「ごめん。俺、他に好きな人がいる。」
「えっ………」
そんな… 有り得ない。
私の事、好きじゃないの…? そんな訳無い、そんなわけっ……
「嘘、だよね…?」
「嘘じゃない。 ……だから、俺と別れてほしい。」
「い、…… うぅっ…」
その場に崩れ落ちた私に、彼は言葉を一つもかけてくれなかった。
そして、静かに屋上から去っていった。
「(フラ、れた……)」
こんなにあっけなく終わる恋だなんて、思ってなかった…
もう最悪だ。 私の恋の人生、もう終わったんだ。
健人くんじゃなきゃ愛せない。 私は、健人くんが大好きだから…
私は手で顔を覆って、誰からも顔が見えないようにした。
でも、指の間から涙がこぼれ落ちて… そのまま床に染み込んでいった。
何滴も、何滴も落ちていって… ずっとずっと、泣き崩れていた…
――これは、私が中学1年生の時の話。
そこからしばらくは、ずっと家でも、学校でも泣きじゃくっていた。
本当に愛していたからこそ、諦めもつかなかったんだ。
そんなある日、私が廊下を歩いていると……
一番見たくなかった光景を目にしてしまった。
「あっ、うちもお揃だよ、それ〜っ! 可愛いよね!」
「お、仁菜もそう思う?俺もそう思って買ったんだよ!!」
「お〜、凄い凄い!私達奇跡だぁ!」
「そーだな!」
「っ………!(新しい健人くんの彼女だ…)」
仁菜ちゃんとやら人は、健人くんと手を硬く繋いで歩いていた。
その子は、一目見るだけで 私なんかより可愛いし、メイクも上手だ。
そりゃ、私なんか要らないよね…
そうだよね、そうだよね… こんな人、必要無いよね……
そんな事を考えると、また孤独感に包まれていく。
私、何も出来ずに終わったから…
手も繋げなかったし、抱き合ったりも少ししかしなかった。
――思い返せば、愛情なんてこもってなかったのかな。
私、騙されてたのかも…… 健人くんと付き合ったあの日、私は約束したのにっ……
____私が健人くんに告白したあの日は、雲一つない青空だった。
昨日降った大雨で出来た水たまりが、いつもより美しく見えた日だった。
私は勇気を出して健人くんを誘い出し、屋上まで連れてきた。
そして、健人くんの手を取り、ゆっくり話した。
「私、健人くんがずっと好き。 健人くんの笑顔、誰よりも輝いてるから。」
「…!」
「絶対私が幸せにしてみせる…! だから、私と付き合って下さいっ…!」
私がそう言うと、健人くんは私の手を握り返してくれた。
そしてそっと、私を抱きしめてくれて…
間近でこう言ってくれたんだ。
「俺も好きだよ、七葉。 七葉の優しさが好き。」
「!」
「もちろん付き合う! これから、何でも俺に頼ってくれて良いから!それに、何でも叶えてあげる!」
「っ、ありがとう! 嬉しいっ!!これからよろしくねっ!!」
「うん、よろしく!」
______何でも頼ってくれて良いって。
______何でも叶えてあげるって。
――そう言ってくれたのに、どうして…
どうして裏切られる事になってるの…! 健人くんの嘘つき!!!!
「………もう、知らない。」
私、絶対健人くんと同じ高校に行く って思ってたけど、今一気にその気が無くなった。
どうでも良い、あんな人。
カッコイイだけ、中身が無い人。
あんなに優しくしてくれたのに、3ヶ月も保たなかったじゃない…っっ!!
健人くんのバカ!!バカバカ!!
大嫌い!大っっっっっっ嫌いッッ!!!
「大、嫌い……」
「っ!」
なんで… なんで、諦めきれないの…?
あんな人、放っておけば良いのに…っ
また新しい恋を始めれば良いだけなのに… どうしてこんなに寂しいんだろう__?
寂しくて、涙が流れ出てきてしまった。
もう、彼女には戻れない。 私の事なんて、忘れちゃうんだろうな。。
あの時の言葉、全部でまかせだったんだ…
「うっ…、うぅっ…!(嫌だ、もう会えないだなんて…)」
もう一度やり直したいのに、出来ない。
辛くて、寂しくて… もう我慢出来ないよ…っ
「新しい人、見つけなきゃ。」
私は絶対、“他に愛せる人”を見つける と誓った。
私はただ一人廊下に突っ立っていた。
そんな自分が惨めで、教室に帰るのも辛くなった……
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