テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Nera🍀︎❄🐈⬛
腐女子
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日も空は重たい雲が覆いかぶさっていた。
おんりーは自室のソファに座り、スマホの画面をぼんやりと眺めていた。 そこには、おらふくとのメッセージのやり取りが並んでいる。
『おんりーごめんなぁ。 今週もバタバタしてて会えそうにないんや』
『そっか。おらふくん忙しいもんね。無理しないでね』
そんなやり取りが数週間続いている。
おらふくんはドズル社での仕事に加え、最近は 個人での活動も忙しい様子で、中々二人っきりで会える時間が取れていない。
おんりーも勿論おらふくんの忙しさは理解している。
けれど、恋人であるおらふくんに 会えない日々は想像以上に寂しかったのだ。
「はぁ……」
無意識に吐き出された大きな溜息が部屋の静寂に吸い込まれていく。
おらふくんの声が聞きたい。 自身よりも少し背の高い彼を見上げて他愛ない話がしたい。 何よりも彼の温かい腕の中に包まれたい。
おんりーは寂しがり屋だ。
普段は強がっているけれど一人でいるのは少しだけ苦手。
特に恋人であるおらふくんと 会えない時間は彼の心を深く沈ませる。
スマホを閉じ、おんりーはベッドに寝転がった。
枕に顔をうずめると微かにだが、 おらふくんの匂いがするような気がした。
以前、おらふくんがおんりーの 家に泊まっていった時の残り香だろうか。気のせいだろうが。
「おらふくん……」
ぽつりと呟いた大好きな名前は 誰に届くこともなく空気に溶けていった。
寂しさに耐えきれなくなったのは、その週末のことだった。
おんりーは預かっている合鍵を握りしめ、 おらふくんのマンションの前に立っていた。
事前に連絡はしていない。迷惑だと思われるかもしれなかったが、 どうしても彼の温もりを感じたかったのだ。
ガチャリと鍵を開け静かに部屋に入る。
部屋の中は、おらふくんの匂いで満たされていた。 その匂いが鼻を掠め取った瞬間、おんりーの 胸にじんわりと温かいものが広がる。
「おらふくんの匂い……」
おんりーは、ゆっくりと部屋の中を見回した。
テーブルの上にはマグカップが置かれている。
ソファには彼が普段使っている 黒色のブランケットがかけられていた。
どれもこれもが、おらふくんの存在を強く感じさせる。
おんりーはリビングを通り過ぎ、そのまま奥の寝室へと向かった。
ベッドの上には脱ぎっぱなしになっている おらふくんの服がいくつか置いてある。
Tシャツ、パーカー、ルームウェア。おんりーは それらの服をそっと手に取った。
どれも、おらふくんの優しくて温かい良い匂いがする。
───その匂いに包まれたい。
───おらふくんの温もりを感じたい。
そんな衝動に駆られたおんりーは ベッドの上におらふくんの服を広げ始めた。
Tシャツを重ね、パーカーを敷き詰める。
まるで小さな巣を作るかのように、 おらふくんの服でベッドを埋め尽くしていった。
そして、出来上がった巣の中にそっと身を沈めた。
おらふくんの匂いに包まれ、 体が柔らかな服の感触に触れる。
まるで、おらふくん自身が そこにいるかのような錯覚に陥り、 おんりーの心は少しだけ満たされた。
「おらふくん……」
目を閉じるとおらふくんの優しい笑顔が浮かぶ。
会えない寂しさはまだあるけれど、 今は巣の中で彼の温もりを感じていたい。
その日の夜。
おらふくんはマンションのドアを開けた。
疲れがどっと押し寄せ、 重い体を引きずって部屋に入る。
電気をつけると、 誰もいないはずの自分の部屋に違和感を感じた。
リビングを通り過ぎて寝室のドアを開ける。
そして、その光景を見た瞬間おらふくんは息を呑み込んだ。
自分のベッドの上に服が山のように積まれている。
パーカー、何枚ものTシャツ、ルームウェアなどが 積み重ねられ、 まるで小さな巣のようになっている。
そして、その中心で小さな体をすっぽりと収めながら スヤスヤと心地よさそうに眠っている姿が見えた。
