side motoki(17)
カラオケボックスの部屋の中で。
他の部屋から聞こえてくる歌声が全てを掻き消してくれているような気がした。
「やばい、まじでっやばい…あっ、あっ、そんな締めないでよお兄さん」
俺の膝上に跨った28歳の若井が、俺を締め上げるように腰を上下させている。
ああ。
なんでこんなことになったんだっけ。
真っ白になりそうな頭で、考えようとしたけれど、快楽に身を任せてしまっている状態では何にも考えられない。
目の前にいる、彼の痴態がどうしようもなく淫らなのに、カッコよく見えてしまう。
それにしても、だ。
あの若井が。
ちょっと電気を付けたまま行為に及ぼうとしただけで、泣きそうになって嫌がっていた若井が。
こんなに明るい中で。
一糸纏わぬ姿を晒して。
俺の上で腰を使いながら、その薄い唇から赤い舌を覗かせている彼。
いつも俺に組み敷かれながら、布団で顔を隠して、喘ぎ声まで我慢してる若井。
同じなんだな、そう思うと不思議だった。
本当に食べてるのか心配になってしまうほど華奢な肢体が、歳を重ねるとこんなふうにしなやかな筋肉を纏うんだとわかって、余計に眩しく見えてしまう。
細いことには変わらないのに、まるで彫刻みたいにカッコよくて、そして綺麗だなと思う。
そして。
俺を飲み込んで食いちぎりそうな秘部。
「この10年、ずっと元貴に抱かれてきたからさ、慣れちゃうよね」
まるで悪戯っ子みたいにあどけない表情を浮かべながら言って見せる姿に俺はもう完成敗北してしまいそうになる。
未来の俺、どんだけヤバいんだよ。
いや、未来というか。これからの俺が若井の身体をこうしちゃうって訳か。
17歳の若井が見たらきっと卒倒してしまうだろうな。
というか、本人達が出会ってしまったらどうなるんだろう。ドッペルゲンガーは確か消えてしまうんだっけか。
そんなくだらないことを考えてしまうくらい、俺は彼に翻弄されてしまう。
「元貴、キスしよ」
彼の口が、俺の名前を呼ぶ。
俺のことなのか、それとも未来にいる28歳の俺を思い出してのことなのか、わからなかったけれど、求められるままに唇を受け入れた。
「ん、んっんっ…」
クチュクチュというリップ音と嬌声が混ざる。
最初は凄くエロいなと思ったディープキスにも段々順応してきてしまっている。
「んぅ…好き、好きだよ」
唇を離すと、彼がそう言って笑う。
なんでだろう、悲しそうな表情に見えてしまう。
未来の俺は、若井にこんな表情をさせていることに気づいているんだろうか。
ふとそんな事を考えてしまった。
「お兄さん、俺のこと、好き?」
大人の若井に訊ねてみる。すると、彼は少し驚いたような顔をして見せたが、にこりと微笑んだ。
「当たり前じゃん。大好きだよ、ずっと」
だからずっと一緒にいるんだよ。
そう言いながら、彼はまた腰をくねらせる。
「あっ、ダメっ、また締まった、、ヤバい、、出ちゃう…アッん」
声だけ聞いたらまるで俺が抱かれてると思われそうだな、ってくらい声が出てしまった。
だって、それくらい気持ちよくて、堪らない。
「イきたいならイッていいよ? 俺もいきそ…」
長い脚を開いて、何度も俺を咥え込みながら腰を使う彼の目が潤んでいる。
そして、彼自身も勃ち上がって先走りの液が光っていた。
ぼうっとなりそうな頭で。
俺は彼自身に手を伸ばしてそれを握り、ゆっくりと上下に扱く。
「ぁ…だめ…きもちい…はぁ…んっ。ああ…」
彼が、目を細めて顔をのけ反らせた。喉元が艶めかしくて堪らず、俺はそこに噛み付くように吸い付いた。
「お兄さん…気持ちいい?」
訊ねると、彼は口元に手を当てて、首を縦に振る。赤い髪が汗で張り付いて、そこはかとない色気を纏っていた。
「一緒にイこ?」
彼のものを扱く俺の手に、彼の手が重ねられた。
黒いマニキュアですら、卑猥に思えてしまう。
「うんっ…あっ…あっ、あっ…イク、イク…」
俺、こんな声出ちゃうんだなぁ。
「中に、出していいよ」
俺を締め上げたままで、彼が耳元でそう囁く。
その低い声がやばいくらい色気たっぷりで。
「あっ、あっ、あっ、イクっ!! ああっ!」
自分でも信じられないくらい喘ぎながら、俺は彼の中に吐精してしまった。
「あぁ…中、いっぱいだなぁ」
彼も俺の手の中でイッたらしくて、肩で息をしながらそううっとりと呟いた。
ゆっくりと、俺自身を引き抜くようにして、彼は立ち上がる。その太腿に、白濁液が垂れている。
「こんなセックス、したことなかった?」
そんなふうに言いながら、彼は下肢の後始末をしている。慣れた手つきがなんだか艶めかしくも見えてしまう。
「うん…ヤバい、まじでやばかった」
俺はもう腰砕け状態。
全身をソファに投げ打ったまま、暫くうごけないでいる。
「俺も、気持ち良かった、久しぶりだったから」
え。
久しぶりって。
一昨日、抱かれたんじゃなかったのか?
だってさっきキスマーク、一昨日つけられた、って。
「お兄さん、俺、お兄さんのことずっと好きだからさ」
もしかして。
俺は。
大人の俺は、若井をぞんざいに扱ってるのかな。
そんなふうに思ってしまった。
だから、というわけでもなかったけれど。
なんだか、彼が消えてしまうんじゃないかと思ってしまって、ついそう言った。
俺は、若井が好きだ。それは勿論、同い年の若井のことだ。俺を無条件に好きでいてくれて、ずっと隣にいてくれる、若井が好き。
今の俺が、こう言ったからといって未来がどうなる訳でもないだろうってことはわかっていたけど。
それでも。
時折悲しそうに笑う彼に。
好きでいる、ということを伝えたかった。
「うん、ありがと。俺もずっとすきだよ」
そう言った彼は身支度を整えて。
動けないでいる俺の隣に座ると、丁寧に後始末をしてくれた。
そういう甲斐甲斐しいとこ、やっぱり若井だなあって思いながら。シャンプーか、香水かわからない彼の匂いを確かめるように、その肩に身を委ねた。
「ずっと大切にするから…俺の傍を離れないでいてやって…」
ゆっくりと、ゆっくりと、伝わる温かさが心地良くって。
俺はそのまま目を閉じた。
コメント
6件
😭😭😭🙌🙌🙌
うわ✨✨ 歳の差でドキドキしますね✨ 💙君色っぽすぎる…🫠
うぐあぁぁぁもう大好きですもう良すぎる😭