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そしてそのまた翌日、昼休み――

教室で、鞄から弁当箱を出して机に置くと


いきなりズンズンと私の前に歩いてきた五木が、私の机にドンっと手をついた。


「おい、ちょっと来い。」


「な、なに?」


驚く私を無視して、五木はそのまま私を強引に廊下に引っ張り出す。


「ちょっと、一体何なの…?」


周囲の視線が気になって声を抑えつつも抗議すると、彼は人気のない階段の踊り場まで私を連れていき、振り返って睨みつけてきた。


「お前さ、俺にああ言われたぐらいでよう知らん男とイチャつけんのか?」


「は、はあ?イチャつくって、なんのこと?」


「あ?昨日だよ、菅野とニコニコしやがって。あいつに媚び売ってたんだろ?」


「媚び売ってたって…ただ同じ日直だから教材運んでただけなんですけど!?」


あまりの言いがかりに思わず声を上げる。


私の反論に、五木はさらに語気を強めて言い返してきた。


「どうだか、お前って優しくされたらコロッといっちまいそうだもんなぁ?」


「なにそれ、そんなこと言う為だけにわざわざ呼び出したわけ?まさか本当に私の事好きとか?嫉妬ですかー?」


思わず皮肉っぽくそう言うと、五木の顔が一瞬固まり、それから赤くなるのが見えた。


「なっ、嫉妬なんかするかよ。ただ、そーやってヘラヘラしてるのがムカつくだけだわ!」


「ヘラヘラしてるって…何よそれ! 別に誰と話そうが私の勝手でしょ!」


「はっ…なんだあんなんで絆されとんのか、チョロすぎ」


「だから違うっての! 太陽くんはただのクラスメイトだし!」


「どさくさに紛れて名前呼びしてんじゃねーか。ったく、お前のそーいうとこがムカつくんだよ」


五木が声を荒げた瞬間、私もついカッとなって言い返した。


「五木こそ、私のことそんなに嫌いなら…見なきゃ、関わんなきゃいいでしょ…!」


「は?……別に俺は…」


「とにかく! あんたには私の交友関係に口出しする権利なんかないから!」


「……チッ、もうええわ」


五木はそう吐き捨てると、ポケットに手を突っ込んで私に背を向け、教室に戻っていこうとする。


「ねえ、私のこと嫌いなのはよく分かるよ。でも、なんでなのかな。」


「…なんだよ」


背を向けたまま、階段で足を止める五木に、続けて言う。


「なんで、急に変わっちゃったわけ?昔はもっと、優しかったじゃん。いつき」


久しぶりにちゃんと呼んだ、イツキという名前。


「……っ、知るかよ」


「私、いつきに、知らないところでなにか酷いことしちゃったの?そういうことでしょ」


視界が歪んで、あ、涙出てるのかって認識したら、更に溢れてきてしまった。


「だからお前にゃ関係な…」


「関係なくなんかないでしょ!」


涙声のまま私は言い返した。


「私だってバカじゃない。ずっと考えてたんだよ。なんで、あんなに優しかったいつきが、こんなにキツく当たってくるようになったんだろうって」


「それからだった、五木が怖くなって、近づきがたいのに、喧嘩腰でも話せるのがまだ救いだった」


五木はその言葉に反応するように、ようやくこちらを振り返った。


瞬間、五木はさっきとは顔色を変えて、でも言葉を失ったかのように何も言わないで私を見つめてきた。


「いい加減本当のこと教えて。きっと、私のせいなんだよね?私が、邪魔になった?」


声を絞り出すように言った私に、五木はしばらく何も言わなかった。廊下の窓から差し込む陽光が、彼の後ろ姿を照らしているだけだった。


「……お前のせいじゃねぇよ。」


低く抑えた声で、五木がぽつりと言った。


「お前には関係ねぇ。」


「なにそれ…関係あるでしょ!」


五木は肩を震わせるようにため息をついた。そして目を伏せたまま、少しだけ俯いて言った。


「……お前が変わったんだよ、雫。」


「え?」


「昔みたいに泣き虫で、俺に頼ってくるような女じゃなくなった。なんか一人で全部やろうとして、知らない男とヘラヘラして…俺の入り込む隙なんてねぇじゃねぇか。」


その言葉に、思わず息を飲んだ。


「だから…ムカついてたんだ。ガキなのはわーってる。でもなんでか、お前が俺以外のヤツと楽しそうにしてるの見てっと無性にイラついて、どうしようもなくなっちまって」


「酷いことしか言えなくなっちまってた」


「……今まで悪かった、じゃすまねえことお前にしてきた。今もそうだ、泣かせたかったわけじゃねぇのに…たくさん傷付けた」


彼の言葉を聞きながら、私は不思議と心が軽くなるのを感じた。


「ま、待って?いつき…それって、ヤキモチ……」


「……っ、なわけ」


耳まで真っ赤にして否定する五木に、私は思わず笑ってしまった。


「な、なんだよ!」


「だって、そういうのって普通、好きな子にする態度じゃない?」


「~~っ!言っとくが自惚れんじゃねぇぞ!」


五木が顔を覆って誤魔化す姿を見て、私は涙が止まったのを感じた。そして、静かに言葉を続けた。


「…私もさ、昔のいつきのこと、好きだったよ。」


その言葉に、五木は顔を覆った手をそっと下ろし、驚いたように私を見つめた。


「けど、今のいつきのことは…ちょっと、ううん、超苦手」

馬鹿な犬ほどよく惚れる

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