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「今日の任務は、宝石を探すんだ。宝石だって、地下世界にしかないだろ…」
深さ400mに達する頃、潜水艦の船内は沈黙した。
宝探しと言われた任務だったが、結局深さ数千mも行かないところで浮上した。その間、どこにも着地する事はなかったし、目的が見つかる事もなかった。海軍長さまの指示も何一つなかった。
「成果なしかー」
ネイとフェレンさんと夜の部屋で、今日の結果報告をしていた。
「それはそうでしょ。宝もなければ、何かを作ることも無かったんだろう?」
フェレンさんは、卓上の潜水艦の小さな模型に触れながら言う。
「いや、ここの事ですから。もしかすれば行くこと自体に意味があったのかもしれないです」
ネイは、布団へ身体を倒した。それは、諦めるような割り切るような仕草にも見えた。
「宝がないなら、目的を考え直さないと」
ネイの声色は沈んでいた。それを救うようにフェレンさんが言葉を添える。
「いや、必ずしも形のあるものが宝とは限らない。君には分からなくとも、海軍長さまは目的を果たしたのかもしれない」
「それはつまり、宝は物体のないものでもあるという事ですか?」
僕が尋ねると、フェレンさんは憂いを帯びた表情をした。
「さあ、私が言う事が合っているとは言えない。だからこそ、目的は自分で考えろという訳だ」
言葉を言い終える頃には、室長として凛々しい顔つきに戻っていた。まるで、目的を明確にする事を拒むように話すフェレンさん。
「なぜ、そんなに目的は曖昧なのですか?」
僕は、フェレンさんへ問いかけた。室長の彼女なら、僕らよりこの船に乗っているから知っているはずだ。
「君、その質問は良くないよ」
彼女は、僕を言葉と目で制した。
「おい、やめろよ。そんな質問じゃ、誰も答えてくれない」
ネイが起き上がると、僕の代わりに質問を変えた。
「フェレンさんは、目的をなんだと思ってます?これは純粋な質問です}
警戒心を解くように、子供の素直さをにじませて話すネイ。
「そうだな…」
ネイとフェレンさんの顔を交互に見やる間、彼女は答えた。彼女は、憂いの表情を押し殺すような、苦しみの表情を作っていた。
「伝説を作りに行くんだ。今はまだ、その準備段階かな」