を包んだヴェール・バインドの隊員たちが無言でモニターを見つめている。
そこには、然(ぜん)とナヴィスの姿が映し出されていた。
「ターゲットの行動を確認。現在、廃ビル屋上にて静止中」
通信機越しに報告する隊員に、静かな声が返る。
「ゼインの能力の使用状況は?」
「《オーバーライド》を二度発動。しかし、直後に負荷の兆候あり。フラクタルの連続使用に制約があると推測されます」
「……そうか」
通信の向こうからため息が聞こえた。
「では、そろそろ”接触”を試みるか」
ヘリの機体がわずかに傾き、ゆっくりと下降を始めた。
ヴェール・バインドが、動き出す。
🚀 シーン2:罠
「そろそろ、本格的に動くぞ、ゼイン」
ナヴィスの言葉に、然は無意識に拳を握りしめた。
「……やるなら、どこを狙う?」
「まずはアイツらがどんな手で来るのか見極める。ヴェール・バインドは基本、正面突破なんかしねぇ。連中のやり口は”確実に逃げ道を塞ぐ”ことだ」
ナヴィスは不敵に笑いながら、黒いジャケットのポケットから小型端末を取り出した。
「だからこっちも、動きを読んでやる」
端末の画面には、ビル周辺の監視カメラの映像が映し出されていた。
そして、そこには——
「……来たな」
然の視線が鋭くなった。
ヴェール・バインドの隊員たちが、廃ビルの出入り口をゆっくりと包囲し始めていた。
「動きが早いな……もう準備できてたのか」
「まぁ、オレたちの動きなんて、とうにバレてるってこった」
ナヴィスは軽く息を吐くと、然を見た。
「お前、どうする? 逃げるか、ぶっ飛ばすか」
然は一瞬考えた後、ゆっくりと立ち上がった。
「……やる」
ナヴィスが笑みを浮かべる。
「そうこなくちゃな」
🚀 シーン3:ヴェール・バインドとの初戦
「目標、移動を開始!」
ヴェール・バインドの隊員たちは即座に反応した。
そして、一人の隊員が前に出ると、手のひらに小型のデバイスをかざした。
「《アンチ・フラクタル領域》展開」
青白い光が瞬く間に広がり、ビル全体を包み込む。
然は一瞬、肌に感じる違和感に気づいた。
「……今のは?」
「アンチ・フラクタルだな。オレたちの力を封じる装置だ」
ナヴィスが舌打ちしながら答えた。
「くそっ……フラクタルが使えねぇのか?」
「いや、完全には封じられねぇ。だが、発動に制限がかかる」
ナヴィスは黒いジャケットの袖をまくり、くせ毛をかき上げながら、ニヤリと笑う。
「つまり、頭を使わねぇとやられるってことだ」
「……なら、やるしかねぇな」
然は深く息を吸い、腕に力を込めた。
《オーバーライド》——発動。
ヴェール・バインドの隊員たちが構えていた武器が、瞬間的にエラーを起こし、一斉に停止する。
「——っ!? 武器が作動しない!?」
「オーバーライド、か……」
通信機越しに冷静な声が響く。
「なるほど、では次の手を試させてもらおう」
ヴェール・バインドの隊員の一人が、足元に小型の装置を投げ込んだ。
——「ライフ・エクスチェンジャー起動」
瞬間、隊員たちの肉体が異常な速度で活性化し、筋肉が膨張する。
「……っ!? 何だよ、あれ……!」
「”寿命”を燃やして、瞬間的に超人化する装置だ……こりゃ、面倒くせぇな」
ナヴィスはわずかに苦笑しながら、拳を握った。
「ゼイン、どうする?」
然は、未だ痛む腕を抑えながら、冷静に言った。
「……こっちも、限界までやるしかねぇだろ」
碧族としての最初の本格的な戦いが、ここから始まる。