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「王詞姉さん、ピッツァ一緒に食べるんね!」
元気よく今日も妹の王華が私を食事に誘う。相変わらず、元気で可愛い。
「分かった。今行く」
何故私はこうも不器用な言い方しかできないんだ!
本当はもっと笑って、王華を抱きしめてみたい!だが、そんな事をしたら、引かれないだろうか。今まで冷たかった姉がそんな事をしたら気持ち悪いよな。というか、こんな脆そうな王華を私が抱きしめたら壊れてしまいそうだ。
あぁぁぁぁぁあ!私の根性なし!
そんな事を考えていたらもう食卓に着いていたらしい。
「ねぇ、王詞姉さん、この包帯外したら駄目なんね?」
王華は、自身の目元にある包帯を指さして言った。
「自分の能力の事を考えろ。お前の泣き顔は見たくないんだ」
あ、今の言い方はきつかったかな?冷た過ぎたよな。ごめんな、王華!こんな不器用な姉で、ごめんな!
王華が生まれたあの日、包帯が少しズレていたから、王華の目が見えたんだ。たまたま、その場に居合わせた人間と王華の目が合い、その人間が王華の能力によって操られた。
まるで操り人形のように無表示になって、王華が何か言わないと何もしないような状態になっていた。
王華はその状態が恐ろしかったのだろう。わけが分からずただひたすらに泣き喚いていた。
王華は、人の顔が見えないが、声色だったり、動いた気配とかで大体は、どんな表情や感情でいるのかが分かるようだ。
その能力が王華は怖くて、あの日以降、使っては居ないようだ。だが、人の顔を見たいのだろうな。たまに私に包帯を取ってもいいかと聞いてくるのだ。何とも可哀想な子だ。
そんなで、王華と主とイタ王様と過ごした日々の月日はどんどん流れていった。
そして、1797年、夜。私はもう死ぬようだ。
心残りは無いように生きてきたつもりだ。一つ、気になることと言えば、王華の行く末を見てやれない事と、彼奴に姉として、余り大きな事が出来なかった事だろうか。
私達ドールは、自身の主が死んでから死ぬ。死体は一切残らない。残るのは正装以外の所持品だけだ。ドールのしに方と言うのは本当に独特なもので、砕け散るように死んでゆくのだ。例えるなら、ガラスを粉々に割って、それが空気に溶けてゆくようなものだろうか。
私は、弱さを人に見せたくない。だから、最後の言葉は、手紙にして残そう。
内容は本当に簡潔にしておこう。
【私はもう死ぬ。これからは王華、お前が現役になるだろう。頑張ってくれ。困ったら、私達ドールのリーダー、愛華を頼ってくれ】
短いだろうか。だが、もう時間は無い。私の足はもう完全に消えた。
「王華、こんな不器用な姉ですまない。愛華は、私の友だ。信用できる、信頼できる。彼奴の能力は強いから、お前の能力に勝てる。だから、どうか、私のように心を殺すな。戦時中で苦しかろうと、主に害を成そうとしている者を殺しに行くようなドールには、成るなよ」
あぁ、最後に見るのは、王華の笑顔が良かったが、この絵だけで我慢しよう。
この時、目から水が垂れていた気がする。
私はこうして死んだ。王華の満面の笑みを描いた絵を残して。
私は、気が付いたら知らない所に居た。
「何処だ?此処」
思わず眉間にシワが寄る。
「死んだはずじゃ。いやいやいや、何処のラノベの世界かよ。ありえねぇだろ!」
ラノベなんて知らないが何故か私の口から出てきた。
「と、取り敢えず、状況を整理しよう」
「私は死んだ。そしてこの何もない真っ白の空間に来た」
「うん、あの感動を返せよ!」
一頻り叫んだら大分落ち着いてきた。
カランコロン、と下駄の音が聴こえてきた。
「王詞、何故ここにいるんだ?」
話しかけて来たのは私の友、愛華だ。
「此方が知りたいさ」
頭を抱えるしか無い。
「これも、作者の悪戯か」
ポツリと愛華は言葉を吐き出した。
「仕方が無い。此処は、無の空間だ」
無の空間、、、。愛華曰く此処は、想いの強い者か、私達ドールの創造主に大きな接点などがある者が来れる場所何だとか。私は、王華を見守りたいと言う想いが強くここに来たのだろう。
「そうか、なら、私はこれから此処で王華を見守ろう」
久し振りに口元が緩んだ。
ただ、ここに来てもう一つ知りたい事が増えた。
愛華は、何者なのだろうか。私の友である事は知っている。だが、時々私達の分からない別の世界を知っているかのような素振りを見せる。さっき呟いていた「これも作者の悪戯か」というのもそうだ。
だが、これを知れるのは、もっと、別の場所で、もう少し後なのかもしれないな。