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夜が明け、病室のカーテン越しにやわらかな朝日が差し込む。
ナースステーションの方からの足音と、軽いノックの音が聞こえた。
《おはよう、〇〇ちゃん。》
呼吸器科の目黒先生がカルテを手に入ってくる。
《よく眠れた?苦しくなったりしてない?》
〇〇は少し迷ってから、昨夜のことを思い出しながら話した。
「夜、少し苦しくなってしまったんですけど…深澤先生…?が助けてくれて…」
《あぁ、!そうなんだ!!》
目黒先生の顔がパッとやわらかくなる。
《今はもう大丈夫?》
「はい、大丈夫です!」
呼吸音や脈拍、体温などを確認し、《うん、大丈夫そうだね。》と頷くと、目黒先生は入院カルテに退院許可のサインを書き入れた。
午前中のうちに退院の手続きが進み、お薬の使い方や持ち歩き方などをもう一度説明してもらう。
《ちゃんと続けて使えば、今回みたいな大きな発作は減らせるからね。》
「はい、ありがとうございます!」
会計前、〇〇は勇気をだして聞いてみた。
「あの〜…深澤先生って、どこにいるかわかりますか…?」
《ん、?ふっかさん?内科だから…1つ下の4階かな?…どした?》
「あの時助けてくれてありがとうございました、って伝えたくて…」
目黒先生は ふはっ、と笑って、スマホをポケットから取り出す。
《もうそろそろ休憩だと思うし、10分後くらいに4階の診察室6ってところ行ってみて!》
《俺からも連絡しておくよ。》
「ありがとうございます!」
胸の奥がなんだか少しだけ早くなるのを感じながら、〇〇はお礼の準備を心の中で何度も繰り返した。
ーーーこうして、深澤先生にもう一度会うことになった。
4階の廊下を歩きながら、〇〇の足取りは自然とゆっくりになる。
(しっかりお礼、言えるかな…。)
そんな不安を抱えたまま、診察室6のドアを軽くノックした。
『はーい』
中から軽い声が返ってくる。
ドアを開けると、カルテを整理している深澤先生が顔を上げた。
『あ、!昨日の!』
白衣の袖を軽くまくりながら、にこっと笑う。
『どうかした?あ、もう退院?』
〇〇は両手を前で揃え、少し緊張した声で言った。
「き、昨日は助けていただいて、本当にありがとうございました。」
『あぁ、あれね!全然!医者なんだから助けるのは当然よ〜』
軽く手を振って笑うその仕草に、少し緊張がほぐれる。
『でも、ナースコールを使わないで自分で来るって、さすがにびっくりしたよ〜笑』
「す、すみません…笑」
『いやいや、謝ることでもないんだけどね!笑』
深澤先生は椅子から立ち上がり、デスクにある資料を片付けながら〇〇を見た。
『そいえばさ、学校は?もう夏休み始まった?』
「いや、まだです。あと少しで終業式です。」
『おー、部活とかは?』
「入ってないです。喘息で運動とかは無理だし…」
『あー、そっかそっか。』
『じゃあ勉強してるのか!真面目そうだし、成績良さそう!わら 』
「…普通です」
『え〜?ほんと〜?わら』
深澤先生はおどけるように笑った。
〇〇は小さくうつむいて頬を少し赤くしながら、(素はこんな感じなのかな、?)と思った。
『まっ、無理はしないこと!困ったらすぐ来な。これ絶対ね!』
「はい」
『じゃ、元気になったみたいだし、またどこかで。』
「はい、その時はまたご挨拶します。」
『は〜い、お大事にね。』
診察室を出たあと〇〇の心臓は少し早くなっていた。
ほんの5分だったのに、発作ではないこのドキドキ。
(……?なんだろう…)