テラーノベル
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「私が使えるのは基本的に同じ炎属性の魔法。その為、あまり私自身の攻撃であの精霊にダメージを与えることはできません」
続けて空中に文字を書き起こしているカエデ。
「あくまで誘導です。皆様頼みましたよ」
空中の文字がクルクルと周りだし、クナイのような形へと姿を変えた。
「おうよ!ニティア!喧嘩は後にして、また頼む!」
盾をニティアに向けるルシオ。
「喧嘩なんかしてないわよ!」
「私たちも。リヴァレー。少し時間を稼ぐよ」
『仕方ないなぁ』
ルシオの盾に手を当て、魔法を込めるニティア。エラリスもリヴァレーの力を借り、あたり一面を覆い尽くすほどの霧を発生させた。
『今度は何を見せてくれるのじゃ?』
再び高く飛び上がり、空中に文字を書き起こすニック。しかし、炎は生成されることなくそのまま文字が消えてしまった。
『なるほど……空気中の水分を飽和状態にしたのか……しかし……』
ニックが手を下にかざしたその瞬間……
ゴゴゴゴ……ドーン!ドカーン!
下のマグマが爆発をし始めた。
『この下は灼熱のマグマ……熱せられた空気は上へと流れ、飽和状態を維持するのはこんなんじゃろうて』
熱せられた空気と共に、霧が一気に上昇。視界が徐々に晴れてゆき、岩場にいるフィニス達の姿が見えそうになったその時。
ヒュンヒュンヒュン!
『おっと♪』
たくさんの炎のクナイがニック目掛けて襲いかかってきた。
さらりと避け、時には手に持った炎の剣でクナイを弾き、無傷のニック。
『これで終いではあるまい?』
完全に晴れた霧の中、今度はニティアが巨大な魔法の塊をニックに放つ。
「当たり前でしょ!」
『確かにこれは避けきれぬか……しかし……』
さらりと文字を書き、その文字が手に持った剣にまとわりつく。
そしてそのままニティアの放った魔力の塊へと突っ込んでいき……
スパッ!
「はぁ?!なんで切れるのよ!!」
ニティアの魔法を真っ二つに切り裂く。
『小娘よ。まだまだ密度が足らんのじゃよ♪』
「ふん!でもあなたもちょっと油断しすぎじゃない?」
ニヤリと笑うニティア。
『ん?』
ニックが魔力を感じ、上を見上げると……上昇した水蒸気の水分から作った水でできた蛇が大量に落下してきていた。
そのうちの数匹がニックに絡みつき、翼ごと身体に巻きつき、そのまま落下し始めるニック。
「ホムラ。ちょっと痛いかもだけどごめんね」
エラリスの後ろにはバチバチと音を立てながらニックを睨みつけるライナの姿。
『おぉ……ライナか。久しぶりじゃの』
『う……うん。でもニック……これはちょっとやりすぎだよ……』
ピカッ!
一瞬の光と同時にライナの角から発せられた雷がニックへ襲いかかる。
ドーン!
落下していたニックに直撃。白い煙が立ち込める。
『やってくれたのぉライナ……』
水蛇の拘束を外し、大きく羽ばたきをして煙を散らすニック。
『!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!』
「謝らなくていいよライナ」
謝るライナと宥めるエラリス。そんな彼女らに対し、不敵な笑みで返すニック。
『確かに油断していたかも知れぬが……それは主らもではないか?』
ニックが剣を上に掲げる。
「……下?!」
すでに仕掛けられていたニックの魔法。先ほどのマグマの爆発時に生成されていたのだろう。炎の槍が足場の下から襲いかかる。
アルテアが気付き、防御魔法をかけようとするも間に合わず。致命傷は避けたものの全員が身体中に傷や火傷を負っていた。
『いった〜!!アンタ私たちに向かって何すんのよ!!』
『ごめんなさいごめんなさい(バチチッ)なさい』
『この足場まで貫通させるとは……』
その槍は精霊達にも襲いかかっており、彼等も手傷を負っていた。リヴァレーを除いて。
『お前らだらしないなぁ』
#魔王
チタコロ
48
#探偵
橘靖竜
6,432
自転車和尚
1,223
#魔道具職人
こはる
1,904
ちょっとは痛かったのだろう。身体をさすってはいるものの無傷のリヴァレー。
『無傷か……どうも主は気に食わんのぉ』
空を飛ぶニックを見上げるリヴァレー。
『別にそれはどうでもいいけど。それでもニック。みんなも言っていたけど、いくら最後でもやりすぎだと思うぞ』
『だからこそじゃ。弱い人間にだけは従うわけにはいかぬじゃろう』
『ふ〜ん。だとしたらお前はもう負けるよ』
『何……?』
ニティア達をよく見るニック。
『男2人がおらぬ……』
それに気づくと同時にキラキラと輝きながら上空から舞い落ちてくる炎の羽。
『先ほどのクナイか……それにまたデコイとは芸のない……』
目を閉じで集中するニック。
『ふむ……ここか』
ガキーン!
