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「でもね、もしまた普通に関わってくれるなら…きっとまた、好きになれると思う。」
五木は少し口を開けたまま固まり、やがて不器用に笑った。


「…なんだよそれ。お前、ほんとズルいな。」


「お互い様…でしょ?」


そう言いながら笑う私に、五木は少しだけ照れくさそうに目を逸らし、ぼそりと呟いた。


「……分かったわ。」


その言葉に、私は静かに微笑んだ。


昔のような彼の笑顔に、私は少しだけ暖かい気持ちになった。


きっと、昔の二人に少しずつ戻れる気がして。


それからしばらくの間、五木との関係は微妙な空気の中、少しずつ変化していった。


翌日、登校すると五木がいつになく早く教室に来ていて、自席に座っていた。


いつもはふらっと遅れてくるのに珍しいこともあるものだ、と少し驚きながら、私も席に着く。


なんか気まずくて、声はかけなかった。


すると、それを察したのか


「おい、はようぐらい言えや」


五木がいつもの調子で言ってくる。


私は苦笑しながら答えた。


「おはよう、五木。てか、なんで今日はこんなに早いの?」


「別に理由なんかねぇよ。ただ早く来ただけだ」


そっけない返事。でも前よりは、いいかもしれない。


「そうなんだ……」と軽く流そうとしたそのとき、教室の後ろからひときわ明るい声が響いた。


「おはよう! 二人とも、朝から仲良しだねぇ」


声の主はクラスメイトの安藤夏美。


元気で明るく、誰にでも分け隔てなく接する彼女は、みんなに好かれる存在だ。


安藤さんと五木は高1の頃に体育祭でわりと話す仲になったんだとか


それで思い出したが、1年の頃に付き合ってるんじゃないかと噂もよくされていた気がする。


「はーー…朝からうっせぇのが来た」


五木が少しだけ眉をひそめながら返す。


「あら、ひどーい。せっかく気持ちよく挨拶したのに」


安藤さんは全然気にしていない様子で笑い、私の隣にやってきた。


「それにしても、二人ってほんとに仲がいいよね。やっぱり幼馴染っていいな~」


夏美の言葉に、私は思わず「そ、そんなことないよ」と否定する。


そんな私に、彼女は目を輝かせて近づいてきた。


「え~? もしかして、ほんとにただの幼馴染じゃないとか?」


「お前面白がってんだろ」


私が口を開く前に、五木が即答する。


その態度に、安藤さんは悪戯に笑った。


「ふふ、じゃあ今は何もないんだ。でも、これからどうなるか分かんないよねー?」


安藤さんが意味ありげな視線を私と五木に向ける。


私は居心地の悪さを感じながら視線をそらし、五木は「なんもねぇよ」と言うだけだった。


でも、それから数日後。


安藤さんに、話したいことがあると言われお昼ご飯に誘われた。


「それで…安藤さん?話ってのは…」


「んもう!夏美でいいって~クラスメイトなんだから!」


「そ、そう?じゃあ、夏美ちゃんで。」


「よろしくね、雫ちゃん!今日はね、雫ちゃんに聞きたいことがあったの」


「聞きたいこと?」


「ええ、単刀直入に聞くのだけど、雫ちゃんは五木くんのこと好きなの?」


「えっ?…好きって、そりゃあ友達としては好きだよ…?」


「え~じゃあ私が五木くんと付き合ってもいいってことよね?!」


「え…?」


「だって、友達的な意味なんでしょ?それに…ほら、私の方が五木くんとお似合いだと思うし、そういうことなら雫ちゃん、応援してくれるでしょ?ね?」


私はその圧に、笑顔を作って頷くしか無かった。



その放課後……


珍しく、五木がちょっと付き合えと言ってきて、久しぶりに一緒に帰ることになった。


夏美ちゃんは私の横を通り過ぎるときに


「幼馴染だからってさ、あんま五木くんにベタベタしないでね」


と低いトーンで耳打ちされ、背筋が凍った。


「おい、どした」


五木は私の様子を不審に思ったのか聞いてきたが、私は「ううん、なんでもない」と答え


足早に、なんだかんだ満更でもなさそうな感じで夏美ちゃんと下校する五木を追い越して、帰路についた。


そして、私はある考えにたどり着いた。


夏美ちゃんは私が邪魔だと言うこと。


夏美ちゃんの友達なのか、私にわざわざ「五木くんの隣に相応しくない」「この泥棒猫!」なんて言いがかりしてくる女子までいるのだから。


私を敵視しているのは言うまでもなかった。


だとしたら…これから夏美ちゃんが更に何かをしてくるかもしれない……


不安になったが、さすがに五木に言えるわけは無い。


私がすべきことは夏美ちゃんのために五木と最低限関わらないことだ


でも、せっかく昔みたいに関わり始められたというのに、こちらからそれを台無しにしたくはなかった。


それに、どうしてなのか


五木が夏美ちゃんと親しそうにしていたり


笑いあっているだけで、胸がチクチクと傷む感じがしていた。


そうは言っても夏美ちゃんに監視されている感じがあり、夏美ちゃんの前で二人きりになるのを極力避けていた。


「ねぇ、雫ちゃん。昨日五木くんにお弁当分けてなかった?」


夏美ちゃんがそう問い詰めてきた。


「え?あ、あぁ……まあ、あれは、五木が…」


「……ふーん。ね、ちょっとお話ししない?」

馬鹿な犬ほどよく惚れる

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