※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
〈File69:命の尊厳〉
昏い木々の向こう、空の真ん中を黒い煙が濛々と立ち昇っていた。
吹き降りてきた風が煤の臭いを孕んでいる。
「――火事だ!」
遅れて気づいた2人も、険しい顔で黒煙を見上げる。
どうやら智世が見た放火魔は逃亡を選ばず、建物を放っておかなかったようだ。
煙は絶えず昇り続け、その火の勢いを容易く想像させる。
きっと私たちが去ったあとに、建物の1階にもガソリンをまいたのだろう。
建物のすぐ傍には針葉樹が生えてたし、更にその周辺も燃えやすい木々に囲まれてる。
延焼は時間の問題だった。
風向きにもよると思うけど、もしかしたらこの辺りまで――。
「……智世!」
「ああ!」
考えることは同じなようで、智世は千景さんの身体を起こそうとしていた。
すぐに私も手***********
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