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SnowMan長編・短編集

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音のない世界にいる君❤🤍 6.

♥

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2023年08月02日

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真っ白な部屋にピッピッと規則正しく鳴る機械音


あれから、ラウールの命の糸はなんとか繋がれた


でも、目は覚まさない


ずっと待っているのに


まだ、伝えられていない


俺は、温もりが残る手を握る


「ラウール」


呼びかけても、返事は無い


目は、もう開くことはないように、固く、固く閉じられていた


ずっと、ここに来ている


毎日、欠かさず


でも、見えるのはいつも同じ顔


俺は、手話の勉強は続けている


もう、日常会話も出来る


今は、大学で手話通訳士になるための勉強をしている


「ラウール、ラウール」


何度呼びかけても返事はない


その時、後ろで音がした


振り向くと、


「澪弥……」


「なんだ、もういたのか」


あの時、ずっと抱きしめてくれていた澪弥だった


澪弥の存在がなかったら、俺はどうなっていただろう


何度も何度も、消えたいと思った


ラウールに会いたかった


でも、そんな俺を宥めてくれたのが、澪弥だった


優しく、優しく諭してくれた


大丈夫だと。ラウールは絶対に目を覚ますから、涼太はその時を待てばいいと。


その時が来たら、ラウールと会話が出来るようになってろと。


たくさんの言葉をくれた


「……大丈夫か?」


「何が?」


「いや、だって、」


珍しく歯切れの悪い澪弥


「……目」


「目?」


そう言われて、俺は頬骨の辺りを触る


なんだか湿っていた


それが涙だと分かるまで少し時間がかかった


いつの間にか泣いていたようだ


「うん、なんともない。大丈夫」


「ほんとか?」


「ほんとだって」


「ならいいけどさ……」


不意に、澪弥が暗い顔をする


その視線の先には、ラウールがいた


「……いつ、目ぇ覚ますんだろうな」


それに、俺は答えられなかった


ツンと鼻の奥が痛くなった


今まで、何回泣いただろう


何度堪えても、何が何だか分からない感情がむくむくと膨れ上がって、


涙が溢れ出てしまう


「早く……目ぇ覚ませよ……」


俺も、澪弥も、ただ、それしか言えなくて


それしか願えなくて


願うことしか出来ない自分に、腹が立った


やるせない思いが、湧き上がってくる


俺も澪弥も泣いてしまって、部屋の中がどんより暗くなる


「俺、もう帰る」


そう告げ、部屋を出る


部屋を出ても、涙は収まらないまま


病院にいる人が俺を見ている気がする


それでも、涙は流れ続ける


外に出て、冷たい風に吹かれたら、涙も乾いてきた


「はぁ……」


ラウールのあの笑顔を忘れた日など、1度もない


いつも、ラウールのことばかり


でも、もう何年も経っていて、ラウールは目覚めないんじゃないかと


そんなことを考えてしまう


良くないことだと分かっているのに


それでも、浮かんできてしまう


考えたくもないのに、頭は言うことを聞かない


ねぇ、ラウール


ずっと言えなかったこと、そろそろ言わせてよ




『ラウール』


『ラウール、ラウール』


涙声でそう言う


ここまではいい


後ろで音が……


しない


音を合図に振り返るから音がしないのでは振り返れない


「ごめんなさいッッ」


後ろで澪弥役……阿部が謝る


そう。SnowManの阿部亮平が澪弥役なのだ


このシリーズで初めて自分の名前と違う名前の役


カットがかかる


「え、なに、なんで音しなかったの?笑」


「いや、ついいつもの癖で音がしないように開けちゃった」


いやいや、開けちゃったじゃないから


音立てて??


スタッフさんが持ち場に付き、アクションがかかる


『澪弥……』


『なんだ、もういたのか』


『……』


『……』


「あれ、なんだっけ」


「なんなんだよ笑」


「うわ、すいません!!」


しっかものの阿部が2連続NG


珍しい


そのあとは、順調に進み、俺が部屋を出るシーン


『俺、もう帰る』


ドアに向かって歩き、ドアに手をかける


「……だっ」


失敗


「え、なに?」


「足ぶつけた」


なんと運の悪いことに角に足の小指をぶつけた


そして手を離したからドアに挟まれそうになった


そこはなんとか避けたけど


「落ち着こ?」


「お前に言われたくねぇよ」

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