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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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青視点
ペア曲を出す話は思ったより広がった。
意外な組み合わせも望まれてはいるようだけれど、やはり色分け・公式ペアの人気は根強い。
りうらと英語の歌みたを出そうと話しているのと並行して、青組でも打ち合わせをすることになった。
「こっちの曲にするんなら、ちょっとエモい感じのビジュ描いてもらいたいよねぇ」
曲を流しながら、PC画面に映し出された資料と手元の紙を見比べる。
ほとけが真剣な顔でそんな提案をし、俺はそれに曖昧に頷いてを繰り返す。
「でもいつも通りの不仲っぽい曲も捨てがたいよね」
いつもはふざけているこいつも、さすがに仕事のときは真剣な目をする。
そんな言葉を受けて、「不仲な青組」っぽい曲を探して作成しておいたリストにざっと目を通した。
その打ち合わせをしている作業室で、俺たちとは対角線上にないこは座っている。
カタカタとキーボードを叩く音がしたけれど、どんな顔をして作業しているのかはあえて見ないようにしていた。
…いや、見れなかっただけかもしれない。
さっきほとけがこの部屋に来たとき、俺とないこが離れて座っているのを見て「さてはケンカしたね? 原因は何?」とからかうように言ってきた。
……ケンカなんてしてない。
ただ昨日、別れただけだ。
本当なら、それを答えればいいだけだった。
だけど「別れた」のたった一言がどうしても喉を通過してこない。
元々お試しの関係だったし、「別れた」と言っても大した話じゃない。
仮の姿がなくなり、元通りになっただけ。
そんなことは分かっているけれど、ないことの一つの関係が終わったことをより実感させられそうでどうしても口にできなかった。
だけど、自分が言わなくてもないこがそう答えるに決まってる。
多分、ないこの方がこういう時のポーカーフェイスは巧い。
「あーだって俺ら別れたからー」なんて笑いながら、あっけらかんと応じるに違いない。
そう思った俺だったけれど、ないこの方も何故かほとけに即答はしなかった。
何かを逡巡しているのか、しばらく室内の空気に沈黙が満ちる。
…そうだ、ないこにその決定的な言葉を口にされるくらいなら、自分で言ってしまった方がダメージは少なくて済むんじゃないか?
そんなことをふと考えてしまってから、自分の未練がましさに驚いて思わず苦笑いが漏れそうになった。
その時だ。ないこが口を開こうとしたのが気配で感じ取られた。
その瞬間に広がる焦燥感。
自分らしくないなんて思いながらも、向こうが何かを発言するよりも先に唇を開いた。
「お前さぁ…あほなこと言うとらんと、さっさと打ち合わせの準備しろよ。どんだけ待たされたと思っとるん」
そう言うと、いつも通りぎゃんぎゃんとほとけが喚きたててくる。
それを「はいはい」とあしらってから打ち合わせへ入って…今に至る。
割と真面目に話は進んだと思う。
後はスタッフを交えて詰めて…と次の段取りを組み立て始めたときに、ぱたんとノートPCを閉じる音が室内に響いた。
そしてそのまま椅子を引く音も。
自分の手元の資料に目線を落としたまま俺は顔を上げなかったけれど、代わりにほとけがそちらを振り返る。
「ないちゃん、終わったの?」
尋ねられたないこは、「ん」と小さく答えた。
「一段落ついたから、後は家でやる」
「そっか、おつかれさまー」
「おつかれ」
それきりないこは、ノートPCを手にしたまま部屋を後にした。
ぱたんと扉が静かに閉まるのを見送ってから、ほとけがこちらに向き直ったのが分かる。
未だ資料を読み込むふりをして顔を上げない俺に向けて、わざとらしいくらいに大きなため息が吐き出された。
「で、何が原因でケンカしたの」
「してない」
「うそばっかり。おかしいじゃん明らかに」
「気のせいちゃう?」
ほとけが繰り出す言葉全てに、被せるようにして即答した。
そんな取りつく島もないといった感じの俺に「…ふぅん」と意味ありげな呟きをひとつ漏らすれけれど、それで懲りたような様子もなかった。
手にしたペンを手持無沙汰のようにくるくると回しながら、「いふくんてさぁ」と改めて呼びかけてくる。
「頭いいのに変に要領悪いとこあるよね、不器用っていうか」
知った風な口をきくな。
そう言いたかったのに声にならない。
むっと眉を寄せて見据え返したけれど、ほとけの方はそんな俺の目線も全く意に介していない。
「許してあげなよー、ないちゃんが何したのか知らないけどさ。かわいそうじゃんあんなにいふくんのこと好きなのに」
「…………は?」
意味の分からない言葉が展開された気がして、俺は思わず首を傾げた。
そもそも何で喧嘩したとして、ないこが悪い前提?
