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## 第2話「隠し事」
※糸師凛視点
-–
次の日の朝。
目覚めは最悪だった。
「ゴホッ……!」
咳と同時に、数枚の花びらがシーツの上へ落ちる。
昨日より増えていた。
俺は無言で花びらを掴み、ゴミ箱へ捨てる。
誰にも見られていない。
それだけ確認して部屋を出た。
-–
練習中も違和感は消えなかった。
走るたびに息苦しい。
喉が痛い。
だが、こんなことで止まるわけにはいかない。
俺はボールを奪い、そのままシュートを決めた。
「ナイス!」
誰かの声が聞こえる。
興味はない。
そう思っていたのに。
「流石だな、凛。」
潔だった。
-–
その瞬間。
胸が妙にざわつく。
同時に喉が熱くなる。
嫌な予感がした。
俺はすぐに顔を背けた。
「……当たり前だ。」
「でも顔色悪くね?」
「うるさい。」
「心配してるだけなんだけどな。」
潔は苦笑した。
-–
まただ。
最近、こいつと話すと調子がおかしくなる。
心臓が妙にうるさい。
落ち着かない。
集中しろ。
サッカーだけを考えろ。
それだけでいい。
-–
昼休憩。
俺は人気のない廊下へ向かった。
そして。
「ゴホッ……!」
咳き込む。
手のひらに落ちたのは白い花びら。
昨日より多い。
明らかに増えている。
-–
「凛?」
背後から声がした。
一瞬で血の気が引く。
振り返ると、そこには――
「潔……」
最悪だった。
-–
「お前……今……」
潔の視線が俺の手に向く。
そこにはまだ花びらが残っていた。
隠しきれない。
「見たのか。」
「……見た。」
沈黙が落ちる。
-–
「誰にも言うな。」
俺は低く言った。
潔は驚いた顔をしたが、すぐに真面目な表情になる。
「それ、病気なのか?」
「知らない。」
「知らないって……」
「本当に知らない。」
-–
初めてだった。
誰かに本音を漏らしたのは。
自分でも少し驚いていた。
-–
潔はしばらく黙っていた。
そして。
「一人で抱え込むなよ。」
そう言った。
-–
その言葉に。
なぜか胸が痛んだ。
喉ではない。
もっと奥。
説明できない場所が。
-–
「余計なお世話だ。」
そう返したのに。
潔は困ったように笑っただけだった。
-–
その日の夜。
再び咳き込む。
床に散らばる花びらは昨日の倍以上。
苦しい。
息が詰まる。
-–
そして俺は気づいてしまう。
花を吐き始める前から。
俺が考えていた人物が誰なのか。
-–
「……潔。」
思わず名前を呟いた瞬間。
新しい花びらがひらりと落ちた。
-–
俺は知らなかった。
その名前を口にするたびに。
病気は少しずつ進行していくことを。
-–
第3話へ続く
コメント
1件
えっ、第2話…!?!? もう凛くんの視点でここまで切なくなるの!!😭💦 「隠し事」ってタイトルがもう刺さる… 花を吐く病って設定がすごく繊細で、凛が潔と話すたびに症状が悪化してる描写がエモすぎる…「その名前を口にするたびに進行する」っていう伏線っぽい一文、鳥肌立ったよ🥺✨ 潔が「一人で抱え込むなよ」って言ってくれるのが、今の凛には一番の救いなんだろうな… 続き気になりすぎる!白米さん、この空気感ほんとに好きです🌸