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## 第3話「知らない感情」
※糸師凛視点
-–
眠れなかった。
目を閉じれば浮かぶのは潔の顔。
「一人で抱え込むなよ。」
あの言葉が頭から離れない。
-–
「……意味分かんねぇ。」
俺は天井を睨んだ。
こんなことを考えている暇があるならサッカーを考えるべきだ。
それなのに。
考えるなと思えば思うほど、あいつのことが浮かぶ。
-–
翌日。
練習前のミーティング。
俺はできるだけ潔から離れた場所に座った。
関わらなければいい。
そうすれば落ち着く。
-–
「凛。」
隣に座られた。
最悪だった。
-–
「何だ。」
「体調、大丈夫か?」
「問題ない。」
「嘘つけ。」
即答だった。
-–
俺が睨んでも潔は引かない。
むしろ真剣な顔をしている。
「昨日も苦しそうだっただろ。」
「……。」
「本当に一人で大丈夫なのか?」
-–
またその顔だ。
心配そうな顔。
放っておけばいいだろう。
俺なんか。
-–
その瞬間。
喉に鋭い痛みが走った。
「っ……!」
-–
まずい。
ここで咳き込んだら。
-–
俺は立ち上がり、その場を離れる。
背後から潔の声が聞こえた。
「凛!」
-–
走る。
誰もいない場所へ。
そして。
-–
「ゴホッ……!」
「っ、は……!」
-–
大量の花びらが床へ散った。
白。
青。
薄い紫。
昨日より明らかに増えている。
-–
息が苦しい。
肺の中まで花で埋まっているみたいだ。
-–
「凛!!」
-–
声がした。
振り返る。
そこには潔がいた。
-–
「何で来た。」
「心配だからだろ!」
-–
即答だった。
-–
俺は言葉を失う。
普通なら面倒ごとには関わらない。
それなのに。
こいつは追いかけてきた。
-–
「見られたくなかった。」
小さく呟く。
-–
潔は少し目を見開いた。
-–
「……ごめん。」
-–
謝罪。
予想していなかった言葉だった。
-–
「でも放っておけなかった。」
-–
胸が痛む。
苦しい。
花のせいじゃない。
-–
「お前には関係ない。」
そう言った。
言ったはずだった。
-–
なのに。
声が震えた。
-–
潔は黙る。
何かを考えるように。
-–
そして。
-–
「関係なくない。」
-–
俺の心臓が跳ねた。
-–
「チームメイトだから。」
-–
その言葉に。
少しだけ安心してしまった自分がいた。
-–
だけど同時に。
どこか苦しくなった。
-–
チームメイト。
それ以上じゃない。
-–
当たり前だ。
何を期待している。
-–
「……帰れ。」
俺は顔を逸らした。
-–
潔は何か言いたそうだった。
だが最後には。
「無理するなよ。」
そう言って去っていった。
-–
一人になる。
静寂。
-–
そして。
-–
「ゴホッ……!」
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今までで一番大きな花が落ちた。
白い花弁がゆっくり床へ広がる。
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その花を見つめながら。
俺は理解し始めていた。
-–
この病気の原因を。
-–
そして。
その原因が誰なのかを。
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「……潔。」
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名前を呼ぶ。
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また一枚。
花びらが落ちた。
-–
第4話へ続く 🌸
コメント
1件
凛くんの視点、すごく響きました……「チームメイトだから」って言葉にほっとしながら、同時に苦しくなる心情、切なすぎます。花びらが増えていく描写も、胸がぎゅっとなりました。続き、どうなるんだろう。
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