そして最後の一言はなんだ?
「え、まじで重症すぎない…?」
俺の頭上に疑問符がいくつも浮かんだのが分かったのか、ほとけは今度は心底呆れたように顔を歪めた。
それからわざとらしいくらいに大きなため息を漏らす。
「しっかりしてよー。もっと愛されてる自覚持ちなよ。じゃないと僕が困るし」
「……どういうこと?」
ほとけの展開する話に、脳がちっともついていかない。
情報を整理する間もなく、机に頬杖をついたあいつはにやっと笑ってみせた。
「ないふがしっかりお互いの手を取り合って誰も付け入る隙がないくらいでいてもらわないと、いつまでたってもりうちゃんが僕の方を見てくれないでしょ」
「りうら……?」
どうしてここでその名前が出てくる…?
そう思ったのが分かったのか、ほとけは今度はため息ではなくジト目でこちらを見据えてくる。
「本当に鈍いね、いふくん」
…悪かったな。
そう言いたかったけれど余計に反論を食らいそうで口を噤む。
「りうちゃん、ずっと前からないちゃんのこと好きだよ」
気づいてなかったんだ、と少し煽るような口調であいつは続けた。
「同じ人を見てる人間がいることくらい、気づきそうなのにねぇ」
りうらが、ないこを…?
気づいていなかったどころか、想像すらしていなかった。
「お前の気のせいちゃうん」と言いたかったけれど、目の前の水色の瞳は嘘をついているようでも勘違いをしているようでもなかった。
それに俺は知ってる。
楽天家を装っているほとけが、意外に誰よりも周りを見ていて人一倍鋭いことを。
「さすがのいふくんでもちょっとは焦るでしょ? りうちゃんがないちゃんのこと好きだって知ったらさ」
…確かに、さっきから胸が早鐘を打って止まない。
言葉にならない焦燥感。
…でも違う。そんな資格はもう俺には残されていない。
「焦る…なんてポジションにも立たれへんねん、こっちは」
八つ当たりまがいな口調になってしまった自覚はあった。
珍しくぽつりと零した俺の本音に気づいたらしいほとけが、首を傾けて俺を見やった。
その視線に言葉も継げずにいると、あいつが先に「…どういうこと?」と重ねて尋ねてきた。
「お前が何をどう見とるんか知らんけどさ、ないこが俺を好きなわけちゃうねん。フラれたんはこっち」
本来なら決して口にしたくなかった言葉。
声に出したら、自分によりその事実を認識させてしまうことになる。
「うそだぁ」
「嘘ちゃうよ」
少し硬くなったこちらの声音に気づいたのか、ほとけが一瞬だけ口を噤む。
その隙に重ねるようにして言葉を継いだ。
「好きになれるか見極めようとしたけど、やっぱり無理やって言われた。この先も好きになれんと思うって……俺もそう思うよ」
「……」
無言のまま、ほとけは机の上で両手の長い指を組み合わせる。
顔に似合わずごつごつとした骨ばった指先が、少しだけ速いテンポで机を叩いた。
「…何となく理解したけど…」
こてんと首を傾げて、小さく息を漏らす。
それからあいつは少し的をずらしたような言葉を継いだ。
「やっぱり、りうちゃんは見る目あるわ」
「……は?」
だから、何でここでりうら?