目を閉じたまま剣を上で構え、ルシオの槍を受け止めるニック。
『その槍……見た目の割に随分軽いんじゃのぉ』
槍を打ちつけているルシオが苦笑いをする。
「風圧魔法で飛び上がったはいいものの、変なやつが後ろに乗っかってるから、イマイチ勝手が違ぇんだよ!フィニス!あとは頼んだ!」
「任せろ!」
ルシオの背中にいたフィニスがひょっこりと顔を出し、思い切りルシオを蹴り上げて壁の方へ飛ぶ。
「ぐはっ!」
蹴り飛ばされたルシオはそのまま落下し、地面直撃寸前でニティアの浮遊魔法で無事に着地する。
『最初のように気付かれぬように攻撃をすれば良かったものを……』
くるりと回転し、今度は壁を蹴った反動でニックへと突撃するフィニス。
「負けを認めさせるなら正面から行くっきゃねーだろ!」
『フフ♪やはり面白い男じゃ!』
剣を振りかぶるニック。
その時、手元に舞い落ちる炎の羽がくるりと周り、光の球へと姿を変えた次の瞬間……
『なっ!』
ボン!
小さな爆発を起こし、持っていた剣を弾き飛ばした。
『これは妾の!』
下にいるカエデを見下ろすニック。
「僭越ながら、貴方の魔法を真似させていただきました。流石に貴方ほどの威力は出せませんでしたけどね」
ふっと笑うカエデ。
『くっ!!』
落ちかけた剣を反対側の手で受け取ったニック。逆手にはなってしまったものの、なんとかフィニスの斬撃を受け止めるのに間に合う形で対峙する2人。
『惜しかったのぉ!』
2つの剣が交差する直前……
キィーーーン!
フィニスの剣が唸りを上げる。
『?!』
「こいつはよく切れるぜ!!」
カキーン!
フィニスの1本の剣がニックの剣を両断する。
『!!』
「うぉ〜りゃ〜!!」
そのまま半回転し、もう片方の剣でニックの首元目掛けて剣を振りかぶるフィニス。
『……っ!』
咄嗟に目を閉じるニック。
ピタッ
『……』
ゆっくりと目を開けるニック。
フィニスの剣は自分の首元で止まっていた。
「俺らの勝ちだな」
ニカっと笑い、そのまま重力に引かれて落下していくフィニス。
折れた剣が炎と共に消え、落ちゆくフィニスをすぐさま追いかけるニック!
「ちょっ!何する気よ!!」
魔法でニックに向かって追撃をしようとするニティアを止めるリヴァレー。
『もう大丈夫だ。終わったよ』
ニックがフィニスを抱き抱えるように受け止め、そのまま全員が立っている足場へ降り立つ。
すぐさまフィニスを下ろすと、ニックは先ほどまでとは異なる優しい微笑みを浮かべていた。
『妾の負けじゃ』
コメント
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月白さん、第102話読了です。 いやもう、傷だらけの決着ってタイトル、まさにその通りでしたね…!フィニスとニックの一騎打ち、最後の剣が折れて首元で止まるあの一瞬、すごく集中して読んじゃいました。カエデの真似た魔法で剣を弾くところ、あれは「僭越ながら」って言いながらもカッコよかったなあ。最後にニックが「妾の負けじゃ」って優しい顔で認めるのも、長い対決にふさわしい締めくくりだと思いました✨ 次も楽しみにしてますね。