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軍師の嫁取り

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軍師の嫁取り

11 - 戦の前には女あり4

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2023年11月03日

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翌日、一番鶏が鳴く頃出立した孔明は、夜になっても帰って来なかった。


「義姉上《あねうえ》!そんな、呑気に、茶を飲んでいる場合ですか!」


均《きん》は、慌てている。


夜更かしをする事があっても、兄、孔明が帰って来ない事などなかったからだ。


「まあ、帰って来ないのだから、仕方ないではありませんか」


「あー私も共をすれば。兄は、あまり街へ、出た事がないのです。道に迷ってしまったのかも」


「全く、子供じゃあるまいし、そもそも、戦場《いくさば》へ、出陣すれば、迷うどころか」


均は、耳を疑った。この地で、戦など始まっていない。そして、今の所、どの土地も、平定している。いったい……。


月英は、童子に、揚げ菓子を持って来させ、呑気に、食していた。


「帰って来たくなれば、戻ってこられますよ」


「で、ですが!仮にも、襄陽《じょうよう》の街ですよ!兄には、色々と、刺激の強い誘惑が!い、いや、誰ぞに、騙されて、何かに、まき込まれているという事もありえます!」


「まあ、そうだとして、あの方が、黙って引き下がりましょうや?」


それもそうだ、と、均は、思う。あの兄の事、きっと、理詰めで、相手をやり込めるに違いない。


そして……。ふと、思う。


「義姉上、何故、先程、戦場などと?」


「そろそろ、ではないかしら?いつまでも、田舎長官よろしくの者しかいない、のも、不都合じゃなくって?」


あっと、均は、声を揚げ、色めいた。


「では、兄は、仕官に!」


「仕官に、か、どうかは、分かりませんが、少なくとも、思う所は、あったのでしょう。ですから、その準備に入ったのでは、ないかしら?」


月英の言葉に、均の胸は、高鳴った。鼓動が、ドキドキと鳴っている。


ついに、動き出した。兄の、才能が、認められる日が来るのだ。


このまま、片田舎で、埋もれてしまう運命なのか、自分では、兄の力になれないのかと、嘆いていた日々は、終わりを告げる。この、義姉ならば、兄の名を世に轟かせてくれる。


「まあ、均様、お座りなさいな。私達が、どうこう考えても仕方ないこと。なるようにしかなりません。と、いうよりも、あくまでも、孔明様の人生です。私達が、口をはさむ事では、ありません。が、少しばかり、背は押さないと、あの方は……いけないようですけどね」


きっと月英の思惑通りなのだろう。えらくご機嫌な素振りで、均へ菓子を勧めているのだから。

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