思いきり眉を顰めた俺のその眉間の辺りを、ほとけの指が今度はぐいと突いた。
「だっていふくんよりないちゃんの方がよっぽどかっこいいもん。好きになれるか見極めるって…好きになる努力はしようとしてくれてたんじゃないの?」
「……」
「あのさ、分かると思うけど、ないちゃんだって暇じゃないんだよ? しかもあの性格じゃん、効率化の鬼じゃん。基本無駄なことに時間なんて絶対割きたくない人じゃん」
「……それは……」
「ないちゃんにとって、いふくんを好きになれるかどうかは無駄じゃないってことだよね」
…今度は俺が机を叩く番だった。
思ってもみなかった言葉を返され、場をごまかすかのようにトントンと指先で机上を弾く。
「いふくん自身さ、ないちゃんが自分を好きになるわけないって思ってるって言ったよね?」
「……」
返す声を失い、ごくんと息と共に感情の一部を飲み下した。
そんなこちらの様子を見据えながらも、ほとけは追撃の手を緩めることなく言葉を継ぐ。
「好きになってもらう努力もしてないくせに」
「!……」
弾かれたように顔を上げたけれど、ほとけの目を見つめ返すと、より言葉は喉元で引っかかった。
そんな俺を見据え、あいつはもう一度わざとらしいくらいの息を吐き出す。
「僕は努力してるよ。毎日おはようとおやすみのLINEは欠かさないし、どんな小さなことでも何かあればりうちゃんに連絡してるし」
「………それはやりすぎちゃうん」
「ふふ、昨日とうとう『いむうるさい』って言われた。でもそれでいいんだよ、僕は。何もしないよりよっぽどね」
りうらのことを思い浮かべたせいか、ほとけはそこでにこりと満面の笑みを滲ませた。
好きになってもらう努力……。
確かにそんなもの思いつきもしなかった。
ないこが自分を好きになるわけがない、だから「全」になれないなら「無」でいいと思っていた。
好きになってもらえないなら曖昧な関係でいるのすら嫌だった。
…だけど確かに、俺は「何もしていない」。
ないこは俺のことを好きになろうとしてくれていたのに。
「いふくんは、ないちゃんの優しさに甘えすぎだと思うよ」
ほとけがそう話を締めくくろうとした瞬間。
勢いよくがたんと音を立てて立ち上がり、俺はその作業部屋を飛び出した。
ないこに会って、もう一度話がしたい。
そう思って社長室まで足早に駆ける。
会って何を言うかなんてまだ考えはまとまっていない。
それでもいてもたってもいられなかった。
それに多分、椅子に座って腰を落ち着けて考えても答えは出ないだろう。
そんなことより今すぐ会いたい。
ちゃんとあの顔を…目を見たときにしか、伝えたい言葉は出てこないはずだ。
「……っ」
なのにこんなときに限って、ないこの影が見当たらない。
社長室は鍵がかかっていたし、会議室は使われる予定もなく空っぽだった。
どこだ。焦れば焦るほど考えはまとまらない。
なのに逸る気持ちだけが鼓動をどくどくと打ちつける。
焦燥感のせいで、妙な予感が胸にまとわりついた。
…今すぐ会わなかったら…いや、「会えなかった」としたら、もう何もかもが手遅れになる…そんな予感。
「ないこ…っ」
その名を小さく呼んだとき、不意に目の前のエレベーターの向こう…奥の廊下からないこの声が聞こえた気がした。
エレベーターホールを素通りし、その声のする方へ足を向ける。
その先には、ないこが普段それほど使うことのない「階段」。
誰かと何かを話しているハスキーボイスは、微かにしか聞こえてこない。
だけど、天井が高く人気のない場所だからこそ、声が響いて聞こえる。
確実にないこのものだ。
間違えようのないその事実に、俺は踵を鳴らして一歩そちらへと踏み出した。
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まさかの赤さんの好きな人は桃さんだったのですか…!? それに水さんは赤さんが好き…衝撃の展開でした…😖🤍 水さんのお話が説得力がありすぎて読んでいるこっちまで説得させられているように感じちゃってます·͜· ❤︎ 青さんと言えば『努力』の人、のイメージが強いのに努力してないじゃん の言葉は真反対なのがささりました…!! 桃さんは一体誰と話しているのか…癒しをありがとうございます!🥹💘