──────おんりーだ。
おらふくんは、その可愛らしい姿に思わず声が出そうになったのを慌てて堪えた。
おんりーを起こさないように、そっとベッドに近づく。
おらふくんの服に顔をうずめ、 安心しきったように眠るおんりーの寝顔は 幼く、そして堪らなく愛おしかった。
きっと僕に会えなくて寂しかったんやろう。
会えない日々が続いていた事を改めて申し訳なく思う。
おらふくんはスマホを取り出して、 そっとその姿を写真に何枚も収めた。
可愛いおんりーを僕だけのものにしておきたい。 そう思いながら彼はおんりーをじっと観察した。
規則正しい寝息、微かに震える睫毛、 僕のパーカーをぎゅっと掴んでいる自身よりも一回り小さな白い手。
その全てが、おらふくんの心を鷲掴みにした。
「可愛すぎやろ……」
おらふくんは小さく呟きながら、そのままベッドの縁に腰を下ろした。
おんりーを起こさないように…そっと。
この愛しい光景をもう少しだけ見ていたいと感じて。
どれくらいの時間が経っただろうか。
薄暗い部屋の中で、おんりーが微かに身じろいだ。
ゆっくりと瞼が開き透き通る翡翠の瞳 が焦点が定まらないまま宙を彷徨う。
やがて、その瞳がおらふくんを捉えた瞬間─── おんりーの顔に驚きと同時に安堵の表情が浮かんだ。
「おらふくん……!?」
掠れた声でおんりーが名前を呼ぶ。
「おんりー、おはよう。よく眠れた?」
おらふくんは優しく微笑みかけた。
そして寝起きでまだ意識がぼんやりとしている おんりーの頭をそっと優しく撫でた。
「な、なんでここに……」
「僕の家やからな」
おらふくんがそう言うと、 おんりーは自分が彼の服で作った巣の中で 寝ていた事を思い出して、顔を真っ赤にした。
「うわぁぁぁ!見られた!最悪!!」
恥ずかしさで顔を覆うおんりーに、 おらふくんはたまらず抱きしめた。
彼の小さな体が腕の中にすっぽりと収まる。
「おんりー可愛すぎ。寂しかったんやろ? 僕の服で巣作るとか……どんだけ可愛いねん」
「ち、違うし!」
おんりーは顔を隠したままだが、 その声には照れと少しの嬉しさが混じっていた。
「ほんま、おんりーは僕のこと大好きやね。 僕の匂いに包まれて寝るとか可愛くて仕方ないわ」
おんりーの背中を優しく撫でながら耳元で囁く。
おんりーは何も言わない。
ただ腕の中で僕の服の匂いに包まれ、 幸せそうに身をおらふくんに預けている。
会えない寂しさはもうそこにはなく、重たく空を覆っていた雲はすっかりと姿を消していた。
───後日談───
おらふくんの服で作った 巣の中で見つかってからというもの、 おんりーは少しの間 まともにおらふくんの顔を見ることができなかった。
そして会えなかった寂しさは 二人の間により一層甘い空気を生み出した。
忙しい日々がようやく落ち着き、 おらふくんはずっと会えなかった時間を 埋め合わせるようにおんりーとの時間を最優先にした。
「おんりー今日も僕の家来る?一緒にゲームしよ」
配信が終わると、おらふくんはすぐにそう誘う。
おんりーは「行く!」と即答し満面の笑みを浮かべた。
おらふくんのマンションに着くと 二人はソファに並んで座りゲームに没頭する。
おんりーが集中して画面を見つめる横顔を おらふくんは凄く幸せそうに眺めていた。
休日には二人で出かける事も増えた。
「おらふくん見て!あれ可愛い」
おんりーが雑貨屋の棚に並べられていた可愛らしい ぬいぐるみを目を輝かせながら指差す。
「おんりーが欲しいなら買ってあげるで」
1つを手に取り、即座にレジへ向かった。
カフェに入って、おんりーが飲み物を口にすると 「美味しい?」と満面の笑みで尋ねる。
おんりーはそれに対して「おいしい」と笑顔で答る。
おらふくんは、その笑顔を見ているだけで満足だった。
ドズル社のメンバーもそんな二人の様子に気づいていた。
「最近、おらふくんとおんりー すげぇイチャついてないか?」
ぼんじゅうるがドズルにこっそり耳打ちする。
「会えなかった分、一緒に居たいんだろうね」
ドズルは呆れつつも温かい目で見守っている。
「まあ、彼奴らが幸せならいいだろ」
MENも優しく笑いながら言った。